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江戸時代の歯石DNAから当時の食物を復元

2020-04-13 | 歴史・考古
 琉球大学の澤藤りかい研究員、新潟医療福祉大学の佐宗亜衣子助教、理化学研究所の須田亙副チームリーダー、早稲田大学理工学術院の服部正平教授、東京大学の植田信太郎名誉教授らの研究チームは、江戸時代の古人骨に付着する歯石からDNAを抽出・解析することで、当時の食物や生活習慣を個人レベルで明らかにした。研究成果は、国際的な学術雑誌「PLOS ONE」誌に2020年3月5日午前4時(日本時間)に掲載。
 発表のポイント
 〇どのような成果を出したのか
 歯石(歯垢が石灰化したもの)には口内細菌だけでなく、食べかすなども含まれる。江戸時代の古人骨に付着する歯石からDNAを抽出・解析することで、当時の食物や生活習慣を個人レベルで明らかにした。
 〇新規性(何が新しいのか)
 歯石にDNAメタバーコーディング法を初めて適用し、江戸時代の食性・文化を歯石から直接的に復元できることを示した。
 〇社会的意義/将来の展望
 この手法を先史時代など様々な遺跡の資料に適用することで、過去の食性・文化の新たな側面を明らかにできると期待される。
 研究の背景
 過去のヒトの食物を知る分析手法として、様々な手法が現在までに開発されている。例えば、遺跡から出土した骨・炭化種子などの形態分析、炭素・窒素安定同位体分析、土器残存脂質分析、プラントオパール・花粉・デンプン粒など微化石の形態分析などである。これらの手法にはそれぞれ利点があるが、多くの手法で容易に克服できない問題となっているのは、食べられていた動物・植物の属・種レベルの同定が困難であるということである。動物では骨などの硬組織が遺跡からよく発掘されるが、葉・茎・根などの柔組織のみからなる植物は、土壌中で分解されやすいため、形を保ったまま発見されることは滅多にない。ただ、低湿地にある遺跡では有機物が分解されにくく、古い時代の植物の柔組織が残っていることがある。このように、過去の食物の実態を品目レベルで復元するためには、新たな手法の開発・応用が必要であった。
 研究アイデア
 琉球大学医学部の澤藤研究員らの研究チームは、この難点を克服する手法として、古人骨に付着する歯石のDNA分析に着目した。歯石とは歯垢が石灰化したもので、歯石に含まれるDNAを分析すると、約99%は口内バクテリアである。ただし、食べかすなどに由来する動物・植物・菌類のDNAもわずかに含まれていることが分かっていた(Warinner et al. 2014)。今回、研究チームはこの植物DNAに着目し、DNAメタバーコーディング法などを用いて、効率的に食物を復元することを考案した。
 DNAは目で見える形が残らないものにも存在している。また、国際的なDNAデータベースに様々な生物種のDNA配列が登録されている。歯石に含まれる植物DNAを配列解読し、データベースと照らし合わせることで、どのような植物が歯石に含まれるのか、調べることが可能となる。また、この手法を用いれば、植物を科・属レベルの細かさで同定できる。この手法により、過去のヒトの口内から直接的に、食物を復元することを試みた。
 研究内容
 研究チームは、江戸時代後期、深川(現在の東京)から発掘されたヒト(町人)13個体の古人骨に付着する歯石からDNAを抽出・配列解読し、当時の食物を復元した。まずPCR法により、当時の主食であったコメのDNAが歯石中に含まれるか調べた結果、半数以上(13人中8人)の個体からコメのDNAを得ることに成功した。また、それ以外の食物が歯石に含まれているか、DNAメタバーコーディング法を適用した。その結果、植物に関して、シソ属やネギ属、ダイコン属など、合計で7科・10属を同定した。この結果を当時の文献と照らし合わせたところ、全て江戸時代に食用とされていたもの、あるいは利用されていた種を含んだ分類群であると確認できた。動物に関してもDNAメタバーコーディング法を適用したが、歯石にはヒト由来のDNAが多く含まれており、優先的に検出されてしまうので、ヒト以外の動物のDNAをこの手法で検出することはできなかった。
 食物だけでなく、タバコ属の植物DNAなど、当時の生活習慣に由来すると考えられる植物のDNAも検出された。なかでも特に興味深いものは、フタバガキ科の植物DNAが検出されたことである。この植物は、野生では、マレーシアなどの熱帯にしか生息していない。当時の文献を紐解いてみると、「龍脳」というフタバガキ科の植物から得られる樹脂が、庶民の歯磨き粉の原料として用いられていたことが分かった。江戸時代の浮世絵からも、歯磨きの習慣が庶民に広まっていたことが分かる。
 このように、本研究で使った手法を用いることで、過去の人々の食物や当時の生活文化を個人レベルで復元することが可能になる。また、フタバガキ科の植物の例のように、当時の交易の様子も明らかになると期待される。また、手法の改良によって、歯石からヒト以外の動物DNAの解析も可能にしていきたいと考えている。
 ◆用語解説
 〇DNAメタバーコーディング法
 生物種の特定のDNA領域をバーコードのように種の識別に用いることによって、資料に含まれる複数の生物種を一挙に同定する手法。
 〇炭素・窒素安定同位体分析
 動物の歯や骨に含まれる炭素・窒素の安定同位体比を測定することにより、その動物が生前、主に摂取していたタンパク質源を推定する手法。
 〇土器残存脂質分析
 土器に付着して現代まで残っている脂質を分離・分析し、脂質がどのような動物由来であるか推定する手法。
 〇プラントオパール
 植物に由来する珪酸(けいさん)体。ガラス質なので土壌中などで残りやすく、特にイネ科植物などに多く含まれる。

 朝から雨。小雨が降り続く。気温が低く寒い、最高気温8℃・最低気温6℃とか。
 今日は雨なので、晴れた日の”タンチョウソウ”のお話。
 見つけたのは、色々な草花に囲まれて、咲いている”タンチョウソウ(丹頂草)”。
 長い花柄の頂部に集散花序、白い小さな五弁花を密集して咲いている。五弁花であるが白い萼と白い花弁が重なり10枚の花弁がある様に見える。花の中心が赤く見え(雄しべの花粉)、頭に赤い所がある丹頂鶴を連想させる。
 名(タンチョウソウ)の由来は、この赤い頭部ではなく、背高く白い花が密集する様を「丹頂鶴」に見立てた。
 葉の形は掌(てのひら)状の八手(ヤツデ)に似ており、岩場で自生している。これから”岩八手(いわやつで)”とも呼ばれる。この葉は秋の終わりには枯れてしまう(休眠する)。
 タンチョウソウ(丹頂草)
 別名:岩八手(いわやつで)
 学名:Aceriphyllum rossii
 ユキノシタ科イワヤツデ属(ムクデニア属)
 多年草、花茎は10cm~30cm
 半日陰で、湿気のある環境を好む
 原産地は中国東北部~朝鮮半島
 開花時期は3月~5月
 花色は白色
 果実は蒴果(熟すると下部が裂け、種子が散布される)


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