(展示会場は、ホテルから歩いて行ける。早朝から、舞台セットの組み立て。総務が急がせたのだ。大御所は午後から来る。港氏があせっている。陣容の把握に努めているのだ。加藤氏は落ち着いた顔して、次々に指令して行く。結構厳しい。伊勢が必死で踏ん張っている。)
土本。加藤さんって、落ち着いているのか慌てているのか、さっぱり分からない。
清水。慌てているみたい。必死の感じ。というか、律儀だから、港先生に合わせているのよ。
土本。いい人なんだ。
清水。日本を代表する作曲家、猫山園太の懐刀よ。ただ者ではない。
土本。猫山園太って、有名。お笑いのお芝居に付き合ってくださるのかしら。
清水。さあ。多分、小鹿氏とは話はまったくすれ違うでしょう。お互いに芸能だから、バカにはしないでしょうけど。
土本。クラシックって、芸能だったかしら。
清水。西洋の芸能。技芸、アートよ。
土本。チントンシャンとはずいぶん違うような気がする。
清水。猫山さんの作品には、日本の楽器がよく出てくる。通俗楽器が、たちまちにしてクラシックに色取りを添える。
土本。すごい。ただ者ではない。
清水。そうよ。あ、加藤さんが三味線弾き出した。器用。
(普通に聞いたらうまいと思うのだが、プロの演奏を知っている港氏には不評のようだ。お互い、必死になっているから、けんか腰。)
港。音が鳴っているだけだ。
加藤。すみません。素人です。
港。ギターじゃないぞ。困ったな。こっちにも三味線弾きはいるけど、頑固な芸人だ。猫山氏の音楽など、理解しっこない。
加藤。猫に小判。
港。微妙にずれてるな。
加藤。誰かー、三味線弾けませんかー?。
港。何やってんだ、お前。
土本。弾けるよ。やってみようか。
(土本が加藤氏から三味線を受け取る。小唄の一節らしい。かなりうまい。)
港。ずっといい。プロ級ではないけど、合いの手くらいならごまかせそうだ。
加藤。やってくれるかな。曲のさびの部分で弾く。
土本。やってみる。
水本。すごい、土本さん。流派とかあるんでしょう?。
土本。あるけど、私のはめちゃくちゃ。だって大学のサークルだもの。
港。じゃあ、我流か。
加藤。音はいいような気がする。
港。いいよ。器用なんだ。かえっていいかも。
(しばらくしたら、猫山氏とスタイリストの松武氏がやってきた。東京から大あわてできたらしい。いい人たちだ。)
猫山。はじめまして。あなたが港さん。有名ですよ。
港。まさか。この界隈だけです。そちらは全国区。こんな技芸に付き合ってくださって、恐縮です。
猫山。皮肉ですかな。精一杯がんばりますぞ。
港。お手柔らかに。
(猫山氏は加藤氏から事情を聞いている。土本に三味線を弾かせてみる。ちょっと考えている。と思ったら、モグに入ってしまった。曲のアイデアが湧いたらしい。勝手知ったるモグのモニタにすっ飛んでいったのだ。慌てて加藤氏が入る。港氏も興味が湧いたらしく、モグに入る。こちらからは、サポートに志摩をモグに入れる。)
松武。じゃあ、持ってきた衣裳を合わせてみますか。
(とりあえず、A31とU4(イチ、レイ、エレキ、マグネ)にあり合わせの和服を着せる。A31は町人風。エレキとマグネはお役人風。イチとレイは町人風に擬装した少年・少女忍者だ。)
松武。我ながら良くできている。すばらしい。
水本。びっくり。マグネなんか、決まりすぎている。
松武。あとの配役は、まだみたいなので、持ってきませんでした。
伊勢。どうするの?。
松武。大阪で調達します。
伊勢。デパートとか。
松武。一報を入れてある。…、おや、そこに新しい美人がいる。
伊勢。目ざといこと。ほら、あなた、土本さん。
土本。え、私?。土本五香と言います。大学院生。火本くんと同じ大学の。
松武。不思議だ。どこかで会ったような。デジャヴってやつか。
伊勢。あはは。私もそう思った。似てるんですよ。アンに、体形が。
松武。なあんだ。それだけか。アン、来てくれるか。
土本。また並ぶの?。やだな、超絶美人ロボットにかないっこない。
アン。そんなことない。美人同士。
松武。うむむ、できすぎ。顔は全く違うけど。
土本。もういいかな。
松武。ふむ。
(水本の時といっしょ。近づいたと思うと、いきなり髪をつかむ。)
土本。きゃーっ。あんたっ、何するのよー。
アン。落ち着いて。あなたは美女になる。
松武。その通り。小野小町もびっくり。なんか、ここ、美女ばっかり。
アン。例外もいる。
松武。そっ、それは…。
レイ。誰のことを言ってるのかな。
清水。ふん。悪かったわね。
松武。あのね、男性受けするあなたたちが言うセリフではない。
土本。あの、私の髪、離してくださいます?。
松武。失礼。見とれてしまった。
土本。全然見てなかったけど。
松武。でき上がり想像図ですよ。すばらしくなる。保証付き。カツラ付けてくれる?。
土本。演技ならいい。
松武。もちろん、演技です。来てくれたお客に一時の夢を売る。あなたが。
土本。できるのならうれしいわ。やってみる。
