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ワクチン薬害、祈りの科学的研究、人体構成分子によるオーソモレキュラー医学、医学の大罪、太陽系惑星文明の科学的証拠

毎日新聞「ノバルティスのバルサルタン、ゆがんだ薬とカネ」

2020年01月13日 18時32分12秒 | ワイロ医学: 利益相反は越後屋と悪代官の名セリフ

毎日新聞「ノバルティスのバルサルタン、ゆがんだ薬とカネ」

 

日本高血圧学会の幹部が関与した、日本の医療を震撼させたノバルティスのバルサルタン事件を復習するために、毎日新聞の記事をご紹介します。

少し古い記事ですが、医学界の持つ基本的な重大な欠陥は、今も変わっていません。

バルサルタン事件で問題とされた使い道を指定しない「奨学寄附金」という事実上の裏金ワイロの提供は今はなくなっていますが、別の形の金銭提供が行われますから、からくりの基本的欠陥は変わっていません。

 

医薬スキャンダル:バルサルタン・ショック ツケ、国民医療費に ゆがんだ「薬とカネ」(その1)

毎日新聞 2014年06月02日 東京朝刊

バルサルタン臨床試験疑惑をめぐる構図と背景にある主な問題点

 医学界と製薬業界への信頼を失墜させたバルサルタン臨床試験疑惑は、製薬会社ノバルティスファーマが試験への不透明な関与を認めて謝罪してから1年がたった。この間、臨床試験をした5大学のうち4大学がデータ操作の可能性を認めたことで疑惑はさらに深まり、広がった。国や学界、製薬業界は、再発防止のために制度を抜本的に見直した。日本の医薬研究史に残るであろう不祥事はいかにして表面化したのか。どこにどんな問題が潜んでいたのか。約2年間にわたり「薬とカネ」の取材を続けてきた記者が報告する。【河内敏康、八田浩輔】

 

 ◇「医学村」論文への疑問放置

 降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)を使って実施した臨床試験の論文は、東京慈恵会医大、滋賀医大、京都府立医大、千葉大、名古屋大の順に発表され、程度の差こそあれ、どれもバルサルタンがよい薬だと結論付けていた。その陰で、慈恵医大が2007年に論文を世に出した直後から、少なくない専門家が不信を表明していたが、疑問は放置されていた。

 09年10月、日本高血圧学会が臨床試験の評価をテーマにシンポジウムを開催していた。東京都健康長寿医療センターの桑島巌(いわお)医師は壇上で「医師がデータを操作できる手法を使い、あり得ない結果を導いている」と、府立医大などの論文を鋭く批判した。すると、試験責任者の松原弘明教授(当時)が客席から立ち上がり「研究者仲間のチェックを受けている。なぜ文句を付けるんだ」と激高した。

 桑島医師の訴えを会場の多くの医師が聞いていた。だが一つの意見に過ぎないと受け止められ、調査されることはなかった。

 その2年半後の12年4月。今度は京都大病院の由井芳樹医師がバルサルタンの臨床試験論文に批判の声を上げる。「血圧のデータの統計的な傾向が、同様の試験をした海外の論文と異なっていて、おかしい」とする旨の論文を発表したのだった。「不正」と明示こそしていないが、研究者が読めば、不正を疑っていることが分かる厳しい内容だった。

 ノバルティスファーマの看板商品と、それを後押しする有名大学による大規模臨床試験。そこに再び持ち上がった疑念。記者は複数の統計学者らに意見を求めた。だが「確かに不自然だが、100%あり得ないとまでは言い切れない」と慎重な意見が多かった。

 <A 日本循環器学会は12年末、論文のデータのでたらめさに気付いた興梠(こうろ)貴英医師からの「通報」を受けて、府立医大の論文撤回に踏み切った。>

 だが、その姿勢は極めて慎重だった。撤回理由を「データ解析に多くの深刻な誤りがあるため」としか公表せず、学会は「誤り」の詳細を明かそうとしなかった。

 このころ、興梠医師は日本高血圧学会の評議員の知人から「府立医大の松原先生は高血圧学会内に友人が多く、影響力が大きい。誰から攻撃を食らうかわからない。論文にして公表するのはやめろ」とアドバイスされたという。

