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なののり。日々のしょうもない書き散らし。

高専カンファレンスに関する雑感

2011-01-10 16:29:49 | 書き散らし

twitterのタイムラインが騒がしかったので件のLTを見ました.この件に乗じて,高専カンファレンスに関する私(@gakyo)の雑感をだらだらだらだら書いておきます.世迷い言のように同じことを繰り返しているし,まとまっていないのでとても読みにくいと思いますが.

なお,最後に書くように割と門外漢なもので事実誤認とかあったらご指摘いただけると幸いです. 異論反論歓迎ですが,反応出来るとは限らないことをご承知置きください.出来るだけ目は通すようにいたします.あと押しつけをしたいわけではありません.念のため.

今回の発表とその反応に関する雑感 - スパイスが利きすぎると食べられない人も出てくる

発表内容そのものはネタ比重が多かったとはいえ特別騒がれるほどではないと感じました.
簡単にこんなコト出来るよ!やってみようよ!というメインメッセージは誰も損をしないと思います.それどころか有益な人だっているでしょう.
かく言う私も,前置きは冗長だなと感じたものの,へぇ,こんなこと出来るんだ,なるほどねと素直に思って見ることができました.
発表の内容(技術的なレベルと本命のメッセージ)については十分伝わっていたし,本質的な問題はなかったと考えます.

失礼な話になりますが,開催前にページの発表一覧を見た時,実のところ私は見るに値しない発表だろうなと思いました.私の場合はタイトルを見た時点での先入観としてあまり好意的な印象を持てなかったからです.実際にリアルタイムでは見ませんでした(リアルタイム視聴に消極的なのには回線が細いのも原因がある).

そして,私はこのタイトルから来る先入観は今回の騒動にそれなりに影響したんじゃないかと思っています.
例えば,発表の題目がほんの少し違って「HTML5で作るあずにゃんぺろぺろ」だったら,大分印象も違ったんじゃないだろうか,と.発表者のfist0さんは意外性というかオタクへのアピールを狙ったのかもしれないけれど,それが大分裏目に出たんじゃなかろうか,と.
発表概要がある訳でもない.発表者のことをよく知らない.このような状況で高専カンファレンスに詳しくない人からすれば,発表に関する事前知識はタイトルのみです.導入までがやや長かったから,余計に視聴者は「いったいなにやらかすんだ」と思ってたんじゃないでしょうか(私は騒ぎが起きてから見たのでちょっと身構えて見たクチ).

発表概要を掲載することや,主催者や発表経験者などのアドバイザがより相応しいと思われるタイトルを提案するというのはこの一種の不一致を回避するために有効かもしれません.

あと,批判するならまず発表(運営)してみろよ的な意見も見掛けたが,議論を深めるためには大抵役に立たないと思います.経験的には対立を深めるか,議論を萎縮させてしまうだけです.もしかしたら,有用な意見を殺してしまうかもしれない.
発言者は重々承知されていることと思いますが,やってみるのはそれなりに手間暇がかかるはずです.やる気だったり,時間だったり人それぞれだろうとは思いますが,結構なハードルです.過ぎてみれば,割と何ともないことかもしれない.それでも全員が出来るわけではない.ましてや上手くやれるとは限らない.
そういった感じで,その人にとって何らかのコストが高いので見ているだけという人はいます.でも彼らも将来の発表者・運営者候補です.そうでなくても参加者ではあります.たとえustで見ているだけだとしても参加者です.彼らが意見をいう自由自体を抑圧してはならないと思います(個人攻撃に近いような意見であれば感心出来ませんが).
とにかく,参加者・発表者を増やしたいと願うなら変な形でハードルをあげるようなことはすべきじゃないでしょう.

別の切り口になりますが,気をつけなくてはならないのは,今のところ高専カンファレンスはオタク的感性を持った(or 受容出来る)高専生のためだけの場ではないということだと思います.少なくとも私は「それ以外の人たち」にも開かれているし,見られることを意識しないといけないと思っています.同時に高専カンファレンスは単純に気に入らないなら出て行けという風にはなっていないと思います.だから,「それ以外の人たち」が高専カンファレンスについて意見をいうのも自由です.
オタク的感性による表現が不適切だと感じたり不快だと思う人がいる可能性は大いにあります.私はオタク的感性に嫌悪感・忌避感をもつ人や恥ずかしいものだと思う人は高専関係者の中にも結構いるものだと認識しています.
彼らは自分たちが嫌いなオタク的感性をもつ人間と一緒だと見られることを望みません.嫌悪や恥ずかしさは感情です.そうそう解決出来るものじゃありません.彼らを説得するような解決を目指すのもいいかもしれませんが,それはたぶん高専カンファレンスの枠内でやることからは逸脱してしまっているでしょう.
とはいえ,もし,それらの人たちに一切の配慮をしないのであれば,嫌悪感や恥ずかしさをもつ人たちからみれば嫌がらせになってしまう.そういう人たちから非難を受けることや彼らが離れていくことを許容しなくてはならない.
無理矢理例えるなら「みんなで楽しくカレーを食いましょう」っていう場で「辛いのは苦手です」という人に「激辛カレー」を出しているようなもんかもしれないわけです.

