いや、ホント。切実に。
普通に三~四時まで目がさえて眠れない。
眠いんですよ? 寝たいんですよ? なのに眠れない。
眠るって言うか、意識が飛んで気付いたら朝。
一・二時間しか寝て無い日が最近…。
どうしよう……。
はい、聖戦ものっすー。
昼間、眠くなって困る。
睡眠導入剤とか、飲むべきか?
Fate/Zero。
アニメ終わったけど、思いつくうちは書きます。
ネタが浮かばなくなっても別に冷めたわけじゃないのが厄介なところ。
転生ネタでBSKが可哀想な話。
私の中でBSKのキャラが定まらないのでバサ雁とか無理!
うん、ごめんね!!
悪夢は穏やかに咲く
「カリヤ! 嗚呼、逢いたかった!! どれほど貴方の姿を探したことか!! 狂化していたとはいえ私はマスターになんと言うことを…! あのときの罪を償うためにもどうか貴方の傍に仕える許可を!!
――ん? カリヤ、貴方胸に何か入れてるんですか? 柔らかいのですけれど」
ふにふに、もみもみ。
「~~~っ! 死ねぇ!!」
「で、どうしたのだ雁夜?」
「マグカップでぶん殴ってやった! ついでに顎に一発決めて、そのまま店を出たよ」
「ふははははは! 流石雁夜。我が見込んだだけのことはあるわ!!」
「もう、笑い事じゃないよ、ギル」
憤慨す雁夜の前にふんぞり返って楽しげに笑うは、彼女が勤めるウルクカンパニーを一代で築いた社長のギルガメッシュと秘書のエルキドゥ。
「気を付けてよ、雁夜? 春先は可笑しい人が増えるんだから」
エルキドゥの身を案じる言葉に雁夜も素直に頷いた。
「まぁ貴様も一応女なのだからな。精々用心することだ」
「口が悪いよ。でも、何かあったらすぐに言ってね」
「ああ、ありがとう」
何だかんだで心配してくれてるギルガメッシュの優しさも、エルキドゥの心配そうな眼差しも有り難く受け取っておいた。
予定よりも早く終わった取材。行きつけのカフェで一休みしてから会社に戻ろうとした雁夜。
コーヒーの香りに癒されているところへ、いきなり抱き付かれたのだ。
相手は長身の男。とても整った顔立ちをしていたけれど、まったく見知らぬ相手。
何やら訳の解らぬを一方的に喚き散らし、あろうことか胸を揉んできた。
迸る怒りのまますっかり中身を飲み干したマグカップで頭に一撃。間髪いれずアッパーカット。実はついでとばかりに鳩尾に肘を叩きつけていたりした。
そのまま店を出たけれど、カフェのマスターであるクーはいい笑顔で親指を立て、弟でありウェイターのディルムッドも苦笑を浮かべただけで何も言わなかったので多分大丈夫だろう。
うん、問題無い!
確かに髪は短いし、胸は平均以上とはいえそれ以外の部分は痩せっぽち。着込んだパーカーのせいで体型は解り辛く、特徴の無いモブ顔と男口調で性別不明かもしれないが。
女だ。しっかりきっちり自覚を持って生きている。
見ず知らずの男に胸を揉まれて、平気な顔をしていられるほど人間出来てはいない。
「電波ってホントにいるんだな」
パソコンに向かい合って凝った肩をほぐしながらの帰り道。
見慣れた街並みは夕暮れのオレンジに染まって、写真に収めたくなるほどだ。
住宅街の、しかし人気の少ない一角に差し掛かかり――足が止まった。
「げ、お前?!」
雁夜の正面、立ち塞がったのはカフェの男。
緩くウェーブした紫の髪と憂い顔。スーツの上からでも鍛え上げていることがわかる長身。
「カリヤ…」
哀しそうに眉を寄せ、男は彼女を呼んだ。
「なんで俺の名前知ってんだよ? お前、誰だ」
「私はランスロットと申します。先ほどは…その、本当に申し訳ありませんでした。
少し、我を忘れしてしまって……」
「え、ああ、そうか」
素直な謝罪に拍子抜けした。
「ええと、あのさ。どこかで会ったことあるか? お前みたいなイケメンなら忘れないと思うんだけど」
困惑気味に問う雁夜に、ランスロットはきゅうと唇を噛み、俯いてしまう。
「あの、おい…?」
「いえ、憶えていないのも無理はありません。私は本当に貴方に対して謝っても謝りきれないことをしてしまいましたから。
許されないことだとはわかっています。ですが! わたしは貴方に償いたい! 今度こそ私の命の全てを賭けて貴方のために尽くしたいのです!!」
「うぎゃ!?」
唐突に抱きしめられた身体。
細い雁夜の腰を、薄い背中これでもかと言うほどに力を込めて抱きしめる。
「おい! 苦しい、離せよ聞いていんのか、こら!?」
「嗚呼カリヤ、今生こそは私の持てる全てを貴方に捧げます! どうかどうか貴方の傍に侍る許可を!!」
「うわぁぁぁぁ! やっぱり電波だ、こいつー!!」
いーやー!!
