gacco放送部(仮)の青木です。gacco講座コンテンツの制作を担当しています。
去る、3月6日に“保護者&教育関係者向けサイト”「リセマム」にて、本郷和人先生のインタビューが紹介されました。
東大の本郷和人教授に聞く「gacco」と反転授業、4月に開講する講座の魅力とは
このインタビュー現場に私も立ち合わせていただいたのですが、リセマムさんが、主に高校生の保護者を意識されたインタビュー項目でしたので、40代男の視点で、東大本郷キャンパスにあるカフェで追加インタビューさせていただきました。
その抄録です。
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--今日はインタビューのご対応ありがとうございました。
先日、gaccoのブログにも記事書いちゃったんですけど、なのでもう言っちゃいますけども、撮影当日まで、それほど興味がなかったんですよ。日本史に。
日本史は自分の中では「ステイ領域」というか、これ以上、知識を深めなくてもいいかなと思っていたんです。
高校の時に選択した受験科目が世界史だったからか、日本史の基本知識も薄くて、大河ドラマも途中リタイヤばかりで。。
それが撮影が始まったら、「次のコマ早くやってよ先生!!」という状態になった。
それからは、「日本史は自分に向いていないかな」、と思っていたのが、「大好きに」は言い過ぎですが、「機会があればアンテナ張ってみよう」、と思えるようになりました。
(本郷先生)
それはよかった! そういうきっかけになったのは嬉しいですね。そういうのがいいね。うん。
いや、そういう人多いと思いますよ、実際。
--てっきり怒られると思いました。本当にすみません。。
私の中で、そういうパラダイムシフトというか、気付きがあったもので、これは今まで興味を持っていなかった人、潜在的に興味を持つであろう人たちに、どうしたら自分ごとと感じてもらうかを考え、伝えることが私の使命であり、ある意味懺悔だと思ったわけです(笑)
そういったわけで先生にご協力をいただきたいのですが、、、今回の講座が、タイトルが、仮に「MOOC講座」ではなく「書籍」だとしたら、「帯(おび)」はどんな感じなんでしょうか?。 まずは、書店で手に取ってもらうために、帯を付けるとすれば。
(本郷先生)
うーん、
『中世史は面白い』!
『スリルと興奮』!
・・・ちょっと大げさかな。
『歴史を体感する』!
とか。
実は、今回の内容を書籍にしたいとも思っているんです。
今年のミッションは、この成果をぶち込んだ書籍にしたい。
書籍には「決定版」と書くつもり(笑)
今回は時間が長くないので、「いいとこどり」「抜粋」という感じかな。
『粋(すい)』という言葉が当てはまる感じがします。
本当にいいところ、面白いところを集めました。
『中世史・一番絞り』!!!
そんな感じですかね。
うん、これだ! そんな感じ。
--私の話で恐縮ですが、子どもが生まれて、40歳を過ぎて、親を亡くして、「人生」というものがつながった気がします。そうすると人生の積み重ね、連続が「歴史」というもんなんだなぁ、とこの数年で腹落ちした気がしています。
そういう時期で、本郷先生とお会いできて、講座を受講(実際は収録立会い)させていただいて、本当によかったなと思っています。
60歳・70歳になると、今よりももっと、歴史と自分を重ねるときが来るんだろうと思います。
(本郷先生)
そ!!
『30代のあなたも歴史が好きになる歳が来る!』(先ほどの帯の話の続き)
歴史の顧客は60・70代なんです。講演とかやると高齢者がほとんど。
今の40代・50代の人が、この先、歴史に興味を持ってもらえるかどうかが(日本史業界の)勝負なんです。
『歴史はジイさん・バアさんだけのものではない』!(帯の話の続き)
まぁ、そんな感じとか。
--現代に生きる我々は、中世の人の営みから何が学べますか?