(松武氏も打ち合わせのために、モグに入っていった。展示会場は、屋根付きの小さめの競技場のような形をしている。前回と同じく、巨大スクリーンを設置し、その前に舞台をしつらえる。)
土本。加藤さんって、落ち着いているのか慌てているのか、さっぱり分からない。
清水。慌てているみたい。必死の感じ。というか、律儀だから、港先生に合わせているのよ。
土本。いい人なんだ。
清水。日本を代表する作曲家、猫山園太の懐刀よ。ただ者ではない。
土本。猫山園太って、有名。お笑いのお芝居に付き合ってくださるのかしら。
清水。さあ。多分、小鹿氏とは話はまったくすれ違うでしょう。お互いに芸能だから、バカにはしないでしょうけど。
土本。クラシックって、芸能だったかしら。
清水。西洋の芸能。技芸、アートよ。
土本。チントンシャンとはずいぶん違うような気がする。
清水。猫山さんの作品には、日本の楽器がよく出てくる。通俗楽器が、たちまちにしてクラシックに色取りを添える。
土本。すごい。ただ者ではない。
清水。そうよ。あ、加藤さんが三味線弾き出した。器用。
(普通に聞いたらうまいと思うのだが、プロの演奏を知っている港氏には不評のようだ。お互い、必死になっているから、けんか腰。)
港。音が鳴っているだけだ。
加藤。すみません。素人です。
港。ギターじゃないぞ。困ったな。こっちにも三味線弾きはいるけど、頑固な芸人だ。猫山氏の音楽など、理解しっこない。
加藤。猫に小判。
港。微妙にずれてるな。
加藤。誰かー、三味線弾けませんかー?。
港。何やってんだ、お前。
土本。弾けるよ。やってみようか。
(土本が加藤氏から三味線を受け取る。小唄の一節らしい。かなりうまい。)
港。ずっといい。プロ級ではないけど、合いの手くらいならごまかせそうだ。
加藤。やってくれるかな。曲のさびの部分で弾く。
土本。やってみる。
水本。すごい、土本さん。流派とかあるんでしょう?。
土本。あるけど、私のはめちゃくちゃ。だって大学のサークルだもの。
港。じゃあ、我流か。
加藤。音はいいような気がする。
港。いいよ。器用なんだ。かえっていいかも。
(しばらくしたら、猫山氏とスタイリストの松武氏がやってきた。東京から大あわてできたらしい。いい人たちだ。)
猫山。はじめまして。あなたが港さん。有名ですよ。
港。まさか。この界隈だけです。そちらは全国区。こんな技芸に付き合ってくださって、恐縮です。
猫山。皮肉ですかな。精一杯がんばりますぞ。
港。お手柔らかに。
(猫山氏は加藤氏から事情を聞いている。土本に三味線を弾かせてみる。ちょっと考えている。と思ったら、モグに入ってしまった。曲のアイデアが湧いたらしい。勝手知ったるモグのモニタにすっ飛んでいったのだ。慌てて加藤氏が入る。港氏も興味が湧いたらしく、モグに入る。こちらからは、サポートに志摩をモグに入れる。)
松武。じゃあ、持ってきた衣裳を合わせてみますか。
(とりあえず、A31とU4(イチ、レイ、エレキ、マグネ)にあり合わせの和服を着せる。A31は町人風。エレキとマグネはお役人風。イチとレイは町人風に擬装した少年・少女忍者だ。)
松武。我ながら良くできている。すばらしい。
水本。びっくり。マグネなんか、決まりすぎている。
松武。あとの配役は、まだみたいなので、持ってきませんでした。
伊勢。どうするの?。
松武。大阪で調達します。
伊勢。デパートとか。
松武。一報を入れてある。…、おや、そこに新しい美人がいる。
伊勢。目ざといこと。ほら、あなた、土本さん。
土本。え、私?。土本五香と言います。大学院生。火本くんと同じ大学の。
松武。不思議だ。どこかで会ったような。デジャヴってやつか。
伊勢。あはは。私もそう思った。似てるんですよ。アンに、体形が。
松武。なあんだ。それだけか。アン、来てくれるか。
土本。また並ぶの?。やだな、超絶美人ロボットにかないっこない。
アン。そんなことない。美人同士。
松武。うむむ、できすぎ。顔は全く違うけど。
土本。もういいかな。
松武。ふむ。
(水本の時といっしょ。近づいたと思うと、いきなり髪をつかむ。)
土本。きゃーっ。あんたっ、何するのよー。
アン。落ち着いて。あなたは美女になる。
松武。その通り。小野小町もびっくり。なんか、ここ、美女ばっかり。
アン。例外もいる。
松武。そっ、それは…。
レイ。誰のことを言ってるのかな。
清水。ふん。悪かったわね。
松武。あのね、男性受けするあなたたちが言うセリフではない。
土本。あの、私の髪、離してくださいます?。
松武。失礼。見とれてしまった。
土本。全然見てなかったけど。
松武。でき上がり想像図ですよ。すばらしくなる。保証付き。カツラ付けてくれる?。
土本。演技ならいい。
松武。もちろん、演技です。来てくれたお客に一時の夢を売る。あなたが。
土本。できるのならうれしいわ。やってみる。
(松武氏も打ち合わせのために、モグに入っていった。展示会場は、屋根付きの小さめの競技場のような形をしている。前回と同じく、巨大スクリーンを設置し、その前に舞台をしつらえる。)