悲鳴を上げて至近距離にあるランスロットの端正な顔を殴り引っかくが、不利な体勢と元々の非力ゆえ欠片も効いていない。
「カリヤカリヤ、カリヤ! 今度こそ、貴方のために! 貴方をお守りいたします!!」
「守るってんならまずこの手を離せよ、今すぐにぃ!! ひぃぃ、首筋に顔を埋めるな匂いを嗅ぐなぁ!!」
人の話をまったく聞いていない男は雁夜の体に回した腕を解く気は毛頭無いようで。
雁夜の体力が尽きる寸前、ランスロットが吹き飛んだ。
黒い弾丸の如き豪速でランスロットを蹴り飛ばしたのは、コートの男。
「綺礼!!」
「ふむ、無事かね? 雁夜」
にたりと。
澱んだ目が細められ、浮かぶ笑顔はとことんうそ臭い。
「なんでここに?」
「ギルガメッシュから連絡があってな。雁夜がおかしな男に纏わりつかれたと」
「それでわざわざ迎えに来たのかよ…」
「丁度良かったようだな」
「う、うん。ありがとう」
普段より優しさの込められた双眸に見詰められ、少しばかり照れてしまう。
「うっ…。は、貴様は!?」
アスファルトに転がった体を起こし、ランスロットが綺礼を険しく睨みつけた。
「綺礼…」
「雁夜、こちらへ」
素直に背中に庇われれば、なぜかランスロットは傷付いた顔をする。
「カリヤから離れろ、外道め! カリヤその男は危険です、こちらへ!!」
縋るように腕を伸ばされたけれど、当然それを掴むわけが無い。
確かに綺礼は見た目からして胡散臭くて、絶対こいつ犯罪者だろ!そうだよね!そうじゃなきゃおかしいよ!!という人間性をしているが、初対面の相手にそんなことを言われる憶えは無い。はずだ。
ゆえに、雁夜はランスロットを睨む。
彼女を抱き寄せて、綺礼は鼻で笑った。
「生憎と、私は赤の他人に妻をくれてやるほど寛大ではないのでね。
さっさとお帰り願おうか?」
「な…!? 妻、妻って…結婚してるんですかカリヤ!! こんな男と!?」
「そうだよ、悪いか」
「もしやフルネームは――」
「言峰雁夜だよ」
ランスロットの言葉に唇を尖らせる。
意地の悪いことをされるし、よく泣かされるけれども。
それでも愛しているのだ。
綺礼のソレは愛情表現だとわかっているし。
「そういうことだ」
にんまりと口の端を吊り上げ、雁夜の額に唇が寄せられる。
そこで雁夜ははたと気付いた。
ずっと綺礼の片腕にぶら下っていたモノに。
「時臣ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!??」
「おや、すっかり忘れていたな。いやぁうっかりうっかり」
「うっかりじゃねぇだろうが、馬鹿ぁぁぁぁぁ!!」
しれっと言い放つ綺礼の腕から奪い取ったのは小さな体。
茶色の髪はぼさぼさとおかしな癖がつき、目の焦点は合っていない。
「時臣、しっかり! 大丈夫か?」
揺さぶってやれば蒼い目に光が戻り、雁夜の顔を捉えた途端にうっすらと水の膜が張った。
「う…お、おかあしゃ・・・」
「ああ、良かった! 無事か、時臣。怖かったなぁ、もう大丈夫だぞー」
慈しみに満ちた笑みを浮かべた雁夜は、腕の中で震える子供の頭を優しく撫でる。
「もう、何考えてんだよ、お前は!? お前の全力疾走は怖いんだよ」
「幼い愛息子を一人家に残してこいと? 随分薄情な母親だ」
「そうは言って無いだろ! 時臣はお前みたいに無駄に体が頑丈じゃないんだから気を付けろって言ってんだよ」
「善処しよう」
まったくもって悪びれない綺礼にしばし複雑な視線を向けて、雁夜は幼子をぎゅうっと抱きしめた。
首に回される子供の柔らかな腕の感触が心地良い。
そこにおずおずとかけられるランスロットの声。
「ああああああの、その、子供は…一体誰なのかお聞きしても? 息子とか言う単語が聞こえたのですが?」
すっかり忘却していた男の存在に、雁夜はあっと間抜けに声を上げた。
綺礼の方は憶えていたが故意に無視していたのだろう。愉しそうににやにやと笑っている。
ランスロットに向き直り、疑問に答えた。
「誰って、息子は息子だよ。俺と綺礼の子。時臣ってんだ。今年で三歳になる」
「はぁぁぁぁぁ!? 息子? え、だって時臣って、あの?! カリヤが心底嫌悪していた人物でしょう!! 息子って息子って、そんな…。あの男と結婚しているだけでもアレなのに――うわぁぁぁぁぁぁっぁぁああああぁぁぁっ!!」
驚愕に目を見開き、絶叫と共にがっくりと手をついた男の様子に呆気に取られる。
一体何なのだろうか、本当に。
というか、綺礼が夫で時臣が息子で。
それの何処が悪い?
