写真家の中川雄三さんを動画の世界に誘ったのは私です。すでに中川さんは動物写真家として活躍されていて、同じ「アニマ世代」(動物雑誌アニマで育った)のカメラマンとして面識はあり、私は中川さんのフィールドワークに重きを置くその姿勢に惹かれ、ある時「動画をやってみませんか」とお誘いしてみたのです。でも中川さんには「静止画と動画の二つは出来ないから」と断られてしまいます。そんなある日、私は面白いカメラの存在を中川さんに話します。そのカメラとは「GoPro(ゴープロ)」という超小型カメラの事で、この小さなカメラなら生き物たちも警戒が少ないし、技術の進歩でいずれは動画と静止画の区別も無くなる、水中でも使えて、他の放送用カメラと較べてそんなに高価ではない、そんなことを話しました。実は、中川さんもこのカメラにはちょっと興味があったらしく、私が彼の背中を押すかたちで、ついに動画にも挑戦してくれることになったのです。
中川さんと、ゴープロとの相性は、抜群でした。彼の豊富な知識と経験と探求心が、このカメラの特性を最大限に引き出すことになったのです。いつのまにか、私たちのカメラワークは、ENG放送機器系と35mm系カメラと中川さんのゴープロウエアラブル系という3系統に分化し、それぞれの特徴を生かした画づくりに励むようになったのです。わずかな期間でゴープロを自分のものにした中川さんは、それから「オレはゴープロマイスターになる!」と言って、次から次へと素晴らしい映像を私たちに見せてくれたのでした。
〇制作に携わった番組のご案内です。
NHK ワイルドライフ 「タイの里山 スキハシコウ 大集団の子育てを追う」
12月4日(月)午後7時30分~ BS-1&BS4K (放送予定)
中川さんとの思い出は尽きないので、ゴープロにまつわる思い出話をひとつ。奥多摩でタヌキを撮影していた時、ゴープロをタヌキに持ち去られた中川さんは、翌日、半日をかけて山の中を探し回り、ついにゴープロを発見。その後、タイでもスキハシコウの取材中、ミズオオトカゲに池の中にゴープロを持ち去られ、この時はさすがに中川さんもあきらめ顔。ところが、ドライバーのYさんが、村から一人の青年を連れてきて、その青年が水に潜り、探すこと15分、何とその青年の手の中には中川さんのゴープロが! 大喜びの中川さん。この時の話になると「ミズオオトカゲの歯形が付いているゴープロを持っているのはオレだけだよ」と誇らしげに語ってくれるのでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/73/84/ed37a7b6402a771cac9a91b28a4193d1_s.jpg)
タイの北部ルーイで小型の内視鏡カメラを使いトッケイヤモリの撮影をする中川さん
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/19/40/9bc742718dc718bb4b7ba066c3509601_s.jpg)
タイの東部ヤソトーンで、露店を訪ねる中川さん。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/0c/1d/458a9c53ed40f2f04c7818ed8da5bc7f_s.jpg)
ゴープロをセットする中川さん。群馬県上野村。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/7c/c2/795ebb31364597cd198a43e02d96740e_s.jpg)
中川さんは多趣味で、木彫りも上手だった。数ある木彫りの名作の中で、私が唯一彼におねだりして頂いたものが、この木彫りのツバメの巣とヒナたち。今も毎日、玄関で私の送り迎えをしてくれる。「今日もフィールドワークしっかりね。オレの分まで楽しんできてよ!!」
「了解です!! 行ってきます」 いつもこんな会話をしています。