 その高血圧学会は、心臓や血管などの循環器分野の中で特に高血圧をテーマにする専門家集団だ。現場の医師に向けた診療ガイドラインで慈恵医大の試験論文を引用していた。由井医師の批判論文が出た3カ月後には、医療専門誌のノ社の記事広告に学会幹部らが登場。医師同士の座談会を載せており、幹部らはその中で由井医師への反論を語り「疑念は払拭(ふっしょく)された」と強調した。

 研究者は、学術誌で論文を発表したり学会発表したりして、意見が異なる研究者と論争する。科学を進展させるためのこのシステムは、不正を暴くことを目的にしていない。バルサルタンの臨床試験を巡る疑問も何度か論争の対象になったものの、それは医学コミュニティーの内側にとどまり、6年が経過した。

 それでも、ともかく事態の歯車を回した循環器学会に比べ高血圧学会は対照的にみえる。日本医学会のある幹部は「高血圧学会幹部は、ノ社の広告に登場してあの薬をさんざん薦めてきたからね……」と冷ややかだ。循環器学会の関係者は「当方の幹部は広告に加わらず、ノ社に取り込まれていなかったことが大きかった」と振り返る。

 

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 ■データ不正防止への取り組み

 国から医薬品としての承認を得るための「治験」には薬事法に基づく厳しい規制がある。一方、市販後の臨床試験には強制力の無い指針しか無かったが、国はデータ操作を防ぐため、今年5月にこの指針の改定案をまとめた。カルテと論文に使う解析用データとの食い違いを発見するため、試験の途中で確認する「モニタリング」と試験終了時に調べる「監査」を導入する。時間が経過してからでも調べられるよう、データの長期保存も義務付ける。法の網をかぶせて、罰則を設けるかについても議論を始めている。

 

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 ◇臨床試験、製薬会社頼み

 13年2月にノ社社長の定例記者会見が東京で開かれた。直前に、毎日新聞などが府立医大チームの論文が撤回されたと報じていた。「ノバルティスは論文を宣伝に使ってきたが、試験に関わっていないのか」との質問に、三谷宏幸社長(当時)はこう言った。「あの論文が宣伝に使えなくなったのは残念だ。ただ、我々は試験のやり方などに直接関与できない。社員の試験への関与も全くゼロだ」

 しかし「統計解析をしたのはノ社の社員だ」とのうわさが、実名と共に医療関係者の間に広まりつつあった。ただ、論文にある研究者たちの肩書欄のどこにも「ノバルティスファーマ」は見当たらず、統計解析の担当者の所属は「大阪市立大」と記載されている。

 3月、記者は三谷社長に単独取材する機会を得た。場所はノ社本社の一室。記者がうわさされる人物の名前を挙げると、三谷社長は「彼は会社の人ですよ。統計のことをよく知っていて、日本の財産だ」とよどみなく答えた。ではなぜ論文に社名が出ていないのか。「それは大阪市大の非常勤講師を兼任しているからです。専門家の立場から、どんな統計方法がいいかについてアドバイスしたのです」。そう説明する姿は誇らしげにさえ見えた。

 臨床試験をする医師を製薬社員が手足のようになってサポートすることは、程度の差こそあれ横行しているとささやかれるが、表に出ることはなかった。ある製薬会社の営業担当は言う。「手伝わせてもらえるのは研究者からの信頼が厚い証拠。社内での評価にもつながる。自社製品のよい試験結果が出れば薬の宣伝に使える」。ただ、製薬会社の関与が分かれば、結果が偏っていると疑われかねない。

 ノ社から府立医大チームへの「カネ」にも疑問があった。近年、外部から資金援助を受けた研究は後から疑惑を招かぬよう、論文にそのことを明記するルールになっている。府立医大の論文に資金提供を受けたとの記載はないのに、記者が情報公開請求によって入手した府立医大の過去5年分の資料によると、ノ社から松原教授の研究室へ年500万〜4500万円超、総額1億円を超える「奨学寄付金」が渡っていた。

 会社組織である以上、現場の独断で支出できるはずはなく、組織の意思があったはずだ。ノ社のある元営業社員は「尋常ではない金額だ。自分の経験では、一つの研究室に年100万円を出すのも難しかったのに」と驚きを隠さなかった。

 三谷社長は取材に対して奨学寄付金を支払ったと認めたが、「寄付は大学を通じてであり、試験を行う研究室に直接ではない」と、浄財であることを強調した。この説明はウソではない。だが、奨学寄付金は提供者が渡したい研究室を大学に対して指定する「ひも付き」にできる。