いや悪くないだろう。
旦那を外道だとか息子を嫌悪とか、言い掛かりにもほどがある。人の家族にケチつけんな!
「雁夜、帰るぞ」
綺礼が肩を抱き促せば、雁夜も素直に頷いた。
ランスロットのことは気になるけれど、これ以上関わるつもりは無い。
とんでもなく厄介で面倒臭そうなことになりそうだから。
未だ嘆き真っ最中なランスロットは、そんな二人の様子に気付かない。
「時臣、今日の晩御飯はオムライスだぞー」
「おむらいしゅー!」
「麻婆豆腐ではないのか?」
「いっつもいっつも同じものばっか食えるか!!」
夕陽を受けて仲良く並んだ影は離れる事無く伸びていた。
この後、ランスロットが色々騒動を引き起こすのだが、言峰一家はそんなこと構わずに仲睦まじく過ごします。
貴方にとっては不幸でも、貴女にとっては楽園だ。もうこれはどうしようもない現実だと知りなさい!!
普通に三~四時まで目がさえて眠れない。
眠いんですよ? 寝たいんですよ? なのに眠れない。
眠るって言うか、意識が飛んで気付いたら朝。
一・二時間しか寝て無い日が最近…。
どうしよう……。
はい、聖戦ものっすー。
昼間、眠くなって困る。
睡眠導入剤とか、飲むべきか?
Fate/Zero。
アニメ終わったけど、思いつくうちは書きます。
ネタが浮かばなくなっても別に冷めたわけじゃないのが厄介なところ。
転生ネタでBSKが可哀想な話。
私の中でBSKのキャラが定まらないのでバサ雁とか無理!
うん、ごめんね!!
悪夢は穏やかに咲く
「カリヤ! 嗚呼、逢いたかった!! どれほど貴方の姿を探したことか!! 狂化していたとはいえ私はマスターになんと言うことを…! あのときの罪を償うためにもどうか貴方の傍に仕える許可を!!
――ん? カリヤ、貴方胸に何か入れてるんですか? 柔らかいのですけれど」
ふにふに、もみもみ。
「~~~っ! 死ねぇ!!」
「で、どうしたのだ雁夜?」
「マグカップでぶん殴ってやった! ついでに顎に一発決めて、そのまま店を出たよ」
「ふははははは! 流石雁夜。我が見込んだだけのことはあるわ!!」
「もう、笑い事じゃないよ、ギル」
憤慨す雁夜の前にふんぞり返って楽しげに笑うは、彼女が勤めるウルクカンパニーを一代で築いた社長のギルガメッシュと秘書のエルキドゥ。
「気を付けてよ、雁夜? 春先は可笑しい人が増えるんだから」
エルキドゥの身を案じる言葉に雁夜も素直に頷いた。
「まぁ貴様も一応女なのだからな。精々用心することだ」
「口が悪いよ。でも、何かあったらすぐに言ってね」
「ああ、ありがとう」
何だかんだで心配してくれてるギルガメッシュの優しさも、エルキドゥの心配そうな眼差しも有り難く受け取っておいた。
予定よりも早く終わった取材。行きつけのカフェで一休みしてから会社に戻ろうとした雁夜。
コーヒーの香りに癒されているところへ、いきなり抱き付かれたのだ。
相手は長身の男。とても整った顔立ちをしていたけれど、まったく見知らぬ相手。
何やら訳の解らぬを一方的に喚き散らし、あろうことか胸を揉んできた。
迸る怒りのまますっかり中身を飲み干したマグカップで頭に一撃。間髪いれずアッパーカット。実はついでとばかりに鳩尾に肘を叩きつけていたりした。
そのまま店を出たけれど、カフェのマスターであるクーはいい笑顔で親指を立て、弟でありウェイターのディルムッドも苦笑を浮かべただけで何も言わなかったので多分大丈夫だろう。
うん、問題無い!
