【上達の極意 モノゴトは両面から観察せよ
~ 徒然草(吉田兼好)第百十一段 の巻】
第百十一段
「囲碁・双六好みて明かし暮らす人は、
四重・五逆にもまされる悪事とぞ思ふ」
と、ある聖の申しし事、耳に止まりて、
いみじく覚え侍べり。
「囲碁、双六(すごろく)を好み、
朝から晩まで遊びほうけている人は、
強姦、窃盗、殺人、詐欺といった犯罪や、
親殺し、恩人殺し、背任、聖職者の傷害といった反逆よりも
重い罪を犯している」
という、ある聖人の言葉が
今でも耳に残っていて、
なるほど的を射た指摘に思える。
◇
ゲームなどに入れ込むヤツは、ロクな者ではない
と、地獄に堕ちろ とばかりの全否定である。
いいところばかりみて悪弊を述べないのは
公平公正を欠く、とでも考えているのであろうか。
このあたりが達人の批判子・兼好法師の真骨頂。
両論併記による絶妙の中立的バランス感覚とでもいえようか。
練達の物書きの筆の冴えここにあり、である。
とりあえず、この項、ここまで