(本郷先生)
中世の人も、現代に生きる我々と同じ日本人である。空間座標は一緒。でも時間軸でその時代に生まれると、エライことになってしまう。現代をある意味客観視できる。
生活の中って、ついつい愚痴が多くなるじゃないですか。「給料が安い」とか、「働くの辛い」とか。
昔はろくに飯も食えないし、劣悪な状況があったわけです。そういうことを知ると、今の自分の置かれている環境が、「自由と平等」がいかにありがたいかを感じるわけです。
歴史に触れると、今の自分を客観的に見られる。
今の時代は、僕なんかでも、とりあえず奥さんもらえる。僕がその時代に生きていたら、一夫多妻で強い人が何人もの女性をせしめて、僕みたいな人にはまわってこないワケです。
自分の立ち位置、座標軸を知る。
時代の中で、今の僕らはどこに立っていて、僕らはどう直していけばいいか、がわかるんじゃないかな。
--今回は、さまざまな時代がある中で、なぜ中世をテーマにされたのですか?
(本郷先生)
NHKの大河ドラマでも、戦国時代と幕末が一番人気がありますよね。そこには、争い・戦いが背景にあって、その中で人間関係が生まれ、ロマンスが生まれ・・・ということがその理由だと思います。
緊迫した厳しい状況の中で、人間の命の輝き方が違って見えるのだと思います。私もそう感じます。
個人的にも平安時代のようにまったりしていたり、江戸時代のようにまったりしている時代よりも、動乱の世の中の方が好き。戦争を賛美するわけではないですけど、研究対象としても面白いと思う。
--中世で好きな人物はいらっしゃいますか?
(本郷先生)
そうですねぇ。楠木正成かなぁ。
(参考: Wikipedia先生 http://ja.wikipedia.org/wiki/楠木 正成 )
面白い戦い方をした人物です。
--MOOCのような取り組み、教育は、日本史の中に似たものってあったんでしょうか?
(本郷先生)
「反転授業」は、まさに「寺子屋」じゃないですかね。手作りの教育。現代版寺子屋。
『東大で寺子屋はじめました』!!(帯の話の続き)
そう、そんな感じ。寺子屋のミソは、誰でも来られる。
これまでは、東大の授業を受けるには、入試を突破しないとダメだった。
ところが、今回はやりたい人が来ればいい。寺子屋感覚。
--開講前に準備しておくことはありますか?
(本郷先生)
別に何もいらないですけどね(笑) 教科書読み直してでおく必要もないですし。
好奇心を磨いておいてください。
それで十分だと思います。
--参考図書はありますか?
(本郷先生)
うーん、特にないですが。。しいてあげるとしたら、
「まんが『日本の歴史』」ぐらいかなぁ。
まあ、実際は「まんが『日本の歴史』」って二十巻とかあるから、全部読むのは無理だと思います。
--気が早いですが、続編はあるのでしょうか?
(本郷先生)今回の講座を見た受講者のみなさんが「お前やってもいいよ」と言ってくれて、gacco関係者のみなさんがOKでしたら、僕はやりたいですけど。
続編のことよりも、とにかく今は、どうしたら(クラスや反転授業を)楽しんでもらえるか、そればかり考えています。
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というわけで、本郷先生、私の失言を暖かく受け止めていただいて、さらに一緒にいろいろと考えてくださいました。
(これが中世だったら、私はホトトギスのように斬られてしまったことでしょう。現代に生きていることに感謝。)
本郷先生のユーモアやお人柄などを感じていただければと思いまして、インタビュー録音から起こしたテキストをなるべくそのままで掲載させていただきました。いつも真顔で面白いことをトツトツとおっしゃるので、写真に笑顔が撮れていませんが、とても楽しいインタビューでした。
いよいよ4月14日に開講する、本郷和人先生による「日本中世の自由と平等」で、「ステイ領域からの開放」をしていただければと思います。
最後に、いつも初めての先生とお会いする時には、ネット検索などでご活動などをそれなりに下調べしてからお会いするのですが、その際に見つけたエッセイをご紹介させていただきます。 この先生にお会いしたいと思ったエッセイでした。
プレジデントファミリー(2012年5月号) 巻頭エッセイ 「東大へ行ったのは母のため」
「自己の、来し方と行く末に想いをはせながら、悠久の歴史の中での今を考えてみる」という、大人になった今だからこそのロマンチックな体験が本郷先生の講座にはありますよ。
■4月14日開講迫る! 本郷和人先生の講座はこちら。
https://lms.gacco.org/courses/gacco/ga001/2014_04/about
■「ステイ領域からの開放」の扉は、まずは1分でできる会員登録から開きます…
http://gacco.org/list.html