確かに髪は短いし、胸は平均以上とはいえそれ以外の部分は痩せっぽち。着込んだパーカーのせいで体型は解り辛く、特徴の無いモブ顔と男口調で性別不明かもしれないが。
女だ。しっかりきっちり自覚を持って生きている。
見ず知らずの男に胸を揉まれて、平気な顔をしていられるほど人間出来てはいない。
「電波ってホントにいるんだな」
パソコンに向かい合って凝った肩をほぐしながらの帰り道。
見慣れた街並みは夕暮れのオレンジに染まって、写真に収めたくなるほどだ。
住宅街の、しかし人気の少ない一角に差し掛かかり――足が止まった。
「げ、お前?!」
雁夜の正面、立ち塞がったのはカフェの男。
緩くウェーブした紫の髪と憂い顔。スーツの上からでも鍛え上げていることがわかる長身。
「カリヤ…」
哀しそうに眉を寄せ、男は彼女を呼んだ。
「なんで俺の名前知ってんだよ? お前、誰だ」
「私はランスロットと申します。先ほどは…その、本当に申し訳ありませんでした。
少し、我を忘れしてしまって……」
「え、ああ、そうか」
素直な謝罪に拍子抜けした。
「ええと、あのさ。どこかで会ったことあるか? お前みたいなイケメンなら忘れないと思うんだけど」
困惑気味に問う雁夜に、ランスロットはきゅうと唇を噛み、俯いてしまう。
「あの、おい…?」
「いえ、憶えていないのも無理はありません。私は本当に貴方に対して謝っても謝りきれないことをしてしまいましたから。
許されないことだとはわかっています。ですが! わたしは貴方に償いたい! 今度こそ私の命の全てを賭けて貴方のために尽くしたいのです!!」
「うぎゃ!?」
唐突に抱きしめられた身体。
細い雁夜の腰を、薄い背中これでもかと言うほどに力を込めて抱きしめる。
「おい! 苦しい、離せよ聞いていんのか、こら!?」
「嗚呼カリヤ、今生こそは私の持てる全てを貴方に捧げます! どうかどうか貴方の傍に侍る許可を!!」
「うわぁぁぁぁ! やっぱり電波だ、こいつー!!」
いーやー!!
悲鳴を上げて至近距離にあるランスロットの端正な顔を殴り引っかくが、不利な体勢と元々の非力ゆえ欠片も効いていない。
「カリヤカリヤ、カリヤ! 今度こそ、貴方のために! 貴方をお守りいたします!!」
「守るってんならまずこの手を離せよ、今すぐにぃ!! ひぃぃ、首筋に顔を埋めるな匂いを嗅ぐなぁ!!」
人の話をまったく聞いていない男は雁夜の体に回した腕を解く気は毛頭無いようで。
雁夜の体力が尽きる寸前、ランスロットが吹き飛んだ。
黒い弾丸の如き豪速でランスロットを蹴り飛ばしたのは、コートの男。
「綺礼!!」
「ふむ、無事かね? 雁夜」
にたりと。
澱んだ目が細められ、浮かぶ笑顔はとことんうそ臭い。
「なんでここに?」
「ギルガメッシュから連絡があってな。雁夜がおかしな男に纏わりつかれたと」
「それでわざわざ迎えに来たのかよ…」
「丁度良かったようだな」
「う、うん。ありがとう」
普段より優しさの込められた双眸に見詰められ、少しばかり照れてしまう。
「うっ…。は、貴様は!?」
アスファルトに転がった体を起こし、ランスロットが綺礼を険しく睨みつけた。
「綺礼…」
「雁夜、こちらへ」
素直に背中に庇われれば、なぜかランスロットは傷付いた顔をする。
「カリヤから離れろ、外道め! カリヤその男は危険です、こちらへ!!」
縋るように腕を伸ばされたけれど、当然それを掴むわけが無い。
確かに綺礼は見た目からして胡散臭くて、絶対こいつ犯罪者だろ!そうだよね!そうじゃなきゃおかしいよ!!という人間性をしているが、初対面の相手にそんなことを言われる憶えは無い。はずだ。
ゆえに、雁夜はランスロットを睨む。
彼女を抱き寄せて、綺礼は鼻で笑った。
「生憎と、私は赤の他人に妻をくれてやるほど寛大ではないのでね。
