2015年7月17日。
そこは、世界中からの旅人が集まるオールドデリーのメインバザールから、十分に歩いて行ける距離であった。

インドにはありとあらゆる社会問題が存在している、と言ってもいいかもしれない。今回何度も訪問してきたスラムもそうだし、カースト制度や貧富の環境問題など、まさに世界の問題点が凝縮されている要素がこの国には在る。
そんなたくさんある問題点の1つに、女性の人権問題がある。
いわゆる「Women Trafficing」である。お金のない地方の女性が人身売買によって都市に売り渡され、性産業などに従事させられるという、極めて深刻な女性の人権問題である。
僕は先日、あるインドの人権活動家の方と会合を持つ機会があった。

危険を伴うので名前を明かすことはできないが、彼らの情熱は凄まじいものがあった。決して口調を荒げたりすることはないのだが、1つ1つの言葉の重みは並大抵のものではなかった。せっかくの食事を目の前にしても、僕は圧倒され続けていた。
彼らとの話の中で、デリーにも深刻なWomen Trafficing の場所があると聞き、僕は「ぜひこの目で見て学びたい」と申し出、そして今日、この場所にやってきた。
その場所の名は「GBロード」。僕の泊まっている安宿から、歩いて30分くらいで行ける場所にある。

周りのインド人に道を尋ねながら、僕はその場所へ向かった。数人の男性に聞いてみたのだが、GBロードを知らない人はいなかった。
目的の場所に近付くと、4人組のインド人の青年たちが話し掛けてきた。

「へい、オマエもセックスしに行くのかい?」
もちろん行為をすることは目的ではないのだが、する振りをしておかないと逆に怪しいだけなので、
「そうなんだ。知り合いのインド人からここの話を聞いてね。でもどこに行ったらいいのかよく分からないんだよ。」
と答えた。
すると彼らは、64番のお店がいいと口を揃えて教えてくれた。
64番・・・。よく見ると、ビルには番地のように数字が掲げられている。それの64番ということらしい。

メーラトでWomen Trafficing の通りに行った時は、窓から何人も女性が手を振ってお客を招いていた。しかしここでは、その様子が見受けられない。時間が早いからだろうか。
僕はとりあえず通り全般を見てみようと、お店がある反対側を歩きながら目を凝らしていた。
奇妙なことに、そとの通りはいたって普通のインドだった。リクシャーがけたたましく走り、チャーイ屋が大きな声でお客を呼んでいる。この場所で本当にそのようなセックスビジネスが行われているのかなど、パッと見では分からない。
通りを奥の方まで歩いていると、
「あっ。」
いた。窓から顔を出している女性たちだ。直接カメラを向けることはできないので、望遠でこっそりとそのシーンをカメラに収めた。

彼女たちはああしてお客さんを呼び込み、中に連れ込んで行為を行う。
僕は、中にまで入って取材をしようと決めていた。
もちろん絶対に行為には及ばないが、買う振りをして中に入り、やっぱり気に入らないから止めることにして外に出る、ということをしようと思った。
しかし・・・
さて、どうやって中に入ったものか。
入り口は薄暗く、そして非常に汚い。こんな劣悪な環境の中で性行為が行われているのだろうか。

そして僕は、意を決して話に聞いた64番に行くことに決めた。入り口には誰もいなかったが、周りのおっちゃんたちに聞くと、みんな「上に行けば大丈夫だよ」と教えてくれる。

僕は、薄暗い階段を登っていった。
すると・・・
そこには、たくさんの女性たちがまるで寮生活のように過ごしているのが見て取れた。
なんと言うか、異様な空間だった。
あまり若い女性はいない、どちらかというとおばちゃんばっかりだ。ソファーに座って僕と交渉してくる女性がいる傍らで、何人もの女性が床にそのまま寝ていた。いったい、ここはどんな世界なのだろうか。
僕は何が何だかサッパリ分からない振りをして、値段を聞いたり女性を選んだりしてみた。
すごく不思議だったのは、そこにはあまり殺伐とした雰囲気がなかったことである。誤解を招いてしまうかもしれないが、みんな共同生活を楽しんでいるかのような、そんな奇妙な空気が流れていた。
もう面倒臭くなったのだろう、僕になかなか話が通じないと分かると、さっさと追い出された。その時の権幕は厳しく、背中をバンと叩かれた。僕がそんなことをしている間にも、たくさんの男性たちが出入りをしていた。
「なんてことだ、こんな世界がすぐ近くにあったなんて・・・」
腹をくくった僕は、先ほど窓から手を振っていた女性のところに向かった。鉄格子がはめられたいくつものビル・・・。まるでそこは、巨大な刑務所のようであった。

