ID物語

書きなぐりSF小説

第33話。夏立つ頃。3. オリヅル

2010-11-19 | Weblog
 (伊勢は着物のままロボットが飛び立てるか、確認する。空中サーフボードも、空飛ぶ自転車も、蒸気ロケットも低速なら差し支えないようだ。)

鈴鹿。狭い場所で、よく平気で飛んでる。

芦屋。ああ、よくできている。

鈴鹿。イチとレイはいいけど、この前、マグネたちはすぐに山越えができなかったのよ。

芦屋。作戦のことか?。シリーズBなどを使えばいい。これ以上機動力が向上したら、恐怖のシステムだ。

鈴鹿。そうね。あら、トースター号が2台ある。完成したんだ。

芦屋。見てみるか。

 (全員で近づいて、見てみる。開発を間近で見ていた火本が得意げに解説する。)

火本。これから改良するんだけど、よくできているよ。さすがに自動車メーカーの作。

鈴鹿。車高がこっちの実物大模型よりずっと高い。

火本。オフロード用だから。ドアが無いから、乗りにくい。

鈴鹿。乗っていいかな。

火本。どうぞ。

 (鈴鹿は乗って、装備を見たり、揺すったりする。)

鈴鹿。見かけよりずっと実用の感じ。

火本。渾身の作らしい。

鈴鹿。「ORIZURU(折鶴)」って何かな。

火本。ええと…。あーっ、ボタン押しちゃだめ。

 (車体後部からグライダーが上向きにシュワっと放出され、すぐにロケットが点火し轟音が響き渡る。くるっと半回転して翼が展開。水平飛行に移り、前にどんどん進んで行く。ロケットはほどなく停止し、そのままグライダー飛行。たまたま近くを飛行中のイチが回り込んで、キャッチする。)

鈴鹿。ブレッド・アンド・バタフライのことか。折鶴が飛んでいるイメージなんだ。

火本。そう。よかった、壊れないで。

 (イチがオリヅルを持ったまま、器用に着陸する。)

水本。まだプロトタイプなのよ。

火本。うん。この間、やっとまともに飛んだばかり。まだちゃんと着陸できない。

芦屋。垂直発射できる小型グライダー。よくできている。操縦できるのか。

火本。もちろん。操縦系は付いている。模型飛行機レベルだけど。

芦屋。妨害には弱い。

火本。そんなのまだ考えてないよ。すぐに解析できて、簡単に妨害できると思う。

水本。搭載する装置のこともあるし、設計すら確定していない。あくまで、アイデアのための模型。

清水。こけおどしには充分よ。今回の目玉の一つだわ。

土本。鶴と亀。発案は海原所長かな?。

火本。そうだよ。着陸時のために長い足を付ける予定。

清水。うまく考える。メカカメにメカツル。

伊勢。明日、観客の前で飛ばすの?。

火本。ちょっと恐い。録画しておこう。

伊勢。どこかにぶち当たらずに、着陸さえできれば、いいじゃない。練習しなさいよ。ロケットはいくつ準備したの?。

火本。20セットだけど、簡単に作れるらしい。

伊勢。操縦は運転席から。

水本。まだそこまで自動化できてない。プロポで私が操縦する。

伊勢。どんなのかな。

火本。やってみよう。水本、オリヅルの操縦頼む。鈴鹿さん、時速20kmほどで場内を回って。

鈴鹿。うん。オーケー。

 (火本が乗り込んで、鈴鹿が運転。出発。火本がオリヅルを発射、水本が操作する。滑空して、一周したところで、火本がキャッチ。戻ってきた。)

伊勢。なるほど。これだけでもいいくらい。練習したのはここまで。

火本。これができるまででも大変だった。先は長い。

清水。もう十分に技術突破しているような気がする。

水本。うん。三郎班はハード的には上出来と判断している。システムとして充実させる作業に入っている。

火本。本来なら、簡単な指令で、いまの動きができないといけない。自動化を進めるんだ。

芦屋。今のままでも、十分に威力がある。使い様だ。

水本。まあた作戦のこと考えている。

火本。大切なことだよ。参考になる。

 (音を聞いてモグから出てきた連中も、機材を組み立てていたID社のスタッフも一様に驚いている。サイボーグ研をアピールするには十分なようだ。)


最新の画像もっと見る