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2021年7月


図書館で借りてきた本が
どれも凄まじく面白かった。

川上弘美 「森へ行きましょう」
長嶋有 「問いのない答え」
梨木香歩 「海うそ」


私はあまり本を読む方では無く
年に何回か
自分の中で読書ブームが訪れて
徒然に読むだけなので
この有名な三人作家の本もほとんど読んだことが無かった。

長嶋有は「猛スピードで母は」を
刊行当時友達に勧められて読んだけれど
二十年くらい前の話で全くおぼえてない。



川上弘美の「森へ行きましょう」は

「るつ」という名の主人公が
分岐点で違う人生を辿ったらどうなるのか、
という話で
基本的に同じ家族同じ友達と出会いつつ
ちょっとずつ違う状況におかれながら
生まれる前から60歳になるまで時系列に読みすすめる。

女性の多角的一代記で
とても共感する場面も多く
今の自分に一番心情的に近い物語だった。

文系のるつと
理系のるつ、理系の方が好きだった。
でもどんどん文系の方が
自由な自分の生き方を獲得していく。



長嶋有の「問いのない答え」は

Twitterで繋がった人々を
段落や記号分けなどなしに
突然文章をつなぎながら
一人称視点が変わっていく物語だった。

時は東北の震災の直後。
全国各地にちらばる人々の
他愛のない日常が
単発的に断続的に現れては消えて
まるでTwitterを読むようだった。

平易な文章なのに
急になんの前触れもなく
視点がずれていくので
読むのに難渋したけれど
それがまた面白かった。実験的で
でも軽やか。

そして震災直後の空気を
リアルに思い出した。
たった十年前なのに
細かな描写に(スマートフォンやらADSLやら)
いいようもない隔世の感があり
少し驚く。

震災の時と違った危機にまた今
瀕しているな。



梨木香歩の「海うそ」は

昭和初期に
九州南西部にある架空の島「遅島」
をフィールドワークで訪れた青年の話。
冒頭の文章の美しさにまず痺れてしまった。

すこし昔の文学を読むような難しい言い回しが
時折挟まれているのも良かった。

きちんとした作り込まれた「架空」の物語。
小説を読む醍醐味や面白さを存分に味わわせてくれる。

真夏の山道を歩く描写が多く続き、
今読むこの季節にぴったりだった。


三人とも全然違う。
そこがまたいい。
もっといろんな作家に出会いたい。

小説というのは
文字を追うだけでこれだけ
感動したり感じ入ったりすることのできる
すごいものだな。と改めて思う。
(そういえば「長編小説」って長いのか小さいのか
わからない不思議な言葉だな。)

たった一人のひとが書き上げた世界に
入り込むことができる。


自分の感じた読書感想がリアルに言語化できないな。
難しい。

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今年もツール・ド・フランスを始めから終わりまで
欠かさず見た。

21日間、毎日自転車で違うコースを走り、
毎日優勝者が決まり、21日間の蓄積で
タイムの一番はやい選手が総合優勝するというゲーム。


今年は初日に世紀の大落車(転倒)があり、
その後も
有力な優勝候補が早々に続々と落車によって
総合優勝争いから脱落してしまったのが切なかった。

去年、優勝に王手をかけたのに、結局
2位に転落してしまったログリッチを
今年こそ!と、応援していたのに
落車でリタイアしてしまった。

そうなると、
結局去年に引き続き、今年も優勝したマイヨ・ジョーヌ
のポガチャルがとにかく圧倒的に強かった。

ログリッチのリタイアで
急に同じチーム「ユンボヴィスマ」内でエースに昇格した
ヴィンゲゴーが2位に食い込んだ。

こちらも優勝候補のゲランド・トーマスが早々に
やっぱり落車で優勝候補外になり(こちらは最終日まで走っていた)
こちらの同じチームの「イネオス」の
カラパスが3位に入ったのもすごかった。

この3人が山頂フィニッシュのステージで
最後もつれて走り、
カラパスが疲れたと見せかけて
スパートをかけて、ふたりを出し抜いたのに、
結局また、二人に追い抜かれてしまうシーンが
なんともジーンと来てしまった。