いや、そこは刑務所よりもひどい。彼女たちはここに連れてこられたとき、激しい暴力を受け、精神的にもひどく追いやられてしまうという。そしてここから逃げ出す気力もなくなり、いつしか当然のようにここで生きていくようになるのだという。
手を振っていた女性が僕に合図を送ってきた。僕が手を振り返すと、満面の笑みでビルに入って来いと手招きをしてきた。
それに応えて僕がビルに入ると・・・そこからがすごかった。
なんの準備もなく、僕を個室に連れていったのだ。3畳ほどの広さだろうか、そこには粗末なベッドが置かれ、ぐしゃぐしゃになったシーツがあった。前のお客さんのすぐ後だったのだろうか、部屋は異様な熱気が漂い、ハッキリ言ってしまうと、精子のようなに臭いがそこにはあった。
何より驚いたのは、そのスピードである。僕がビルに入ったと同時に僕の手を掴み、個室に連れて行き、もう服を脱ぎ始めていた。
「ノーノーノー!ウェイトウェイト!」
僕はそう言うと、とりあえず値段を聞いた。するとなんて、その値段は・・・
わずか500ルピー。(約1000円)
僕はこのお店を出たあと、街中に立っている女性たち数人と話をしたのだが、最も安い人は200ルピーだった。なんということだ、たったの400円で身を売り、ここで生きているなんて・・・。

逆に恐怖を感じたのは、みんな恐ろしく男を誘うことに慣れているということである。甘えるような仕草に声、そしてドキッとするような身体の触り方など、本当によく心得ている。
仕事もなく、お金もない農村から誘拐されあるいはその身を売られてやってきた女性たち。このビルに閉じ込められ、日々男性の相手をする。この光景を、僕はどう心に残したらいいのか分からなかった。
きっと最初は恐怖に震えていたはずだ。しかし、そう易々と彼女たちが逃げられるはずがない。連れてこられてしまった以上、ここで生きるしかないのである。
あの笑顔、あの仕草・・・。何年もここでセックスビジネスに手を染める中で、彼女たちが身につけてきた技術なのだろう。
僕がガタガタと戸惑っていると、ここでも「もう出ていけ!」と追い出された。見てみると、お客のインド人男性は、店に入ったと同時にサッと支払いをし、そして個室に消えていく。消毒やその他の準備など何もない。こんな状態で性行為をしたら、病気が蔓延しないわけがない。
僕は他のお店も見てみようと、何度も薄暗い階段を上がっては追い出される、を繰り返していた。店によって女性のタイプは異なっていたが、システムや値段はほぼ同じだった。安くて300ルピー、平均すると500ルピー、一番高い女性でも1000ルピーだった。

あとで少し聞いたのだが、どうやら出身地別に入るビルが別れているとの話も聞いた。なるほど、確かに言われてみれば、同じような外見の女性たちがそれぞれ集まっていたように思われる。
通りを徘徊し、店に入っては出てくる僕。さすがに怪しかったのだろう、途中で警官に呼び止められて、少しだけ尋問されてしまった。これ以上ここをうろつくのはもう無理だ。
しかし、このようなビジネスが行われているその横に、普通に警官がいるというもの不思議な話だ。きっと警察との腐敗した関係もあるのだろう。ビルから一歩出れば、そこはどう見ても普通のインドである。

こんなに当たり前にWomen Trafficing の現場が存在していることに、逆にその問題の根深さを感じる。
2時間弱滞在したであろうか、僕はGBロードを後にした。
実は今日は、今回のインド旅の最終日である。最後の最後まで、僕は動き回っていた。
ここから僕は、いったい何を学び、何を糧としたらよいのであろうか。
左脳の知識としては、インドの人権問題については知っていた。人身売買や、今回は見ることがなかったが幼女売春などの問題が非常に大きなものであることも、知識としては知っていた。
今回こうしてその現場に足を運び、女性たちとも直接話し、その熱や臭いを感じ・・・。今僕は、これから何をすることが正しいのだろう。
あと15時間後には、もう日本に着いている予定である。インド最後の最後で、また僕は大きな「何か」を心に抱えてしまった。
僕らが人間である以上、性の問題がなくなることはない。性欲そのものは悪ではないし、種の保存のための当然の欲求である。
しかし、社会生活を営む人間として、僕らはこの「性」とどう付き合ったらよいのだろう。なにしろ、この問題が存在しない国や地域は1つとしてないのだから。
その現実をしっかりと受け止め、今日のこの日を無駄にすることなく、今回もまた、誓います。
「この世界が少しでも良いものになるように、この命を尽くしていきます。」
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そこは、世界中からの旅人が集まるオールドデリーのメインバザールから、十分に歩いて行ける距離であった。

