(さらに、その翌日、つまり演習の2日後、私はタロとジロとクロを引き連れて、東京サイボーグ農園にある、ID社の施設に行く。時間は待ってくれない。この3機で東京港ファミリー牧場の運用開始だ。セイリュウには、とりあえずゴールド3兄弟を付ける。こんなに自動人形がいるのに、足りない感じがする。亜有に相談。)
清水(テレビ会議)。アンを失って、さぞやショックでしょう。
奈良。何も感じないと言ったら嘘になる。だが、あれはアンドロイドだ。同じものは手に入らないが、代用はいくらでもいる。
清水。レイとか。
レイ。私、行こうか?。
奈良。気遣ってくれるのか。うれしい。だが、レイはサイボーグ研を守ってくれ。イチだけでは、負担が大きすぎる。
レイ。了解。
清水。それで、相談というのは、何ですか。
奈良。自動人形の追加の相談だ。とりあえず、2機程度。
清水。相互運用したらどうですか?。今やカワセミ号で、手軽に基地間を行き来できる。
奈良。そうしようか。この態勢でしばらく様子を見よう。
清水。自動人形の追加に関しては、優先度を上げずに本部に打診してみます。
奈良。そうしてくれ。ん、連絡だ。(通信機)情報収集部部長、奈良治です。
総務21。奈良さんあてに、大きな箱が届いていますけど、どうしましょう。
奈良。予定は聞いていない。どこから来た。
総務21。A国海軍、アレックス・サンダースさんからです。東京湾の海軍基地から。
奈良。知っている。どんな大きさの箱だ。
総務21。大きなのが4つと、小さいのが2つ。大きいのは、人が入れるくらい。
奈良。棺桶みたいな感じか。
総務21。そうですね。
奈良。取りに行く。情報収集部のオフィスの控え室に置いてくれ。すぐに行くから、誰か付けておいてくれ。
清水。私が、カワセミ号で行きます。
奈良。そうしてくれ。
(多分、自動人形だ。だが、アンドロイドは3機のはず。数が合わない。一つ多い。亜有もそう感じたらしく警戒して、虎之介を率いてID社東京の総務に行く。)
芦屋。これか、箱は。
清水。うん。確かに、6つ。
芦屋。分析していいかな。
清水。もちろん。
(アンドロイド4機とサムとジャグのようだ。外からの音響調査では、形が崩れている感じはしないのだと。私がタロたちといっしょに駆けつけたのは、30分後。)
奈良。自動人形なのか。
芦屋。そうらしい。発見したので、送ってきたのかな。
清水。数が合わない。アンドロイドが一機多い。
奈良。箱を開けてみよう。
(出てきたのは、サム、ジャグ、ジョーンズ、トーキョー、アン。全機無傷のようだ。そして…。)
清水。ケイコ。以前に会ったときと同じ姿。
奈良。覚えている。手紙か何か、入っていないか。
(機体だけだ。起こしてみる。)
奈良。起きよ、自動人形。
サム。内部状態の正常確認、周囲に検出できる脅威無し。遅くなりました、奈良部長。いま帰還しました。サムです。
奈良。生きていたのか。どこか壊れていないのか。
サム。無事です。
(自動人形が次々に起きる。軽く肩を抱く。すぐに離れた。アンなんか、実にわざとらしく話す。)
アン。心配してくれた?。
奈良。それなりに。
アン。とても。
奈良。その通り。
アン。でも、どうなったのか、データベースにない。
清水。ふうむ。何もしかけは無いようね。単に、送り返してきただけかな。
奈良。ケイコか。
ケイコ。ケイコです。コード名B04、本物。女性アンドロイドが一機、必要だからと送られて来たみたい。
奈良。それはその通りだが、なぜ、A国海軍から来た。
ケイコ。出発したのは、A国の国立研究所から。何かお聞きになっていませんか。
奈良。聞いていない。夢でも見ているようだ。
清水。なんか、深刻な話というより、なぞなぞの気がする。面白いから、サンダース少佐を呼んでみましょう。
(少佐は来るか来ないか、興味深かったが、ヘリですっ飛んで来た。30分後。)