カラパスは後から絶対陰口をいわれるであろう
捨て身の作戦に出たというのが
なんとも胸にくる。
結局抜かれちゃったけど。

そして活躍の場からずっと遠ざかっていたカベンディッシュの活躍も
本人の愛らしい行動とチーム「ドゥクーニンク」の素晴らしい統率も良かった。
ワウトもすごかったな〜。

毎回ツール・ド・フランスはやっぱり面白い。
来年のツールがいまからとっても楽しみ。

その前の来月行われるブエルタ・ア・エスパーニャは
一昨年旅行で訪れたコバドンガが出てくるので
今からこちらも楽しみ。

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オリンピックが始まった

コロナが蔓延していなければ。
とどうしても思ってしまう。
その上起こった数々のゴタゴタと
政策の後手後手。
どんどん辛く悲しい気持ちにさせられてしまっているのが
とても残念。

選手第一と言いながら
10月ではなく酷暑の7月に開催されるという時点で
無力感に襲われていたのだけれど、
開会式であんなに遅くまで感染のリスクを伴う選手たちを
放置しているのも、なんだか虚しくなってしまった。

しかし、
上であげているように
ツール・ド・フランスを楽しみに見るように
なって3年。にわかファンながら
ツール・ド・フランスに出ている綺羅星の如き
スター選手たちが
こぞって日本に来たのは
オリンピックの虚しさと乖離して
ワクワクドキドキしてしまった。

地上波の放送は無かったけれど
インターネット配信で
ロードレースの中継を見た。

インターネット配信には日本語解説が無かった。
でも、
普段ツール・ド・フランスなどを放映している
有料放送の「jスポーツ」によく登場する
サイクルフォトグラファーの辻啓さんという方が
インスタグラムのインスタライブで
同時解説をして下さったので
とても楽しくみることができた。

大スターのポガチャルがログリッチがカラパスが
あのクフィアトコースキーがトム・デュムランが
ワウトがみんな日本にいる。

その上、
私の実家は八王子で、祖父の家は河口湖にあったので
コースに設定された
府中、稲城、南大沢、相原、道志みち、山中湖。
どこもとても馴染みのある場所ばかり。

南大沢の駅前をツール・ド・フランスの大スターたちが
通り抜けるのを配信でみるだけで
とても感慨深かった。

パレード走行した
府中のあたりは、自動車教習所に通っていた頃走った道ばかり。

中継クルーは本場ツール・ド・フランスからきた
ヨーロッパの方々なので
ツール・ド・フランスでの撮影メソッドによって映された
空撮の多磨霊園、大國魂神社、府中競馬場、道志みち、
そして須走あたりの富士山麓。
どれも素敵だった。

テレビでの放映は
翌日の朝四時半からのBS1のダイジェストのみ。
そこではその素晴らしい景色や空撮はカットされていたので
さみしかった。

できれば最初から最後まで録画して一生大事に見たい映像ばかりなので
とても残念。

そしてそして優勝は
あの疲れていたと見せかけてスパートをかけて
ツール・ド・フランスでは抜かされてしまった
カラパス。
カラパスのあの泥臭いところ
人間臭いところがとても好きなので
嬉しかった。

いつもオリンピックでは、その場の
日本人選手を応援するだけで
他の国の選手の背景なんて全然知らないんだけど、
今回に限っては、

エクアドルのカラパスと
ポーランドのクフィアトコースキーと
イギリスのゲランド・トーマスは
普段は同じチーム所属だけど
今日は敵同士だなとか、
オランダのトム・デュムランは
おトイレを我慢できなかったお茶目さで有名だけど
ちょっと心が疲れちゃっておやすみしてたのに
復帰してよかったなとか、
ベルギーのレムコ・エヴェネプールは
あんな大事故からカムバックして
途中でアタックかけて格好よかったなとか
走って居る選手を隅から隅まで
わりとよく知っているので
見ていてとても楽しかった。

個人タイムトライアルでは
去年も今年ツール・ド・フランスで悔しい思いをした
ログリッチが優勝したし。

日本人選手を応援するだけが
オリンピックじゃないと思うのだけれど・・
(出場した新城選手と増田選手は
もちろん応援してみていました。)