彼らもまた高専カンファレンスを形作る人々の一部と考えられる以上は,一定の配慮が必要なはずです.社会的なドウコウだとか体面だとか除いた論点はここにあると思っています.
彼らのことを考えれば,敷居の低さを表現するためにターゲットを無意識に絞ってしまうことは高専カンファレンス全体の活性化にとってプラスだけというわけにはいかないことは意識してもいいかなと思います.激辛に興味ある人だけじゃない.むしろ苦手な人もいます.
今後も参加者や発表者を増やしたい,高専カンファレンスをもっと活性化させたいのであればそういった彼らのこともそれなりに考えにいれても良いように思います.
何より,スパイスが利きすぎただけで高専カンファレンスが高専関係者やら外部やらからゲテモノ扱いされて,その「本質的な良さ」を理解してもらえなくなること/否定されてしまうようなことはもったいない.だから,スパイスをどこまで利かせていいのかというのは手探りでも探っていかなくてはならないと思っています.

 

高専カンファレンスに関する雑感 - 期待と現実の間,あるいは外面と実態の間,その落差

傍から見ていて感じる高専カンファレンスの課題の一つは,きつい言い方かもしれませんがが,ちょっとした「羊頭狗肉」状態が起きていることではないかと思います.私は上述した騒動の遠因にもなっていると考えています.

高専カンファレンスは大手インターネットメディアに取り上げられたり,twitterを通じて拡散したりと大きく規模を増しました.ある種の公共性を求められるようになりました.
この間,母校に挨拶に伺った時に指導教員から高専カンファレンスという言葉が出てきて驚きました.うちの高専はOB/OGのネットワークが弱いから,参考にしたりあるいは参加したりといったことが出来ないか考えているようでした.
高専カンファレンスは現役からOB/OGまで広く高専関係者を繋ぐ他には見られない貴重な場として高専関係者へ着実に浸透しているし,とても期待されているのだと思います.

それではその掲げる看板,外向けの宣伝はどうなっているでしょうかか?
公式ページには,

“高専カンファレンスは高専生とその卒業生によるプレゼン型技術勉強会です。IT、工業デザイン、経営、物理、化学など多様性に富む発表を通じて若い技術者の育成や交流を促進し、高専および科学技術分野の発展を目指します。”

とあります.文を必要最低限までそぎ落としてみましょう.

“高専カンファレンスは技術勉強会です。高専および科学技術分野の発展を目指します。”

高専カンファレンスとは技術勉強会であり,そしてその目指すところは高専と科学技術の発展ということになっています.素晴らしい理念です.

さて,それではこれを見た人はまず何を期待するでしょうか.高専カンファレンスに知的な有用性,ちょっと飛躍してある種の公益性を期待するんじゃないでしょうか.
であれば,高専生のお祭りや発表・運営などを通じた自己実現の場という形ではなく,まずはじめに「まじめな勉強会としての高専カンファレンス」を目的に聴講したり,視聴したりする参加者はいておかしくないはずです.

「まじめな勉強会」を入り口として,人を集めるのは良い戦略だと思います.ただ,これは一歩間違えれば詐欺みたいなもので,人によっては,ネタ比重が大きな発表は失望の要因となり得るわけです.Fist0さんの言葉を借りれば私も含めて彼らは高専カンファレンスを「何か大きなものと捉えすぎている」わけですが,その一因は高専カンファレンスにもあると思います.上の理念を掲げることで,高専カンファレンスはポスターなり,メディアなりで自身が何か大きなモノのように見えても仕方ない宣伝をしてきました.
そして期待が大きければそれだけ失望した時の落差は大きい.ここに一つ,外面と実態との差が少し生じるんじゃないでしょうか.
繰り返しになるけれども,彼らもまた参加者であることは常に意識しなくてはならないでしょう.