少佐。来たぞ。…、アンドロイドだ。知らないのもいる。
ケイコ。ケイコです。よろしく。これから、日本にいる予定。
ジーン。本物なの?。
清水。さあ、知らない。でも、アンとケイコはオリジナルの機体。わざわざ他から改造はしないと思う。
ジーン。分かるんだ。
奈良。我が社が作製したクローンとはわずかな違いがある。それと、整備された跡がある。それも変だ。
少佐。じゃあ、整備記録を調べたらいい。
(それもそうか、ということで、記録を照会する。あった。Y国本部、航空部門だと。)
清水。部門長に聞いてみる。
ジーン。あちらは、丑三つ時よ。
清水。応答するかな。あ、出た。
部門長(通信機)。届いたかな。自動人形、6機。
奈良。おはようございます、部門長。届きました。こんな早く起こして、申し訳ありません。
部門長。遅かったではないか。何していた。眠いぞ。
芦屋。ええと、少佐を呼んだからかな。
少佐。何があったか、説明してくれ。
部門長。その声は…、誰?。
清水。名前を書いたのに、わざとらし。A国海軍の少佐です。日本の東京湾の基地に駐在。偽名を使わないといけない職業。
部門長。テレビ会議の方がいい。つないでくれ。
清水。了解。
(オフィスに移動。スクリーンを出す。)
部門長。自動人形が送られてきたのだ。日本の軍の演習場から。
少佐。我々も演習場として使っている。失礼、私はアレックス・サンダース少佐。はじめまして。こちらのジーンのことは知っているか。
部門長。資料にあった。私は、ID社Y国本部航空部門長のクエスチョン・ワードだ。
清水。部門長っ!。悪質な冗談ですっ!。
部門長。なので、緊急整備してケイコといっしょに送りつけたのだ。緊急輸送系で。心配していると思ったのでな。
奈良。肝が冷えました。
清水。こちらもご同様。
少佐。自力で脱出したのか。
部門長。よく分からんが、そちらの誰も知らんとしたら、そうだろう。
清水。いくら何でも、誘導した者がいるはず。
部門長。その調査は、そちらの仕事だろう。
清水。あくまで、わざとらし。
少佐。送付元は日本の軍。
部門長。その通り。何か思い当たる点でも。
清水。アンたちは、A国軍の演習に参加したのです。日本の演習場で。途中で行方不明になった。2日前に。
部門長。軍事コードが起動したな。
清水。多分、そうでしょう。
部門長。100%そうに決まっている。連絡はなかったんだろう?。
清水。ええ。なので、いつものおちゃらけをかました。
部門長。そのとおり。…、ひっかけがうまくなったな。もういいか。あとはメールで質問してくれ。
清水。了解。回線終了。
少佐。つまり、後半は、あの航空部門長の、冗談。
清水。いつものことです。ご容赦ください。
ジーン。この清水さんの上司です。
少佐。誰かが、何かを隠している。
清水。明らか。
少佐。おまえか?。
清水。そちらは?。
芦屋。もういいじゃないか。無事に戻ってきたんだ。
清水。1億ドルの問題よ。
少佐。知られたら都合の悪い事態が起こったんだ。
清水。そうでしょうね。
少佐。こちらの裏をかいた。完璧だ。うますぎる。
清水。1億ドルをお返しするよう、取り計らいます。借り賃だけだと、半額よりずっと安い。
少佐。すべてが明らかになってからだ。今後、その金が何往復するのか、分からん。
ジーン。こちらに内通者がいるのか。
少佐。可能性はある。しかし、他のいくつかの仮説より、特に強いとは思えん。
奈良。よく考えてからにしますか。
少佐。同意する。帰る。失礼した。
(少佐はさっさと基地に帰ってしまった。でも、その後、この件に関しては全く音沙汰なし。たしかに誰かが何かを隠している。でも、自動人形は戻ってきたから、ありがたく事態を受け入れることにした。費用の件は、すったもんだの末、最初の予定通り、通常の自動人形の貸し出し費用で決着した。