 統計解析という臨床試験の根幹に関わる部分に社員を参加させながら、そのことを明かさず、「医師からよい薬と証明された」と宣伝することが許されるのか。府立医大チームはノ社からの「寄付」を論文で隠してきた。肝心の科学性は学会誌から「データ解析に重大な問題がある」と否定されている。

 <B 毎日新聞は13年3月28日朝刊で「製薬社員も名連ね」「1億円の寄付金/製品のPRに利用」の見出しと共にこの問題を報じた。府立医大チームの論文撤回はこれを境に「薬とカネの疑惑」となった。>

 これ以降、慈恵医大、滋賀医大、千葉大と次々に調査に乗り出すことを表明していく。追い詰められたノ社は5月22日「社員が加わっていたことが臨床試験に疑念を生じさせた。不適切だった」と非があることを初めて認めた。だが記者会見はせず、調査結果の要旨を自社のホームページに掲載しただけだった。

 その2日後。日本医学会が異例の記者会見を開く。「企業が関与したのに、それが隠されていたとしたら、医学研究倫理だけでなく、社会倫理からおかしい。許し難い」。強烈な批判だった。日本医学会は約120の国内の医学系学会を束ねる存在だ。さらに5日後、日本医師会は「疑惑が一般紙等で報道されている。医療への信頼を失墜しかねない重要な問題だ」と談話を発表。各大学、学会に自浄作用を示すよう求めた。

 ノ社はそれでも「大学の了解がなければ教えられない」と、5大学への寄付金の金額を示そうとしなかった。明らかになるのは8月。疑惑を受けて設置された厚生労働省の有識者検討委員会が強く報告を求めたからだった。総額は11億3290万円に上り、府立医大には試験開始からすべての論文が発表されるまでの03〜12年に、3億8170万円が渡っていた。ノ社は「寄付金が臨床試験に使われることを意図していた」と説明した。浄財ではなかった。

 また、後の大阪市大の調査で、「非常勤講師」の肩書を使っていた社員が在籍11年間に講義したのは、院生向けの1回だけだったことが判明する。社員は「各大学の研究者やノ社にとって都合がよかったと思う。自分も便利だと思った」と述べたという。

 

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 ■製薬会社と臨床試験

 国立大病院長会議は2013年9月、「データ解析は企業から独立して行う体制が必要」と提言した。今年3月には日本学術会議の分科会が、大規模臨床試験の実施には、業界からの寄付金をプールし、第三者組織が公募で選んだ医師に配分することを政府などに提言。同4月、日本製薬工業協会が、▽臨床試験の中立性が疑われるような支援を社員がしない▽自社の薬を対象とした臨床試験への奨学寄付金の提供を禁止する−−と加盟社に通知した。毎日新聞が集計した製薬72社の奨学寄付金(12年度)は、346億円。臨床試験は国内で年5000件近く行われている。

 

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 ◇学内調査の限界あらわ

 <C 「大変な迷惑、心配をかけたことをおわび申し上げます」「明らかなデータ操作があったが、だれがしたのかは特定できなかった」。13年7月11日、京都府立医大の吉川敏一学長らは記者会見を開き、深々と頭を下げた。不信の目が注がれてきた論文に不正があると、初めて大学が認めた瞬間だった。しかし会場を埋めた記者は納得できない。「もっと詳しく調べられないのか」「大学は何をしていたのか」。質問は2時間続いた。>

 この発表までの過程で重要な役割を果たした文書がある。日付は13年2月15日。「報告書を拝見しますと、元データに踏み込んで調査がなされたのか不明です」。日本循環器学会の永井良三代表理事(当時、自治医大学長)と下川宏明編集委員長(東北大教授)の連名で、府立医大の吉川学長に宛てたものだ。文書は続く。「本件の調査権は貴学にありますので、詳細かつ公正な調査を実施していただきたい」

 学会は12年末に府立医大の松原教授らの論文を撤回すると、大学側に調査を求めていた。すると大学は13年1月31日、「『故意の捏造(ねつぞう)』とは認められなかった」と報告してきた。先の文書はこれに対する学会側の返答だった。学会は、データの誤りの数や程度のひどさから「医学論文として成り立たない」と判断しており、こんな報告を受け入れるわけにはいかなかった。「ミスの割には結論がバルサルタン優位に偏り過ぎ、データ解析に社員の関与の可能性が指摘されていた」(学会幹部)