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安西水丸先生の展覧会に世田谷文学館にでかけた。
水丸先生に習っていたのは3年ほど。その後も
別荘にお伺いしたり個展に伺ったり、
飲み会でお話を聞いたり。
先生から受けた影響は測りしれず。
イラストレーターとしての指標のすべてを
先生から貰ったといっても過言ではない。
そういう生徒がいっぱいいると思う。

先生の洋服がさり気なく展覧会の隅に飾ってあったのだけれど、
見た瞬間そこに先生が居るかのような錯覚に陥った。
洋服なのだけれど、先生でしかなかった。
リアルすぎてびっくりした。
ワタリウム美術館の前の横断歩道で偶然先生と出会ったあの瞬間が
鳥肌が立つかのようにぶあっとフラッシュバックした。

なくなってもう7年も経つのか。ぜんぜんそんな気がしない。
まだまだリアルで肌で先生のことを思い出せる。
霞のように遠い存在だったのに
あんなに親しく話しかけて下さって
本当にありがたかったなあと
心の底から思う。

いつ表参道に行っても
水丸先生か和田誠さんをしょっちゅう
おみかけしていた。

おふたりとももういないのか。


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2021年6月



6月は前半はゆるゆるしていたのだけれど、
ありがたいことに後半になるにつれて加速度的に仕事の依頼がたくさん入った。
ありがたい。
毎月こうありたい。

仕事が忙しいことに反比例して
Twitterとインスタは殆ど見なくなってしまった。
インスタはわりと楽しく見ているのだけれど、
Twitterは見てるとどうも疲弊するので
自分には向いていないのかもしれない。
去年あたりは、
Twitterを見て世の中の情勢について行こうと
目論んでいたけれど、
無理なので
心の健康第一と思うようになった。

私は
SNSでは仕事の幅を増やせないようなので
他のことを模索するしかない。

ようやくここ何年かになって
自分の絵もええのではないか?と思えるようになってきた。
できれば
誰か作家さんとタッグを組んで長いシリーズを
手掛けたいという夢がある。


本は
ちょくちょく読んだ。
しかし
どうも私は「この人のファンです!」と言い切れるほどの
作家さんに巡り会えていない。
毎回新刊を楽しみにするような人に出会ってみたいなあ。


フジファブリックに関しては
完全にファンです。
6月は全国ツアーをまわって
最後にZepp東京で2daysがあった。
もちろん二日間とも行った。
すごく良かった。
ライブに行くと
これほどの快楽は他にはないのではないかと感じる。
特にフジのライブは多幸感がすごく
見たあとの胸のあたりがあつつとなる感じが
他とは違う。ファンです、と言い切れるものがあるのは
わりと幸福なことだなとライブのたびに思う。

zazen boysのライブにも行った。
フジとは全く違うけど
もう、ここのライブはなんというか
リズム感から何からすごすぎて
とても好き。ボーカルの向井さんももちろん素敵だけど、
ドラムもベースもギターも
なんだろうあの間合い。
一年に一度は見た。


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知っているレストランが2軒閉店した。

一つは家の近所のスペイン料理屋さん。(こちらは正確には移転)
最初から最後まで美味しかった。
スペイン旅行で知った「シドラ」という
酸っぱいりんごのお酒がとても良く合う。
フランスのシードルに比べると
お酢を飲んでいるようだけど
これに慣れると
スペイン料理を食べるときにはこればかり頼んでしまう
(その上とても安い)


もう一つは
結婚式のときに披露宴をあげたレストラン。
こちらはかなり高級なフレンチレストランなので、
結婚式の1年後くらいに行ったきりで
ずっとご無沙汰してしまった(今年で結婚10年目)
私達が披露宴の時には
シェフも変わってしまっていたので
足が遠のいていたのだけれど、

新しいシェフの料理もとても美味しかった。

四十年続いた老舗レストランの閉店なので
とても寂しい。
いつでもあると思って油断してしまった。

フレンチを食べるのは年に一度くらいの贅沢。
なかなか足を向けられてなかったのを
すみませんと思う。

コロナで軒並み店が閉店している。

高級レストランに毎回行くような人は話は別だけれど、
庶民はなかなか行くことができない。
ましてはコロナの最中では難しい。

これ以上馴染みのお店が閉店してほしくない。








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