G-HORIKAWAの想い

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建設業手間請け従事者及び芸能関係者に関する労働基準法の『労働者』の判断基準について~芸能編~

2007年11月06日 | 仕事
第3 芸能関係者について

I はじめに

芸能関係者については、多様な職種、契約形態が存在するが、この判断基準においては、俳優及び技術スタッフ(撮影、照明、録音等)について、映画やテレビ番組の製作会社との関係において労働者に該当するか否かの基準を示したものである。したがって、俳優がいわゆるプロダクション等に所属し、それとの間に労働契約関係があると考えられる場合、あるいは、スタッフが、製作会社から業務を請け負う会社に雇用されていると考えられる場合も存するが、そのようなケースはこの判断基準では念頭に置いていない。
 
なお、映画やテレビ番組の製作に当たっては、―般的には、通常製作会社に雇用されるプロデューサーが作品製作のために必要な全体の予算やスケジュールの管理を行うこととされている。また、プロデューサーの管理の範囲内において、監督が俳優に対し、あるいは、監督ないし撮影、照明等のチーフのスタッフがセカンド以下のスタッフ(助手)に対して撮影上の指示を行うこととされている。このような場合にも、製作会社は、監督やチーフのスタッフを通じて俳優やセカンド以下のスタッフに対して総括的な指示を行っているものと考えられる。したがって、製作会社が俳優やスタッフに対して直接指示を行うことがないからといって、当該俳優やスタッフが製作会社との関係で労働者性を直ちに否定されることにはならない。

Ⅱ 判断基準

1 使用従属性に関する判断基準

(1)指揮監督下の労働
 
イ 仕事の依頼、業務に従事すべき旨の指示等に対する諾否の自由の有無
 
例えば、特定の日時、場所を指定したロケ撮影参加の依頼のような、「使用者」の具体的な仕事の依頼、業務に従事すべき旨の指示等に対して諾否の自由を有していることは、指揮監督関係の存在を否定する重要な要素となる。
 
他方、このような諾否の自由がないことは、一応、指揮監督関係を肯定する―要素となる。ただし、当事者間の契約によっては、一定の包括的な仕事の依頼を受諾した以上、当該包括的な仕事の内容をなす個々具体的な仕事の依頼については拒否する自由が当然制限される場合がある。また、専属下請のように事実上、仕事の依頼を拒否することができないという場合もある。このような諾否の自由の制約は直ちに指揮監督関係を肯定する要素とはならず、契約内容や仕事の依頼を拒否する自由が制限される程度等を勘案する必要がある。
 
ロ 集務遂行上の指揮監督の有無
 
(イ)業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無
 
俳優やスタッフが実際に演技・作業を行うに当たり、演技・作業の細部に至るまで指示がある場合には、指揮監督関係の存在を肯定する重要な要素となる。
 
他方、俳優やスタッフなど、芸術的・創造的な業務に従事する者については、業務の性質上、その遂行方法についてある程度本人の裁量に委ねざるを得ないことがら、必ずしも演技・作業の細部に至るまでの指示を行わず、大まかな指示にとどまる場合があるが、このことは直ちに指揮監督関係を否定する要素となるものではない。
 
(ロ)その他
 
「使用者」の命令、依頼等により通常予定されている業務以外の業務に従事することを拒否できない場合には、「使用者」の一般的な指揮監督を受けているとの判断を補強する重要な要素となる。例えば、スタッフが本来自分の担当するパートのほか、監督の命令、依頼等により他のパートの業務に従事することを拒否できない場合には、一般的な指揮監督を受けているとの判断を補強する重要な要素となる。

 
ハ 拘束性の有無
 
勤務場所がスタジオ、ロケーション現場に指定されていることは、業務の性格上当然であるので、このことは直ちに指揮監督関係を肯定する要素とはならない。
 
映画やテレビ番組の撮影に当たっては、勤務時間が指定・管理されていることが通常である。この場合であっても、例えば場面設定との関係上、特定の時間にしか撮影ができないなどの事業の特殊性によるものである場合には、かかる指定は指揮監督関係を肯定する要素とはいえない。他方、「使用者」が業務の遂行を指揮命令する必要によるものであれば、指揮監督関係を肯定する一要素と考えられる。例えば、一日の撮影の中で、監督等が行う具体的な撮影時間、休憩、移動時間等の決定や指示に従わなければならないこと、監督の指示によって一旦決まっていた撮影の時間帯が変動した場合に、これに応じなければならないことは、指揮監督関係を肯定する要素の一つとなる。

ニ 代替性の有無
 
「使用者」の了解を得ずに自らの判断によって他の者に労務を提供させ、あるいは、補助者を使うことが認められている等労務提供に代替性が認められている場合には、指揮監督関係を否定する要素の一つとなる。

(2)報酬の労務対償性に関する判断基準
 
映画やテレビ番組の撮影についての労務提供に関する契約においては、撮影に要する予定日数を考慮に入れながら作品―本あたりいくらと報酬が決められているのが―般的であるが、拘束時間、日数が当初の予定よりも延びた場合に、報酬がそれに応じて増える場合には、使用従属性を補強する要素となる。

2 労働者性の判断を補強する要素

(1)事業者性の有無
 
イ 機械、器具、衣裳等の負担関係
    
例えば、俳優が自ら所有する衣裳を用いて演技を行う場合、それが安価な場合には問題とならないが、著しく高価な場合には、事業者としての性格が強く、労働者性を弱める要素となる。
 
ロ 報酬の額
 
報酬の額が当該企業において同様の業務に従事している正規従業員に比して著しく高額である場合には、一般的には、事業者に対する代金の支払と認められ、労働者性を弱める要素となるが、俳優やスタッフの場合には、比較すべき正規従業員がほとんどいないので、労働者性の判断の要素とはなりにくい。ただし、同種の業務に従事する他の者と比べて報酬の額が著しく高額である場合、例えば、ノーランクといわれるような著しく報酬の高い俳優の場合には、事業者としての性格が強く、労働者性を弱める要素となる。
 
ハ その他
 
俳優やスタッフが業務を行うについて第三者に損害を与えた場合に、当該俳優やスタッフが専ら責任を負うべきときは、事業者性を補強する要素となる。

(2)専属性の程度
 
特定の企業に対する専属性の有無は、直接に使用従属性の有無を左右するものではなく、特に専属性がないことをもって労働者性を弱めることとはならないが、労働者性の有無に関する判断を補強する要素の一つと考えられる。 

具体的には、他社の業務に従事することが契約上制約され、または、時間的余裕がない等事実上困難である場合には、専属性の程度が高く、経済的に当該企業に従属していると考えられ、労働者性を補強する要素の一つと考えられる。

(3)その他
 
報酬について給与所得としての源泉徴収を行っていることは、労働者性を補強する要素の一つとなる。



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