こんばんは。
今日は映画の報告をします。
日曜に予告どおり「
手塚治虫のブッダー赤い砂漠よ!美しくー」を見てきました。
製作はよくある「製作委員会」
実際は東映アニメーションで、
なんでも東映六十周年企画なんだそうです。
(が、映画の冒頭にあったのみでそんなことはあまり表にも出ずパンフにも書いてありませんでした。なんでだ。震災で遠慮しているのかなあ。)
東映アニメーションはいわずと知れた超メジャーな会社です。
監督は「聖闘士星矢」とか「ドラゴンボール」を手がけたベテランの方で、
作画監督は「エウレカセブン」や「神様家族」に関わった方(そう思えばなるほどと思えるような絵柄です 私は好き)だそうです。
手塚治虫の「ブッダ」というとお釈迦さまの生涯まんまと思われがちですが、そうでもない。
今日日の大河ドラマがそうであるように、
物語の流れをよくするよう、作者の伝えたい主人公像になるよう、主人公の生涯の意味づけをするよう
かなりの割合で登場人物が書き加えられていたり、仏伝の内容が前後したり変更されたりしています。(漫画の巻末にどこを変更したか註釈がつけられてました)
どんな部分が追加されたかと言うと、私が見る分では、シッダルタ(出家前のブッダ)が王位を捨てて出家しようと思うほどの「人間の苦しみの有り様」を描こうと
あるいは差別から逃れるために身分をたばかり、あるいは明日の糧のために盗みを働き人を殺し、あるいは自国の存亡や己の名誉のために戦争に自らを巻き込んでいく、そんなキャラクターたちが、
人を変え立場を変え、時を経て、何度も、何度も、描かれています。(もちろん仏伝中の人物も含まれます。)
それが読者にとってはその場で寄り添うべき「主要人物」として、しかも純粋であった筈がいつしか「野心」に翻弄されていく人物として描かれています。
手塚作品では少なくないのですが、今の時代「野心」を持つ主人公なんて珍しいですよね。
私なんか読んでいて辛いくらいなのですが、それが今回アニメ化されるに至ってどのようにまとめられているか気になっていました。
で、長くなりましたが、アニメではどうだったか。
ストーリーについてですが、シッダルタの誕生以前から出家まで、長い時間軸の中に大きく分けてふたつのストーリーがあったのですが、
大胆にも時間軸をふたつに折って、重ねて、二人の主要人物が共有する時間軸にまとめ上げてありました。
その分エピソードがが削除されたり登場人物に矛盾もありましたが(タッタは永遠のショタッ子?)
系統の似た話を繰り返すことなく、チャプラとシッダルタの生い立ちや生き様の対比にも成功して、すっきりとまとまったシナリオになったと思います。
あまり残酷なエピソードはカットしてあってほっとしました。
しかし、残されたストーリーにはかなり忠実であったと思います。
この映画の真骨頂は
手塚作品を語るにも拘らず、手塚キャラやテイストをそぎとって
独自の演出で、創りきったということにあると思います。
独自の演出… なんか上手く言いにくいんだけど、プリキュアとか、ドラゴンボールとか、「東映アニメーション」の王道作品って水戸黄門みたいに東映アニメーションらしいテイストみたいなのがあると思うんですよね。ストーリーがメジャーで、バトルが得意で、キャラは現実的でもなくメルヘンでもなくニヒリズムも無く明るくてエンターティメントに徹して独自のアニメキャラとして存在いる感じ。うーんますますわからん。
ではここで個別に映画の感想を。
★人物
ちょっと古の少女マンガぽくもあるけれど(岡野玲子さんのイメージイラストのせいかな)今に通じる絵柄でプロポーションも整ってました。キャラクターの多彩なアングルからの作画も均整がとれてて、うーん、さすが…!!という感じでした。手塚キャラの柔らかさは抜いてあったけれど、まるきりキャラ設定無視、では無かったと思います。原作では白目むいてたバンダカがハンサムでよかった。
★動物。
