芦奈野ひとし 『ヨコハマ買い出し紀行』

豊かなイメージが溶け込んでいる海のような漫画




この作品はブログ仲間のissieさんに教えていただきました。
現在１２巻まで出ているんですが、とりあえず６巻まで読んだ感想を。

それにしてもお目当ての本を探すのは大変ですね～。とくにマンガは月に出る点数も多く、回転も速いですからなおさらです。でもそれだけ苦労して見つけてきたかいがありましたよ、この作品は。


この作品はメインのストーリーがあって、読者をぐいぐい引っ張っていくようなものではなく、作品世界があって、そこに住むキャラクタたちがいて、読者がそこにポーンと放り出される、そんな感じです。
はじめは何かのサイド・ストーリーかなと思いましたね。
侵食してくる海、はるか上空をゆく巨大飛行機、新種の生物たち。
時折出てくる世界設定が実に奥行きが広くて、この人の頭の中にはこの世界がまるまる入っているんだなあと、感嘆しました。

ところどころに散りばめられた世界設定、というと人気アニメーション『新世紀エヴァンゲリオン』もそうですね。
『エヴァ』は畳み掛けるようなストーリー展開で視聴者をどんどん引っ張ってゆき、さまざまなキイワードは作品世界にかかわるものよりも視聴者を楽しませるものが多かったように思います。

私のイメージでは『エヴァ』は森。森の中にくっきりと道がついていて、視聴者はそこを進むんですが、ふと目を転じれば木々の間ににちらっと何かが見える。で、道をはずれてその何かを見に行ったりできる、そんなイメージです。

そしてこの『ヨコハマ買い出し紀行』は海。
作者の豊かな世界が溶け広がっていて、私たちはその上をゆったりと漂っているのです。
この作品はＳＦに分類されるのでしょうが、そんなことにこだわらずとも楽しめる。作品中のキャラクタとともにゆったりとした、豊かな時間を楽しめる作品です。