「ごーすとらいたーず！」

「うーにーぃっと，『肩に手をまわし　囁く言葉は』っと…では対の句は『別れを言えずに　絡める指で』っと……『足を絡め』だと，うーん…直接的にR18になっちゃう…」

　そんなふうにオトナの女性同士の淡い思いをうたっちゃう！的な歌詞をひねりだしてみてたりしたら。
　こんこんこん。私の居室のドアが鳴る。

「はーぁいっ！」と元気に返事をすると，「ああ，やってるね」とボス。「…世間は全面的に盆休みだと思うんですけど」というと「今は忙しいでしょ，いちばん」と椅子に座るボス。

「まあ，忙しいですよねえ…」

　実際，これが大変で。大変な文章の大変な作成が大変だったりー。

「その大変なモノだけれどね」とボス。「あれ。かなり攻撃的だね」。
「あーやっぱりー」あははははー。

　某社の某プロジェクトの発起宣言文。『こんなんでどうです』って，代筆案を提示してみたんですねー。でまあ，先方さんが，その，なんというか…批判的でなくて…。

「こことここ…これ，言葉，きっついねー…商売敵さん，激怒するんじゃないかな」
「彼の部内的にも，ここらあたりは」と指摘して「拙いんじゃないかと思います。まー，疲れたアタマで二，三時間で書いたものですからねー」

　下手を打つと，この『かなり各方面に攻撃的な』文章が部内稟議とかに回りかねない的な。

「これ，古手君の文章？」
「はい。無駄に攻撃的なので，彼が気付いて多少直すかなとか」

　あと，最終的には対外的にも出てゆく文章なので！　責任者のひとが気付いて直すかなとかあだな願いをかけてみたり！

「無理だよ」
「ですよねー」

　外注する方もなんなのですけど，される方にも配慮が必要というか。そういえば，先日，国会議員さんが国会での質問書を外注して，受注した側が手抜きしたのか，同一文案を複数議員さんに出しちゃって大惨事★だったとか。

「考えてあげないとしょうがないよ」
「柔らかく，柔らかく，突っ込みどころ引っ掛かりどころのない流麗な文を…あとでいいですよね☆」
「…コメントくらい，送ってあげなよ？」

　送りましたので読者のひとは安心するとよいです。

「ちなみに，下手に読むとあそこの論理的に微妙に自爆加減」
「君ねえ」
「まあそのヤバメの論点はクリアしてると思いますよ，ええ」
「それと―出張準備は，大丈夫？　ああ，ドルはもう買ったんだ」
「ああ，ボチボチですねー…少し円高の時に，手数料込で一ドル100円切ったところで1000と300と…」
「インスタント味噌汁は買った？」
「これから買いに行きます」
「食料は？　食べ物合わないと…ああ，君は食べ物は大丈夫か」
「まあ，ええ…けど念のために確保しておきますよ」

　むんず，とカロリーメイトをひっつかみ，

「お守りみたいなものですけど　ね」

　有無を言わさず，カバンの中に突っ込んでみたり。