ちなみに、ケイコはA国ID社から日本に来るというので、Y国本部で整備されていたのだ。ケイコのいた国立研究所には、新しい機体が行くので、交換になったそうだ。しばらく日本にいてくれるそうだ。)
清水(テレビ会議)。アンを失って、さぞやショックでしょう。
奈良。何も感じないと言ったら嘘になる。だが、あれはアンドロイドだ。同じものは手に入らないが、代用はいくらでもいる。
清水。レイとか。
レイ。私、行こうか?。
奈良。気遣ってくれるのか。うれしい。だが、レイはサイボーグ研を守ってくれ。イチだけでは、負担が大きすぎる。
レイ。了解。
清水。それで、相談というのは、何ですか。
奈良。自動人形の追加の相談だ。とりあえず、2機程度。
清水。相互運用したらどうですか?。今やカワセミ号で、手軽に基地間を行き来できる。
奈良。そうしようか。この態勢でしばらく様子を見よう。
清水。自動人形の追加に関しては、優先度を上げずに本部に打診してみます。
奈良。そうしてくれ。ん、連絡だ。(通信機)情報収集部部長、奈良治です。
総務21。奈良さんあてに、大きな箱が届いていますけど、どうしましょう。
奈良。予定は聞いていない。どこから来た。
総務21。A国海軍、アレックス・サンダースさんからです。東京湾の海軍基地から。
奈良。知っている。どんな大きさの箱だ。
総務21。大きなのが4つと、小さいのが2つ。大きいのは、人が入れるくらい。
奈良。棺桶みたいな感じか。
総務21。そうですね。
奈良。取りに行く。情報収集部のオフィスの控え室に置いてくれ。すぐに行くから、誰か付けておいてくれ。
清水。私が、カワセミ号で行きます。
奈良。そうしてくれ。
(多分、自動人形だ。だが、アンドロイドは3機のはず。数が合わない。一つ多い。亜有もそう感じたらしく警戒して、虎之介を率いてID社東京の総務に行く。)
芦屋。これか、箱は。
清水。うん。確かに、6つ。
芦屋。分析していいかな。
清水。もちろん。
(アンドロイド4機とサムとジャグのようだ。外からの音響調査では、形が崩れている感じはしないのだと。私がタロたちといっしょに駆けつけたのは、30分後。)
奈良。自動人形なのか。
芦屋。そうらしい。発見したので、送ってきたのかな。
清水。数が合わない。アンドロイドが一機多い。
奈良。箱を開けてみよう。
(出てきたのは、サム、ジャグ、ジョーンズ、トーキョー、アン。全機無傷のようだ。そして…。)
清水。ケイコ。以前に会ったときと同じ姿。
奈良。覚えている。手紙か何か、入っていないか。
(機体だけだ。起こしてみる。)
奈良。起きよ、自動人形。
サム。内部状態の正常確認、周囲に検出できる脅威無し。遅くなりました、奈良部長。いま帰還しました。サムです。
奈良。生きていたのか。どこか壊れていないのか。
サム。無事です。
(自動人形が次々に起きる。軽く肩を抱く。すぐに離れた。アンなんか、実にわざとらしく話す。)
アン。心配してくれた?。
奈良。それなりに。
アン。とても。
奈良。その通り。
アン。でも、どうなったのか、データベースにない。
清水。ふうむ。何もしかけは無いようね。単に、送り返してきただけかな。
奈良。ケイコか。
ケイコ。ケイコです。コード名B04、本物。女性アンドロイドが一機、必要だからと送られて来たみたい。
奈良。それはその通りだが、なぜ、A国海軍から来た。
ケイコ。出発したのは、A国の国立研究所から。何かお聞きになっていませんか。
奈良。聞いていない。夢でも見ているようだ。
清水。なんか、深刻な話というより、なぞなぞの気がする。面白いから、サンダース少佐を呼んでみましょう。
(少佐は来るか来ないか、興味深かったが、ヘリですっ飛んで来た。30分後。)
少佐。来たぞ。…、アンドロイドだ。知らないのもいる。
ケイコ。ケイコです。よろしく。これから、日本にいる予定。
ジーン。本物なの?。