手塚治虫というと、愛らしく擬人化された動物が魅力ですし、残酷な物語の緩衝材になったり、彼らがブッダの超人性の演出に一役かう部分が原作にはあったのですが、
そこも潔く捨てて、動物は大変リアルに表現されてました。
いや、現実に近いような動物の動き、殊に戦闘シーンでの馬の作画と動きに感心しました。戦場なので馬のモブシーンだらけなのにしっかりと動いている~
どれだけの労作であろうかと感心しました。
★アクションとバトル。
さすがバトルの東映動画~ と言う感じですごかったです。
戦士の決闘シーンで剣と剣が打ち合って火花を散らすシーンではキャラクターの動きも良く、ひらめいた剣がこっちに向かって来るのでとは錯覚するほどのリアリティがありました。戦闘時の音響が良かった。
また、なんといっても圧巻は戦場のシーンで、先ほどの馬もそうですが、兵士もあれだけの大画面に大勢手書きですみずみまで描きこんであって、しかも動いていて
映画、さすが記念作品
と思わせるだけのど迫力がありました。ベン・ハーとか十戒みたい。物量の説得力。
戦いのあとの赤茶けて累々と広がる兵士の遺体はそれぞれが違う姿勢で倒れていて、これが実写なら見ていられない感じで、私個人的には、因果により戦争や死から抜け出ることの出来ない人間の苦しみがこのシーンから一番伝わった気がしました。
★静かな場面について
パンフだと、静かなシーンの人物の視線や動きに心をくだいたとありましたが、残念ながら私的には普通にスルーして見てしまいました。動作もですが、作中人物の言動に意外性を感じる感動ががなかったから。原恵一さんや高畑勲さんなどの演出と比較すると生身の人間の心からにじみ出てくるような動作の機微を感じることはできなかったです。だからといってこの作品にマイナスの印象を受けたわけではありません。
ただ、ラスト シッダルタが手を合わすシーンで、それでシッダルタの「仏性」を伝えようとするなら、数多くの遺体をすり抜けて知り合いの遺体だけに手を合わすのは不自然だし、その遺体から武器も抜かずに目を閉じるのは一般人の感覚からしても不自然だと思いました。
★声の出演
吉永早百合(ナレーション さすが違和感無く上手かった)とか吉岡秀隆(主人公 ひ弱なシッダルタに声が合ってた)能の家元の人(能の声の出し方かもしれんが、あまり上手いとは思えなかった)など一般?の俳優さんの他
水樹奈々さん大谷育江さん、玄田哲章さん折笠愛さんとか櫻井孝弘さんとか、テイルズでもおなじみの豪華声優陣が脇をがっちり固めてました。
水樹奈々さんがいつもと違う雰囲気ですごかったですー。
★まとめー
手塚治虫作の「ブッダ」とがっぷり四つになって、格闘して
誠意とお金と時間と手間をかけて、東映アニメーションのセンス(?)でもう一度作り上げたような作品でした。 見 ご た え あ り !
仏 教 度 ★★☆☆☆
手塚治虫度 ★★★☆☆
「ブッダ」度 ★★★☆☆
スペクタクル度 ★★★★★
アクション度 ★★★★★
ていねい度 ★★★★★
芸が細かい度 ★★★☆☆
いったい誰に
見て欲しいの度 ★★☆☆☆
東映動画度 ★★★★★
力 作 度 ★★★★★
いっしょに行った人に「どうだった?」と聞いたら
「私はギャグが好きだし、好きなタイプのアニメじゃない」と言いつつ
5点満点中 4.5点 と言う評価でした。
映画館に来てた人は六十くらいの夫婦連れが10組位の入りでした。
私達がおっとびっくり最年少くらい(^^;
若い人が飛びつくとも思えんし、血が飛び出るから子どもにも見せにくい。
でも、これだけ丁寧に作ってある作品、もっと多くの人に見て欲しいな、と思いました。

ペンタブが正気を振り絞って描いた絵。
ながなが失礼しました。
では拍手お礼です。
前回と前々回の日記にひとぽちずついただいています。
また、5月29日と5月30日の拍手にひとぽちずついただきました。
どれもお絵描きへの応援ポチではないかな、と思います。
励みになります。 有難うございました!
次回はお絵描き教室の報告をしますね~♪