インドにはありとあらゆる社会問題が存在している、と言ってもいいかもしれない。今回何度も訪問してきたスラムもそうだし、カースト制度や貧富の環境問題など、まさに世界の問題点が凝縮されている要素がこの国には在る。
そんなたくさんある問題点の1つに、女性の人権問題がある。
いわゆる「Women Trafficing」である。お金のない地方の女性が人身売買によって都市に売り渡され、性産業などに従事させられるという、極めて深刻な女性の人権問題である。
僕は先日、あるインドの人権活動家の方と会合を持つ機会があった。

危険を伴うので名前を明かすことはできないが、彼らの情熱は凄まじいものがあった。決して口調を荒げたりすることはないのだが、1つ1つの言葉の重みは並大抵のものではなかった。せっかくの食事を目の前にしても、僕は圧倒され続けていた。
彼らとの話の中で、デリーにも深刻なWomen Trafficing の場所があると聞き、僕は「ぜひこの目で見て学びたい」と申し出、そして今日、この場所にやってきた。
その場所の名は「GBロード」。僕の泊まっている安宿から、歩いて30分くらいで行ける場所にある。

周りのインド人に道を尋ねながら、僕はその場所へ向かった。数人の男性に聞いてみたのだが、GBロードを知らない人はいなかった。
目的の場所に近付くと、4人組のインド人の青年たちが話し掛けてきた。

「へい、オマエもセックスしに行くのかい?」
もちろん行為をすることは目的ではないのだが、する振りをしておかないと逆に怪しいだけなので、
「そうなんだ。知り合いのインド人からここの話を聞いてね。でもどこに行ったらいいのかよく分からないんだよ。」
と答えた。
すると彼らは、64番のお店がいいと口を揃えて教えてくれた。
64番・・・。よく見ると、ビルには番地のように数字が掲げられている。それの64番ということらしい。

メーラトでWomen Trafficing の通りに行った時は、窓から何人も女性が手を振ってお客を招いていた。しかしここでは、その様子が見受けられない。時間が早いからだろうか。
僕はとりあえず通り全般を見てみようと、お店がある反対側を歩きながら目を凝らしていた。
奇妙なことに、そとの通りはいたって普通のインドだった。リクシャーがけたたましく走り、チャーイ屋が大きな声でお客を呼んでいる。この場所で本当にそのようなセックスビジネスが行われているのかなど、パッと見では分からない。
通りを奥の方まで歩いていると、
「あっ。」
いた。窓から顔を出している女性たちだ。直接カメラを向けることはできないので、望遠でこっそりとそのシーンをカメラに収めた。

彼女たちはああしてお客さんを呼び込み、中に連れ込んで行為を行う。
僕は、中にまで入って取材をしようと決めていた。
もちろん絶対に行為には及ばないが、買う振りをして中に入り、やっぱり気に入らないから止めることにして外に出る、ということをしようと思った。
しかし・・・
さて、どうやって中に入ったものか。
入り口は薄暗く、そして非常に汚い。こんな劣悪な環境の中で性行為が行われているのだろうか。

そして僕は、意を決して話に聞いた64番に行くことに決めた。入り口には誰もいなかったが、周りのおっちゃんたちに聞くと、みんな「上に行けば大丈夫だよ」と教えてくれる。

僕は、薄暗い階段を登っていった。
すると・・・
そこには、たくさんの女性たちがまるで寮生活のように過ごしているのが見て取れた。
なんと言うか、異様な空間だった。
あまり若い女性はいない、どちらかというとおばちゃんばっかりだ。ソファーに座って僕と交渉してくる女性がいる傍らで、何人もの女性が床にそのまま寝ていた。いったい、ここはどんな世界なのだろうか。
僕は何が何だかサッパリ分からない振りをして、値段を聞いたり女性を選んだりしてみた。
すごく不思議だったのは、そこにはあまり殺伐とした雰囲気がなかったことである。誤解を招いてしまうかもしれないが、みんな共同生活を楽しんでいるかのような、そんな奇妙な空気が流れていた。
もう面倒臭くなったのだろう、僕になかなか話が通じないと分かると、さっさと追い出された。その時の権幕は厳しく、背中をバンと叩かれた。僕がそんなことをしている間にも、たくさんの男性たちが出入りをしていた。
「なんてことだ、こんな世界がすぐ近くにあったなんて・・・」
腹をくくった僕は、先ほど窓から手を振っていた女性のところに向かった。鉄格子がはめられたいくつものビル・・・。まるでそこは、巨大な刑務所のようであった。