 内幕を府立医大関係者が補足する。「内部調査はとても公平性があるものとは言えず、『単純ミス』という当事者の主張をうのみにしただけ。循環器学会が怒るのも当然で、大ごとにしたくないための対応と疑われても仕方がなかった」。大学が内部調査を命じた3教授のうち2人は松原教授と共同研究をした間柄だった。

 「外圧」で本格調査を余儀なくされた府立医大の迷走は続く。当初、調査の責任者に任命されたのは、ノ社が府立医大に開設する寄付講座の教授だった。しかし、ノ社が5月末に臨床試験に社員が関与していたと認め「会社ぐるみ」との批判が高まると、この教授を含む3人がノ社との金銭的なつながりを理由に調査メンバーから降りることになった。

 7月30日には慈恵医大が「データ操作があった」と記者会見で発表し、騒ぎは拡大する。ただ、操作した人物にたどり着けない。文部科学省は研究者に不正の疑いが生じた場合は、所属組織に公正な調査をするよう求めているが、任意調査の限界は明らかだった。

 田村憲久・厚労相は疑惑の真相解明を大臣直轄の検討委員会に託した。委員には元検事もいたが、8月に発足してすぐ壁に突き当たる。大学同様、任意調査の限界だ。「データ操作した」と認める者はおらず、委員から「犯人捜しは無理だ」との声が相次いだ。結局、議論の多くは再発防止策の検討に割かれた。委員で薬害エイズ被害者の花井十伍さんは「調査に強制力がなく、無力感を感じた」と吐露する。

 問題となった5大学のうち、府立医大、慈恵医大、滋賀医大、千葉大の4大学がデータ操作の可能性を認めることになるが、「誰が何の意図で操作したのか」という真相は見えなかった。千葉大に至っては、内部調査だけでデータ操作を否定する中間報告を13年末に公表したが、第三者機関の検証を経て4カ月後に結論を覆す失態を演じた。千葉大幹部は「初めから第三者機関に依頼すればよかった」と述べ、頭を下げた。

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 ■研究不正への対応

 文部科学省の作業部会は2013年9月、「研究公正局」など調査権限を持つ公的な第三者機関の設置に向けた検討が必要だと国に求めた。日本学術会議も、研究機関の不正対応に助言や勧告できる第三者機関を科学界の中に作る必要性を指摘している。文科省は公的研究費の不正使用に関する指針を改定し、今年度から運用を始めている。ケースによっては不正が発覚した研究機関の研究費を削減するなど、組織の管理責任を明確化した。

 

医薬スキャンダル:バルサルタン・ショック ツケ、国民医療費に ゆがんだ「薬とカネ」(その2止)

毎日新聞 2014年06月02日 東京朝刊

 ◇改ざんデータ、販促利用

 ノ社は5大学の論文を計495種類の宣伝資材に使って売り上げを伸ばし、バルサルタンは累計1兆円を超すノ社の基幹製品となった。論文は学会の診療ガイドラインにも引用され、医師の処方に影響を与えた。国民はこれを保険料の形で間接的に負担してきた。

 「データ操作された論文に基づく広告は結果的に誇大広告に該当する恐れがある」。厚労省の検討委は2013年9月末にまとめた中間報告でこう指摘した。

 <D これを受け、厚生労働省は今年1月9日に薬事法違反容疑でノ社を東京地検に刑事告発する。>

 臨床試験と広告とは密接に連動していた。

 05年11月、米国南部ダラスにある高級ホテルで、バルサルタンの臨床試験の会合が開かれた。ある関係者は「マーケティング担当のノバルティスファーマ社員の姿もあった」と証言する。慈恵医大の試験の途中経過が報告され、会合が終わるとノ社の広告記事に載せる座談会が行われたという。なぜ米国なのか。この関係者が説明する。「米心臓協会の学会開催に合わせた。先生(医師)方が一斉に集う学会の場を利用して広告向けの座談会を開くのは慣習のようなものだ」

 「バルサルタンは他の降圧剤と比べ、脳卒中を発症した人が4割少なかった」という慈恵医大の成果が、外部に初めて公表されるのは06年9月。スペインの国際学会の場でだった。しかし、医療専門誌「日経メディカル」誌上では、この学会の約2カ月前から成果を「予告」するノ社の広告が連続して掲載されていた。

