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横須賀総合医療センター心臓血管外科

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MICS-CABGでLITAが解離したら

2021-06-16 14:01:15 | 心臓病の治療
 MICS-CABG(左小開胸アプローチによる冠動脈バイパス術)は左内胸動脈(LITA)が主役といっていいと思います。LITA-LAD(左内胸動脈ー左前下行枝)のバイパスに付随して他のターゲットも他のグラフトで血行再建を追加するものですが、この手術でLITAが解離してしまった場合は手術のデザインが大きく変わってしまいます。これは正中アプローチでも同様のことが言えると思いますが、MICS-CABGにおけるLITA損傷は他の同等のグラフトが存在しないことから重大です。もしこうしたことが発生してしまった場合は、
 ①RITAを左小開胸アプローチから採取
 ②SVG(大伏在静脈)グラフトを採取して上行大動脈や左腋窩動脈に中枢側吻合としてターゲットの血管を再建
 ③正中アプローチへの変更
こうした術式の変更が必要になります。

 側方開胸から正中アプローチへの変更後に右内胸動脈を採取することは、体位の関係から非常に困難です。一度閉創して体位を取り直し、消毒をし直してから正中アプローチへ移行したほうが慣れた方法での採取が可能となりますので、その手間を省くべきではありません。
 大伏在静脈にグラフトデザイン変更する場合は、上行大動脈への中枢吻合が容易とは限らず、その場合は左腋窩動脈への中枢側吻合が妥当です。すぐに左腋窩動脈が露出出来るように退院を左上肢をあげずに体の背側に固定するような体位をとることが推奨されます。左腋窩動脈に吻合した大伏在静脈を胸腔内に誘導するときは、後で左肺を膨らませたときに走行が変化したり屈曲して閉塞するリスクもあることを念頭におく必要があります。