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金ナノ粒子自己集合を利用し、商品管理と偽造防止を行うナノタグを開発

2020-02-04 | 科学・技術
 京都大学大学院工学研究科マイクロエンジニアリング専攻福岡隆夫研究員は、適切に制御された金ナノ粒子のサブミクロンサイズの自己集合体が、表面増強ラマン散乱(SERS)という特徴的な光シグナルを発する現象を利用し、ナノタグ「ステルスナノビーコン」を開発した。このナノタグは液体のインクのように医薬品錠剤等に印刷でき、ナノグラム量のナノタグにレーザーを0.2 秒照射するだけで商品管理に必要な情報を得ることができる。この技術は、2020年1月29 日から東京国際展示場で開催される「nano tech 2020 第19 回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」のNEDO 公式ブースに「金ナノ粒子自己集合でサプライチェーンの情報管理と偽造防止」と題して展示。
 背景
 偽造品や模倣品が大きな社会問題になっている。偽造品の流通量は世界貿易の10%を占め、ブラックマーケットとして年成長15%の巨大産業と言われている。
 近年では、物理的化学的識別子(Physical Chemical Identifier)やマイクロタガントと呼ばれる人工物微粒子を用いた偽造防止対策が注目されている。しかし、従来の”眼で見て”識別する手法は、判定の「鍵」の存在が明らかであり、やがて「鍵」の原理が解析されて模倣されてしまう問題があった。また、セキュリティの高さと迅速な判定を低コストで満たすことは困難であった。
 研究手法・成果
 金ナノ粒子を適切に集合・集積させると、単独粒子のときよりも光と強く結びついた機能を発現する。その現象のひとつが表面増強ラマン散乱(SERS)である。福岡研究員は、京都大学大学院工学研究科マイクロエンジニアリング専攻 鈴木基史 教授、同志社大学理工学部 森康維 教授、兵庫県立大学高度産業科学技術研究所 山口明啓 准教授らと、斜め蒸着・拡散律速凝集・移流集積・誘電泳動を用いたSERS 活性な金ナノ粒子自己集合体の多様な作製法と、超高感度でSERS を感知するセンシング技術を長年研究してきた。そしてこの度、微小なナノ構造体に吸着した極微量の分子から、特徴的なラマン散乱スペクトルを迅速に検知できることに着目し、この新しい原理に基づいて偽造防止ナノタグ「ステルスナノビーコン」を開発した。
 約10ナノグラムのナノタグを市販の医薬品錠剤の表面に点着したところ、0.2秒のレーザー照射で強いSERS シグナルを検出できた。このシグナルは安定しており、5年経過してもナノタグのありなしを区別できるという実用性の高さを確認した。
 新しいナノタグは、レーザー光とナノ構造体、そしてラマン散乱を発する分子の化学と物理を組み合わせて、多元的な暗号鍵としている。そのため、ナノタグを電子顕微鏡で構造解析しても、発生するSERSシグナルを複製するのは極めて困難であり、高いセキュリティが期待される。さらに、必要なナノタグの量はナノグラム程度なので、金を原料にしても安価に製造できる利点がある。このように「ステルスナノビーコン」は、高いセキュリティと迅速な判定を低コストで実現できる革新的な技術といえる。
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 ナノ粒子は微量で済む。約5000種類の化学物質が使えるため、偽造は困難という。ナノ粒子を含むインクを薬の表面に印刷し、室温で5年以上保管した後も波長を検出できる。家畜や食品などの識別にも使いたい。
 金ナノ粒子を集合化し表面増強ラマン散乱を発現+ラマン活性分子を包含
 超極微量を医薬品や食品に点着
  ↓
 レーザーを0.1~1.0 秒照射する
  ↓
 このナノタグがあれば強くて特徴的なSERSスペクトルが出現
  ↓
 光の波長・ナノ構造の形状・分子の種類・物性が”暗号鍵”となって、出現するSERS スペクトルを変えられる
  ↓
 判別・検出
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 波及効果、今後の予定
 本研究では、ナノタグを紫外線硬化樹脂へ封入し、検出することにも成功し、産業部品への適合可能性を示すことができた。また、異なる化学分子を含むマルチカラーのナノタグインクを合成し、その微細な印刷パターンからそれぞれの化学分子に対応した異なるSERS シグナルを検知することにも成功した。
 SERS スペクトルには化学分子に特有のピークが現れるので、そのピーク位置のありなしをデジタル化することによって、マルチカラーのナノタグを数値情報として扱うことができる。これにより、商品ごとにナノタグの数値情報を紐付け、IC タグより安価でバーコードより高いセキュリティを有する商品管理が実現する。
 本研究では、Proof of Concept(PoC)と呼ばれる技術の実用性を検証することができたので、次の段階として、実際のサプライチェーンでナノタグを試験する社会実装実験を2020 年より実施する。近い未来に本技術が社会のインフラストラクチャーとなることが期待できる。
 ◆用語解説
 〇サブミクロンサイズ
 大きさが、1 ミリメートルの1000 分の1 であるミクロン以下であること。
 〇自己集合
 ボトムアップで微細構造を作製する一手法。自発的に機能性ナノ構造が合成できる利点がある。
 物理的には動的斜め蒸着、ナノ粒子集積では拡散律速凝集、移流集積、誘電泳動などがある。
 〇表面増強ラマン散乱・SERS
 貴金属ナノ構造体の近傍にあるラマン散乱活性分子のラマン散乱強度が著しく増強される現象。通常は弱いラマン散乱を蛍光なみの強度に増感するので、バイオセンサー、環境分析、法医学分析の手法として期待されている。
 〇ラマン散乱
 分子から散乱された光の波長が分子が有する官能基の振動エネルギーに対応して波長シフトする現象。シフトは分子の官能基に特有なので分子の色とも呼ばれるが、検出感度が低いので、表面増強ラマン散乱が注目されている。

 天気は晴れ。朝起きて寒暖計を見たら4℃だった。玄関での温度だから、外はもっと冷たい・・やっと平年並みの気温かな。 散歩道沿いの庭で、”ビワ”に花が咲いている。開花時期は冬(11月~1月)で、半年後には熟した果実が見られる。
 ”ビワ”の原産は中国で、日本へは9世紀には渡来していたと考えられている(日本自生説もある)。現在日本で栽培されている品種は、江戸時代末期(天保~弘化)に中国からの大果品の種子から育成されたもの。「唐枇杷」と呼ばれる品種から改良されて、現在の二大品種(茂木と田中)が生まれたと言う。
 名(ビワ:枇杷)の由来は、葉の形が楽器の琵琶(びわ)に似ているから。古くからの民間薬(大薬王樹と呼ばれる)で、”ビワ”の葉は関節痛に効き(産毛のある葉裏を擦って貼る)、葉を煎じて「せき止め・利尿など」に効く、と言う。
 ビワ(枇杷、比波)
    果実もビワと呼ぶ
 英名:loquat
 学名:Eriobotrya japonica
 バラ科ビワ属、常緑高木
 原産地は中国
 開花時期は11月~1月
 花は白い五弁花、葯には毛が密に生えている
 花は両全花なので自家受粉が可能
 果実の成熟は5月~6月、黄橙色の実となる