清水。さあ、知らない。でも、アンとケイコはオリジナルの機体。わざわざ他から改造はしないと思う。
ジーン。分かるんだ。
奈良。我が社が作製したクローンとはわずかな違いがある。それと、整備された跡がある。それも変だ。
少佐。じゃあ、整備記録を調べたらいい。
(それもそうか、ということで、記録を照会する。あった。Y国本部、航空部門だと。)
清水。部門長に聞いてみる。
ジーン。あちらは、丑三つ時よ。
清水。応答するかな。あ、出た。
部門長(通信機)。届いたかな。自動人形、6機。
奈良。おはようございます、部門長。届きました。こんな早く起こして、申し訳ありません。
部門長。遅かったではないか。何していた。眠いぞ。
芦屋。ええと、少佐を呼んだからかな。
少佐。何があったか、説明してくれ。
部門長。その声は…、誰?。
清水。名前を書いたのに、わざとらし。A国海軍の少佐です。日本の東京湾の基地に駐在。偽名を使わないといけない職業。
部門長。テレビ会議の方がいい。つないでくれ。
清水。了解。
(オフィスに移動。スクリーンを出す。)
部門長。自動人形が送られてきたのだ。日本の軍の演習場から。
少佐。我々も演習場として使っている。失礼、私はアレックス・サンダース少佐。はじめまして。こちらのジーンのことは知っているか。
部門長。資料にあった。私は、ID社Y国本部航空部門長のクエスチョン・ワードだ。
清水。部門長っ!。悪質な冗談ですっ!。
部門長。なので、緊急整備してケイコといっしょに送りつけたのだ。緊急輸送系で。心配していると思ったのでな。
奈良。肝が冷えました。
清水。こちらもご同様。
少佐。自力で脱出したのか。
部門長。よく分からんが、そちらの誰も知らんとしたら、そうだろう。
清水。いくら何でも、誘導した者がいるはず。
部門長。その調査は、そちらの仕事だろう。
清水。あくまで、わざとらし。
少佐。送付元は日本の軍。
部門長。その通り。何か思い当たる点でも。
清水。アンたちは、A国軍の演習に参加したのです。日本の演習場で。途中で行方不明になった。2日前に。
部門長。軍事コードが起動したな。
清水。多分、そうでしょう。
部門長。100%そうに決まっている。連絡はなかったんだろう?。
清水。ええ。なので、いつものおちゃらけをかました。
部門長。そのとおり。…、ひっかけがうまくなったな。もういいか。あとはメールで質問してくれ。
清水。了解。回線終了。
少佐。つまり、後半は、あの航空部門長の、冗談。
清水。いつものことです。ご容赦ください。
ジーン。この清水さんの上司です。
少佐。誰かが、何かを隠している。
清水。明らか。
少佐。おまえか?。
清水。そちらは?。
芦屋。もういいじゃないか。無事に戻ってきたんだ。
清水。1億ドルの問題よ。
少佐。知られたら都合の悪い事態が起こったんだ。
清水。そうでしょうね。
少佐。こちらの裏をかいた。完璧だ。うますぎる。
清水。1億ドルをお返しするよう、取り計らいます。借り賃だけだと、半額よりずっと安い。
少佐。すべてが明らかになってからだ。今後、その金が何往復するのか、分からん。
ジーン。こちらに内通者がいるのか。
少佐。可能性はある。しかし、他のいくつかの仮説より、特に強いとは思えん。
奈良。よく考えてからにしますか。
少佐。同意する。帰る。失礼した。
(少佐はさっさと基地に帰ってしまった。でも、その後、この件に関しては全く音沙汰なし。たしかに誰かが何かを隠している。でも、自動人形は戻ってきたから、ありがたく事態を受け入れることにした。費用の件は、すったもんだの末、最初の予定通り、通常の自動人形の貸し出し費用で決着した。
ちなみに、ケイコはA国ID社から日本に来るというので、Y国本部で整備されていたのだ。ケイコのいた国立研究所には、新しい機体が行くので、交換になったそうだ。しばらく日本にいてくれるそうだ。)