いや、そこは刑務所よりもひどい。彼女たちはここに連れてこられたとき、激しい暴力を受け、精神的にもひどく追いやられてしまうという。そしてここから逃げ出す気力もなくなり、いつしか当然のようにここで生きていくようになるのだという。
手を振っていた女性が僕に合図を送ってきた。僕が手を振り返すと、満面の笑みでビルに入って来いと手招きをしてきた。
それに応えて僕がビルに入ると・・・そこからがすごかった。
なんの準備もなく、僕を個室に連れていったのだ。3畳ほどの広さだろうか、そこには粗末なベッドが置かれ、ぐしゃぐしゃになったシーツがあった。前のお客さんのすぐ後だったのだろうか、部屋は異様な熱気が漂い、ハッキリ言ってしまうと、精子のようなに臭いがそこにはあった。
何より驚いたのは、そのスピードである。僕がビルに入ったと同時に僕の手を掴み、個室に連れて行き、もう服を脱ぎ始めていた。
「ノーノーノー!ウェイトウェイト!」
僕はそう言うと、とりあえず値段を聞いた。するとなんて、その値段は・・・
わずか500ルピー。(約1000円)
僕はこのお店を出たあと、街中に立っている女性たち数人と話をしたのだが、最も安い人は200ルピーだった。なんということだ、たったの400円で身を売り、ここで生きているなんて・・・。

逆に恐怖を感じたのは、みんな恐ろしく男を誘うことに慣れているということである。甘えるような仕草に声、そしてドキッとするような身体の触り方など、本当によく心得ている。
仕事もなく、お金もない農村から誘拐されあるいはその身を売られてやってきた女性たち。このビルに閉じ込められ、日々男性の相手をする。この光景を、僕はどう心に残したらいいのか分からなかった。
きっと最初は恐怖に震えていたはずだ。しかし、そう易々と彼女たちが逃げられるはずがない。連れてこられてしまった以上、ここで生きるしかないのである。
あの笑顔、あの仕草・・・。何年もここでセックスビジネスに手を染める中で、彼女たちが身につけてきた技術なのだろう。
僕がガタガタと戸惑っていると、ここでも「もう出ていけ!」と追い出された。見てみると、お客のインド人男性は、店に入ったと同時にサッと支払いをし、そして個室に消えていく。消毒やその他の準備など何もない。こんな状態で性行為をしたら、病気が蔓延しないわけがない。
僕は他のお店も見てみようと、何度も薄暗い階段を上がっては追い出される、を繰り返していた。店によって女性のタイプは異なっていたが、システムや値段はほぼ同じだった。安くて300ルピー、平均すると500ルピー、一番高い女性でも1000ルピーだった。

あとで少し聞いたのだが、どうやら出身地別に入るビルが別れているとの話も聞いた。なるほど、確かに言われてみれば、同じような外見の女性たちがそれぞれ集まっていたように思われる。
通りを徘徊し、店に入っては出てくる僕。さすがに怪しかったのだろう、途中で警官に呼び止められて、少しだけ尋問されてしまった。これ以上ここをうろつくのはもう無理だ。
しかし、このようなビジネスが行われているその横に、普通に警官がいるというもの不思議な話だ。きっと警察との腐敗した関係もあるのだろう。ビルから一歩出れば、そこはどう見ても普通のインドである。

こんなに当たり前にWomen Trafficing の現場が存在していることに、逆にその問題の根深さを感じる。
2時間弱滞在したであろうか、僕はGBロードを後にした。
実は今日は、今回のインド旅の最終日である。最後の最後まで、僕は動き回っていた。
ここから僕は、いったい何を学び、何を糧としたらよいのであろうか。
左脳の知識としては、インドの人権問題については知っていた。人身売買や、今回は見ることがなかったが幼女売春などの問題が非常に大きなものであることも、知識としては知っていた。
今回こうしてその現場に足を運び、女性たちとも直接話し、その熱や臭いを感じ・・・。今僕は、これから何をすることが正しいのだろう。
あと15時間後には、もう日本に着いている予定である。インド最後の最後で、また僕は大きな「何か」を心に抱えてしまった。
僕らが人間である以上、性の問題がなくなることはない。性欲そのものは悪ではないし、種の保存のための当然の欲求である。
しかし、社会生活を営む人間として、僕らはこの「性」とどう付き合ったらよいのだろう。なにしろ、この問題が存在しない国や地域は1つとしてないのだから。
その現実をしっかりと受け止め、今日のこの日を無駄にすることなく、今回もまた、誓います。
「この世界が少しでも良いものになるように、この命を尽くしていきます。」
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