家に着くと玄関には彼の靴があった。珍しいな、仕事終わるの早かったのかな、なんて考えながら靴を脱ぐ。
部屋に上がると良い匂いがした。どうやら夕食の準備までしてくれているらしい。ここまでくると何か変だ。絶対におかしい。台所へ顔を出すと、彼が妙ににこやかな表情で私を出迎えた。彼の唇が開きかける。身構える私。
「○○。おかえりんこ♪」
「ただいまん、――ッ!!」
たぶん、私は赤面していたのではないかと思う。ギリギリセーフだったとはいえ、反応しかけた自分が恨めしい。
私怒ってるんです、とにらみ付けてやると彼は飄々として一言。
「ぷっ。ダメだなぁ、ただいまんもす、だよ」
やられた。完全にしてやられた。
こいつのことだ。これをやりたかったがために夕食の準備までしたに違いない。怒った私を宥めることまで計算尽くなのだ。
「っのばか!」
「痛っ」
何か無性に腹がたってひっぱたいてやった。
――カレーの味は、悪くなかった。
妙に時間がないのかあるのかわからん近頃です。
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