さっさとお帰り願おうか?」
「な…!? 妻、妻って…結婚してるんですかカリヤ!! こんな男と!?」
「そうだよ、悪いか」
「もしやフルネームは――」
「言峰雁夜だよ」
ランスロットの言葉に唇を尖らせる。
意地の悪いことをされるし、よく泣かされるけれども。
それでも愛しているのだ。
綺礼のソレは愛情表現だとわかっているし。
「そういうことだ」
にんまりと口の端を吊り上げ、雁夜の額に唇が寄せられる。
そこで雁夜ははたと気付いた。
ずっと綺礼の片腕にぶら下っていたモノに。
「時臣ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!??」
「おや、すっかり忘れていたな。いやぁうっかりうっかり」
「うっかりじゃねぇだろうが、馬鹿ぁぁぁぁぁ!!」
しれっと言い放つ綺礼の腕から奪い取ったのは小さな体。
茶色の髪はぼさぼさとおかしな癖がつき、目の焦点は合っていない。
「時臣、しっかり! 大丈夫か?」
揺さぶってやれば蒼い目に光が戻り、雁夜の顔を捉えた途端にうっすらと水の膜が張った。
「う…お、おかあしゃ・・・」
「ああ、良かった! 無事か、時臣。怖かったなぁ、もう大丈夫だぞー」
慈しみに満ちた笑みを浮かべた雁夜は、腕の中で震える子供の頭を優しく撫でる。
「もう、何考えてんだよ、お前は!? お前の全力疾走は怖いんだよ」
「幼い愛息子を一人家に残してこいと? 随分薄情な母親だ」
「そうは言って無いだろ! 時臣はお前みたいに無駄に体が頑丈じゃないんだから気を付けろって言ってんだよ」
「善処しよう」
まったくもって悪びれない綺礼にしばし複雑な視線を向けて、雁夜は幼子をぎゅうっと抱きしめた。
首に回される子供の柔らかな腕の感触が心地良い。
そこにおずおずとかけられるランスロットの声。
「ああああああの、その、子供は…一体誰なのかお聞きしても? 息子とか言う単語が聞こえたのですが?」
すっかり忘却していた男の存在に、雁夜はあっと間抜けに声を上げた。
綺礼の方は憶えていたが故意に無視していたのだろう。愉しそうににやにやと笑っている。
ランスロットに向き直り、疑問に答えた。
「誰って、息子は息子だよ。俺と綺礼の子。時臣ってんだ。今年で三歳になる」
「はぁぁぁぁぁ!? 息子? え、だって時臣って、あの?! カリヤが心底嫌悪していた人物でしょう!! 息子って息子って、そんな…。あの男と結婚しているだけでもアレなのに――うわぁぁぁぁぁぁっぁぁああああぁぁぁっ!!」
驚愕に目を見開き、絶叫と共にがっくりと手をついた男の様子に呆気に取られる。
一体何なのだろうか、本当に。
というか、綺礼が夫で時臣が息子で。
それの何処が悪い?
いや悪くないだろう。
旦那を外道だとか息子を嫌悪とか、言い掛かりにもほどがある。人の家族にケチつけんな!
「雁夜、帰るぞ」
綺礼が肩を抱き促せば、雁夜も素直に頷いた。
ランスロットのことは気になるけれど、これ以上関わるつもりは無い。
とんでもなく厄介で面倒臭そうなことになりそうだから。
未だ嘆き真っ最中なランスロットは、そんな二人の様子に気付かない。
「時臣、今日の晩御飯はオムライスだぞー」
「おむらいしゅー!」
「麻婆豆腐ではないのか?」
「いっつもいっつも同じものばっか食えるか!!」
夕陽を受けて仲良く並んだ影は離れる事無く伸びていた。
この後、ランスロットが色々騒動を引き起こすのだが、言峰一家はそんなこと構わずに仲睦まじく過ごします。
貴方にとっては不幸でも、貴女にとっては楽園だ。もうこれはどうしようもない現実だと知りなさい!!
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