 論文となって発表されるのはさらに遅く、07年4月の英医学誌ランセット誌上だ。慈恵医大によると、この論文に使われた図表類を作成したのは、統計解析を担った社員だという。

 ランセットは世界で最も権威ある医学誌の一つだ。当時ノ社に勤めていた男性は「降圧剤を巡る業界の競争は激しい。一流誌ランセットの論文があったから他社をリードできた」と言う。

 だがそう単純ではない。バルサルタンの広告代理業務を担ったのは、ランセットを発行する出版社の日本支社だった。ここには隠れた利権が存在していた。

 論文の著作権は出版社にある。このためノ社に限らず、製薬会社は自社の薬に有利な臨床試験の論文が出ると、医師に配るため論文の別刷りを大量に発注する。製薬会社がスポンサーになった臨床試験の論文は出版社にとって「金づる」というわけだ。

 ノ社はバルサルタン論文の別刷りの購入部数を明かさないが、英国では1本の医学論文の別刷りが出版社に2億円以上の収入をもたらした事例も報告されている。製薬72社の公表資料を毎日新聞が集計したところ、論文の別刷りなど医師に渡す「医学・薬学の関連文献」に、12年度だけで200億円以上が製薬会社から支出されていた。

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 ■医薬品広告の規制

 バルサルタン疑惑の厚生労働省の有識者検討委員会は今年3月末「欧米の事例も参考にしつつ、広告の適正化策を検討すべきだ」と指摘した。これを受けて厚労省は、医師の処方が必要ない一般用も対象に、医薬品広告の規制見直しに向けた研究班を作り、検討に着手している。一部学会では、幹部に対して特定の製品の宣伝につながる講演会などの自粛を求める動きも出ている。

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 ◇ノバルティス社、大きな代償−−日本社会の怒り買い

 今年4月2日。ノ社スイス本社のデビッド・エプスタイン社長は、東京大医科学研究所の一室で上昌広特任教授と向き合っていた。医師でもある上氏はメディアを通じて一連の疑惑を批判し続けている。面会を希望したのはノ社側だった。「データ操作された論文で得た不当な利益をどう日本国民に返すのか。(決めたら)社会に伝えるべきだ」。上氏の提案に、エプスタイン社長は「できるものならぜひやりたい」と応じたという。

 上氏は「ウミを出し切らなければならない、と伝えた。相当困っている印象だった」。

 ノ社は昨年来、日本社会の怒りを過小評価し、自ら傷口を広げてきたように見える。13年6月3日付で医療機関などに向け配った文書の宛先は「お得意先様各位」。「日本の臨床研究の信用性を揺るがしかねない」と謝罪しながらも、有効性や安全性には問題がないことを強調する内容だった。都内のある医師は「当事者意識が感じられない」とあきれた。医療現場からの不信は薬の処方中止となって表れた。

 患者への「おわび」を表明したのは7月24日。疑惑の表面化から約4カ月がたっていた。ノ社の電話相談窓口には、1週間で7万2000件以上の電話が殺到。以降も毎月100件を超す問い合わせが続いているという。

 13年度のバルサルタンの売り上げは前年比16・8%減の約881億円(医療コンサルタントIMS調べ)。期間ごとの前年比は▽13年4〜6月5%減▽7〜9月15・7%減▽10〜12月22%減▽14年1〜3月25・1%減−−と減収幅は拡大してきた。

 さらに今年1月、「臨床試験に社員が関与してはならない」との新たな社内ルールを、白血病治療薬の臨床試験を巡って社員が無視していたことが発覚し、再び謝罪に追い込まれた。

 <E 世界の製薬業界でトップを走るノバルティス。だが日本での信用は地に落ちている。上特任教授との面会の翌日、エプスタイン社長は、日本法人幹部3人の更迭を発表した。新役員に日本人の名前は無い。エプスタイン社長は「日本人社員は医師を優先しがち。海外では患者を優先する傾向がある。日本法人のカルチャーを変えなければいけない」と述べた。>

 バルサルタン臨床試験疑惑は、国民の目の届かぬところで「薬とカネ」のゆがんだ構造が作られ、国民の医療費にはね返っていることを白日の下にさらし、対策の歯車を初めて大きく回した。今、医療・製薬業界では「第二、第三のノバルティスはどこか」とうわさされる。既にいくつかの薬の研究を巡って問題が表面化し、会社や研究機関が調査を始めている。

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