早期から参加している人たちや何度も参加している人たち,いわば高専カンファレンスの文化を知る人たちは,ネタ的発表も「高専カンファレンスの特徴・良さ」だと好意的に捉えています.私もこれがおもしろさの大きな要素だとは思っています.
しかし,ネタ発表が好意的に捉えられるためには,それなりの事前知識が必要なことに注意しなくてはならないとも思います.そのネタを理解するための素養(例えばアニメが分かる.オタクの中で流行っているアニメが分からない人なんていくらでもいます)もそうですが,ネタ発表そのものが存在しうることを知らないと余計に許容出来ない可能性は高まるでしょう.要するに裏切られた感が強まります.

勝手に過剰な期待をされても,って話ですが,私の知る限りでは,この事前知識は高専カンファレンスに近しい人たちの内部にある暗黙知のようになっていないでしょうか.少なくとも運営側から積極的に宣伝・告知はされていないように思います.積極的に宣伝・告知されるのは聞こえの良い違う側面です.確かに勝手に過剰な期待をもって,勝手に失望していくとはいえ,それへの対応をしてきたでしょうか?

私は積極的に宣伝・告知されない理由の一つが,運営を行っている人たちが,外部に対して高専カンファレンスや高専そのものが奇異に見られることを多かれ少なかれ避けているからと理解しています.
外側から見てネタ発表部分のみを抽出したとき,下手するとそこに広告通りの「為になるようなところ」がちゃんとあることを認めてもらえないんじゃないかと危惧しています.

こうした背景を前提としたとき,暗黙知を知らずに来た人たち,そしてオタク的感性を受け付けない人たちがアレルギーを起こしたのに対して,面白みのない狭量な連中だとレッテル貼りして,お呼びでない,見なければいい,気に入らなければ自分でやればいい,と無碍に扱っていいでしょうか? 無碍に扱ったとしたら,それこそ狭量の現れだと思うし,高専カンファレンスはまだまだ伸びるはずです.伸びて欲しい.
オープンにしている以上は周囲から見られていること,そして新しく入ってくる人たちの存在をそれなりに考慮しなくてはならないのだと思っています.思うに高専カンファレンスはクローズドベータは終えているのです.アーリーアダプターたちが群がっていた状況から変わっていくことは不思議ではないと思います.

現状は運営側も発表者側もほぼ一切の制約なく活動しているようです.参加者もそうです.各々が各々の目的・期待をもって集まります.いろいろな良い面もあったことでしょう,それが是とされてここまできました.だから,今回のFist0さんの発表はその意味では全く非はない.
しかし,これまでは比較的同質性の高い集団だったものが規模が大きくなりました.あるいはなりつつあります.これまでとは毛色の異なる人たちも参加します.外からの注目も集まります.もしかしたら,それと知らず過剰な期待を集め続けています.そんな状態で人々が勝手気ままな方向を向いていたら,そりゃいつか事故も起きようってものです.そろそろ交通整理が必要なんじゃないのかとは傍から見ていても思います.

この課題への解として,聡明な方々によってすでに指摘されているように,今後は各主催者がそれぞれの判断でテーマ設定やら応募の取捨選択やらそのポリシー表明やらすることが挙げられるでしょう.これは今後必須になっていくんじゃないかと思います.

そして私もまた,この各実行委員会に任せるという方法が現状ではベターだと考えています.どこら辺までネタ発表を許すのかとか,事前にどこまで発表内容に関する情報提出を求めるかだとか各実行委員会が設定するようにする.ただし,どんなものにせよ各実行委員会の方針は必ず公表するのが良いでしょう.全くのフリーならフリーといっておけば良いのです.
発表・聴講を問わず参加者がそれを目安に参加を決定するようになれば,各人が期待するものと現実との不一致をある程度避けられるようになることが期待出来ます.それでもなお,期待したものが得られなければ,運営に回ってもいい.
そして,おそらくは淘汰が進み,どのような人たちがどんな高専カンファレンスを求めているのかがもう少しよく見えてくるものと思います.
(もしかしたら,その結果,いまは一つに見える高専カンファレンスのクラスタが方向性の違いで明確に分派することもあるかもしれない.それはちょっと悲しいかもしれないけれど自然なことで必ずしも悪いことではないと思う.極論ではありますがそれでもいいんじゃないか.)

応募を絞ることで,開催ごとに特色を出すだけでなく,実行委員会の方針によってはある程度質を保証することもできるでしょう.最近はとても活発に開催されるようになっているので特色を出す意味でも量的拡充から質的拡充へ重点を移すことは悪いことじゃないとも思います.

