ファミリー メンタル クリニック

児童精神医学,サッカー,時にテレビや映画、Macのネタ。
要するにひとりごと・・・

薬物依存症治療の新たな展開-SMARPPの理念と実際-松本俊彦先生

2013年11月16日 | 精神保健・医療行政


昨日:平成25年11月15日(金) :講演会があった。(自分も世話人をしているので、参加者の数が気になったが60人参加。)
薬理研究会と銘打っているが、私が担当の会は青年期のアスペルガー症候群。直接薬理と関係なくても、メーカーのよいしょじゃなくてもOKの研究会。
今回は、FBでいつもやりとりしている松本先生にひとつの特別講演をお願いしました。



クリニックでは薬物依存症の患者さんを多く診るわけでは無いが、中高生でも中にはアルコール乱用、薬物乱用の患者さんが少ないが受診する。自傷行為のある子に問診すると、もう少しいるかも。

松本先生の講義は、全国行脚しているだけあって、話がびんびん伝わってくる。
大学教授には失礼だが、何たらかんたらのデータでああたらこうたらで、このSSRIが良いんですよ.とあちこちで似た様な内容で、あちこちのメーカーの顔をたてるような講演は、時間の無駄だ。
松本先生の話は、音楽の嗜好性と関係あるかは分からないがソウルフル(笑)
左脳でなく右脳に伝わってくる。

薬物依存症の専門家でないオーディエンスに対して、自分も失敗してたんだということをさらりと語る。
必ずしも、最初から専門家じゃなく、試行錯誤してきたんだと云う事が伝わる。
そこで受講者もちょっと頑張って診ようかなと、自らの座標を確認しながら思うことが出来る。

かなり難しい臨床を続けているのだろうが、子どもの臨床でふと思う瞬間と重なる.
なぜこの子は毎回受診しているのだろう?
あれだけ嫌がっていたのに。
嫌なら来ないという選択肢だってあるのに。

来院するなんらかの理由があり、他の医療機関でなく我々のところに続けてくる何らかの相互作用(関係性)があるのだろう。
そんなことを考えながら薬物依存症臨床のテーマを聞いていた。




タイトルにもあるSMARPPがSMAPでない理由は何となく分かるが(笑)
国立研究センターにいる氏がどうしてSERIGAYAと冠したプログラムを作っているのか、ちょっと理解出来た。
人生色々なのである。
MATRIX modelについては、後日確認しよう。

講義が終わり懇親会で話題にした 新たな展開 というタイトルがきっと大事なことだろうと考えながらずっと聞いていた。
何と比べて新しい治療展開なのだろうか?
治療で大事なのは「関係性」だとさらりと述べていた。
しかし、薬物依存症の患者さんで、虐待・複雑性PTSD、社会的弱者である者など基本的信頼感が十分に築けない人達が必ずいるだろう。その人たちに対しては、関係性の中で進めていく治療は難しくなるかも知れない.そんなことを考える。

数年すると、更に新たな展開が見えてくるのだろう。
共著の多い小林先生はしきりと21世紀に生きる我々治療者はと、さらりと一文を書くのだ。
入院・収容でなく、司法中心でなく薬物依存症の患者さんの治療は精神科医が苦手意識を持たずに治療出来るように.
これからの展開は医師個人の力量に委ねられる治療でなく、多くのカードを、多職種で用意し、地域で緩やかながらネットワークを利用する構造になっていくのだろう。

なかなかエキサイティングな講義だった。
零細企業ながらティーンエイジャーの受診者が多い。
自傷・薬物乱用患者さんも増えてくるかも知れない。
弱小クリニックながら、彼ら彼女らの支援・治療が少しでも出来れば・・・と
普段やる気のない私のモチベーションを高められた講義だった。

最新の画像もっと見る