美と知

 美術・教育・成長するということを考える
( by HIGASHIURA Tetsuya )

遠藤泰弘

2007年05月26日 | 勤務校所蔵美術作品紹介

『かさねる 白』1994年100号F

遠藤泰弘氏略歴
1934年神戸市生まれ、1958年武蔵野美術大学西洋画科卒業、NHK就職
1984年NHKを退社し画業に専念
1996年逝去

NHKの舞台装置設計の仕事も充実していたものであったにもかかわらず、NHKを退社されて制作活動に専念するという道を選ばれた遠藤氏は、世俗を離れて孤高で清廉な求道者のような姿勢を死の直前まで貫き通されました。

花や木や、自然を見つめ続けた遠藤氏の作品は、やがてその自然の構造そのもをつかみとります。デリケートな画質の奥底に、ゆるぎない力強さが秘められています。

遠藤泰弘氏の先生である麻生三郎氏のコメントを紹介いたします。
「黒白で立木を描いたのがよかった。ごく自然に描いている。このような質の絵はすくなくなった。自然なのだ。その人自身の自然さで描いているのがすきだ。このごろ絵が物化してきている。方法が先行している絵が多い。絵はたしかに「物」にはちがいない。その「物」の必要もあるが、人間の内側の自然さがなくてはだめだ。それがぶち毀れてきている。
・・・まったく呼吸するように自然な心の状態がなくなったらたいへんだ。
 遠藤君の絵はそういう自然さのなかで仕事が進行しているのだと思う。
絵のなかにやさしさのような質が感じられるがそれは大切な自然さだ。
そして彼は逆に絵から見られていることもよく知っている。」
(麻生三郎)

『かさねる 白』は、抽象絵画ですが、白が生み出す、豊かで奥行きのある空間は、生命や希望をも感じることが出来る魅力的な作品です。余分なものがいっさい描かれていない、一筆一筆の作家の呼吸を感じることのできる遠藤氏の代表作といえます。

ご遺族のご好意により、本校の所蔵するところとなりました。

(遠藤泰弘氏1989年頃アトリエにて)
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