単純に発表の内容が高レベルになっていくとハードルがあがって発表数を萎縮させるという意見も見掛けました.これは尤もだと思います.敷居が低いことは高専カンファレンスの良いところだから何らかの形で残すべきです.Fist0さんらが心がけているような敷居の低さが意識させられる発表は少なくない人にとって「自分も発表をやれるかもしれない」と勇気づけるきっかけとなっているでしょう.そのような発表を見て参加する人が増えるなら,それは素晴らしいことだと思います.
例えば,実行委員会次第で分野だけでなくいろんなクォリティレベルのカンファレンスがあっていいとも思っています.新規参入者を暖かく見守るカンファとか.発表回数多数の猛者達がしのぎを削るカンファとか.現役学生限定セッションとか.卒論カンファとか.
でももし多数が敷居の低さを競うようになってしまったら,下限を緩やかに拡張するようなことになりかねないのには注意すべきでしょう.それでは進歩につながりにくい.

参加する,発表する,運営するそれぞれの高専関係者の進歩を通じて高専の発展に資する,そのためには発表者・参加者そして外部から見た時に「何かしら分かりやすい形で為になっている」ようなカンファが望ましいと考えます.そのために発表内容の向上を推奨するような方策もあって良いでしょう.
発表内容の向上については,アンケートや投票などでベストプレゼンターを毎回決めて後々でも良いので公表してみてモチベーションに繋げるとか(どこかでやっていたような気も? 賞品とか募ってみてもいいかもしれませんね.出資者が○○賞とか作れることにするとか),発表に不安がある人が気軽に相談出来るよう公式にアドバイザー制度を立ち上げてみるとかやれることは結構ありそうだと感じます.

 

門外漢の思うこと - ちょっと離れて見ていて

ちなみに私自身の高専カンファレンスへの立ち位置はかなり微妙です.いろいろ棚上げして偉そうに書いているし,ちょこちょこつまみ食いのように高専カンファレンス界隈の言説を見ているので,受け売りも多いだろうと思います.不快感を覚えた方がいらしたら大変申し訳ないことをしました.予防線として謝っておきます.

立ち位置が微妙と書きましたので,私の高専カンファレンス遍歴について触れておきます.
高専カンファレンスは第三回の東京あたりの情報をネットで見掛けてから,ちらちら開催告知やら参加報告やらを見ていた程度でした.へー,こんなのあるんだ,と.その後は情報系が多かった印象で強い興味を惹かれなかったこととカネとか時間とかを言い訳にして見過ごしていた感じです.
知人が発表すると知って2009年秋のカンファレンスに参加しました.実際に現地まで足を運んだのはいまのところ最初で最後になっています.私は上述したように比較的純粋な勉強会あるいはシンポジウムのようなものを期待していたクチでした.
だから,感想としては「見ていて面白いが,聴講してここで自分が何を得られるのかが捉えきれない」といったところです.他のカンファも自室の回線が細いのもあってまともに見たことがありません.
オタク的な素養はある方ですからネタは許容できる方ですが,ちょっとなー,と幻滅したところも正直在りました.個人差はあれど,スパイスは利きすぎてもおいしくいただけないという一例ですね.そして最終的に「また知人が発表するとか,どうしても見たい発表があるとかでもなければ参加しなくていいかな」と思ったのでした.
まー,二次会で大盛り上がりの中,引き籠り気質なので馴染めなかったのもあったりで,現状では更にカネ・ヒマを投じるのに尻込みしてしまったりという至極個人的な理由もありました.
一回参加した後はもう少し様子を見ようと思って,とりあえず ML に参加して適当にそれらしき人々を twitter でフォローしてみたりと消極的なウォッチをはじめました.残念ながら,自身の問題を解決してまで積極的に参加するだけの余裕がいまのところありませんが.

それでも,高専カンファレンスの理念(定義や目的はもちろんだが,高専生という広いくくりで集まって楽しくやってみようという発想)には共感していますし,今までこれだけのことを実現してきたことを素晴らしいと思います.高専カンファレンスの可能性に期待しているひとりではあります.

幸い,運営の主たるメンバーの方々はこれからの高専カンファレンスをどうするか,会議を開くそうです.これだけ書いたけれど,基本的には他人事だと思って私は楽観視しています.これだけ熱心な人々が集まって協力しているのだから良い方向に向かうでしょう.

そろそろおわりにしましょう.ちょっと前から出ていた twitter や ML 上での議論や今回の騒動は高専カンファレンスに対して私が感じていたモヤモヤ感を一度整理するのに良い機会だったと思います.
以上,乱筆乱文だけれども私感でした.高専カンファレンスの更なる進化への一助となればと思って.

運営側・発表者・参加者とカンファレンスを作り上げている人々は遠目に見ていてとても眩しい.
だから,眩しさに目をしばしばさせながら,ちょっと離れたところから眺めていようと思います.いつか何か絡んでみたいと密かに思いつつ.


2011/01/14 1:26 追記あり

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