blueな日々

( Art で逢いましょう)

人間は弱いもの?

2006年03月21日 | 読書メモ

B75p

『ジハードとテロリズム
  ~日本人が知らないイスラムの掟』
 著者:佐々木良昭 出版:PHP研究所
 発行:2004.11(新書)  *図書館を利用
 出版社の紹介:ジハードが頻発する背景にはイスラム
 独特の文明観と、世界規模の資金・情報網が存在する。
 拡大しつづける、イスラム帝国の実像に迫る。テロは
 なぜつづくのか。彼らの唱える「ジハード」とは何か。
 彼らの目指す世界とは。イスラム世界に渦巻く戦いの
 論理を読み解き、現代ネットワーク社会が生み出した
 バーチャルな世界国家の実像を浮き彫りにする。

ネットで調べてみたら、好意的な評価も多かったが…。
著者がいうには、専門家も私たち一般人もイスラム世界
に対して表面的な理解しか出来ていない(実際そうかも
しれない)著者が教えてあげようといった態度。そんな
「自信過剰」もいいかもしれないと思い、読み進めた。
場違いなたとえ話や、大雑把すぎるイスラム世界の歴史
記述、決めつけ過ぎる記載部分などがあり、困惑した。
他の書籍とは味わいが違う、印象的な本ではあったが、
推敲を重ねて、もっと丁寧に、適切な表現をしてくれて
いたら(著者にはその能力があると私は思う)いい本に
なっていただろう。

 ビン・ラーデン死亡説浮上!~という帯がついている。
 そんなこといって米大統領選挙直前に出た本人の映像
 は何なのよ。どうやらその直前に刷ったらしく多くの
 読者は「なんだ古い本か」と思うだろう。が、それで
 見過ごされるのは惜しい本だ。自身がイスラム教徒で
 ある著者はイスラム世界への深い思い入れと実のある
 歴史的な洞察を披瀝している。今日の中東情勢を理解
 する上で有用な情報が込められている。
  (夕刊フジBLOG:04.12.06の書評を転載・編集)

 著者が勤務する財団のホームページに、著者本人が
 この著作への反応に対して一文をよせている。著者
 の「ビン・ラーデン死亡説」が反発を呼んだらしい。

………
『コーランを知っていますか』
 著者:阿刀田 高 出版:新潮社
 発行:2003.08(単行本)  *図書館を利用
 出版社の紹介:遺産相続から女性の扱い方まで厳格
 かつ具体的、時にはこまやかにイスラム社会を規定
 するコーラン。この「聖典」の理解なくして21世紀
 は語れない。ユダヤ・キリスト教との確執、礼拝、
 巡礼ほかをひもとく驚きのコーラン入門書。

もともと好きな作家ではなかった。最寄りの図書館に
なければ読まなかった。小説家が片手間に書いた本だ
といえる。毒にも薬にもならない。あたり障りのない
内容。下手なジョーク。オヤジの駄洒落。腹が立つ。
著者の『ギリシア神話を知っていますか』を昔、読み、
同様の感想を持ったことを、今日になって思い出した。

………
『イスラームの日常世界』
 著者:片倉もとこ 出版:岩波書店
 発行:1991.01(新書)   *図書館を利用
 出版社の紹介:イスラームは,いまや第三世界にとど
 まらず地球的規模に広がっている。その世界観が幅広
 い世代にわたって、十億もの人びとの心をひきつける
 のはなぜか。長年、世界各地の実情を見てきた著者が、
 生活体系としてのイスラームを断食、礼拝、巡礼など
 の基本的な生活習慣や、結婚・職業観などから語り、
 その真髄を解き明かす。

長年の研究や体験が産んだ著作だろう。イスラム世界に
暮らす人々(ムスリム)の生活やその意識などを教えて
くれる。描かれたとおりなら、イスラム世界も悪くない。
だが、現実とのギャップが大きすぎる。この本が書かれ
た頃(それ以前から)世界では紛争・暗殺・テロが起き、
すでに国際問題になっていた。著者が紹介するイスラム
の「日常世界」はそれらとは、無関係なのだろうか?
現実世界とは別次元でユートピアが存在するかのごとく、
著者は描いている。(私は、歯がゆい思いで読んだ)
専門分野であるほど、広い視野、公平な認識が必要では?
この学者の他の著作も読んでみるつもりでいる。そして、
あらためて、著者の「認識」を、私の「イスラム観」を
考えて、まとめてみたい。

 記事のタイトル「人間は弱いもの?」はこの本から。
 著者は、西欧文明(=人間性強説)は「ゆきづまり」
 であり、イスラム世界(ムスリム社会=人間性弱説)
 こそ「復興すべし」と考えている(らしい)。


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