MIN LEKPLATS

& Patrick Chan is the ONE

くりすとふぁ物語

2010-06-17 18:08:30 | 陳偉群 & Co
オルソン姉妹の話題に象徴される現SWEの盛況ぶりを目の当たりにするにつけ、そうでなかった過去のことにも改めて思いがいってしまう。もうかれこれ3年以上、まさにそのことをあることないこと妄想して書きなぐってきた()私であるが、当たってることもあり、わかってないこともあったなあと。
だからしつこいようだけれど、もう一度だけ「くりすとふぁ物語」を紡ぎたい。

クリストファーが置かれていた環境というのを、今の状況と比較して改めて考えてみると、とにかくレベルがあまりに違いすぎるんだよね。彼がフィギュアを志し、成長していく際に与えられた環境というのは、うがった言い方をすれば外界から隔離された処で楽しむ趣味クラブの域を出ていないものだったんじゃないか。
こう言ったからといって、当時のSWE関係者を馬鹿にするつもりは毛頭ない。みんな与えられた環境で与えられた才能の限りを尽くして頑張っているだけだ。当時はそれしかなかったんだし、それで良かったんだろう。

しかし、そのまったりしたアヒルが池(SWE語表現ankdamm)に、全然レベルの違う才能と大望を抱いた白鳥のヒナが一羽紛れ込んだ(・・ってこの比喩はちょっとやりすぎでしょうか?
クリストファーの場合は才能もそうだが、それ以上にこの大望というのが大きな意味をもっている。才能だけなら、他にも似たようなレベルの選手がもしかしたらいたんじゃないかと思うので。この大望、というより彼の場合は渇望と言った方がふさわしい気がする、があったればこそ、こんなに長い間続けてこれたんだろう。ナショナルでトップを極めワールドを数回代表したあたりで、満足して辞めていても不思議ではなかった、いやむしろそのほうが自然だったのに。だって彼以前のSWE選手はみんなそうしてきたんだから。しかも彼にはリンク外でのしっかりした人生目標もちゃんとあるんだし。

ともあれ、それが彼の選択だった。が、アヒルが池の中で満ち足りたアヒルどもに囲まれて、大海を越える白鳥になる夢を追うなんて簡単ではない・・だろうな。
上を見ても、横を見ても、下を見ても誰もいない・・

小さい頃から負け知らずだった筈だ。ノーヴィス、ジュニア、シニアと努力で勝ち取るというよりは、年齢が満ちるのを待ちかねるように上に押し上げられてきた。17歳でシニア・デビューを果たした後は、今日まで一度の欠場もなくユーロ、ワールドでSWEを代表してきた。
・・想像を絶する真空地帯、いい加減馬鹿にするなと言いたくならないか?

クリストファーの「フィリップがいなかったらとてもやってこれなかった」という言葉には、良きライバルがいてよかったというような単純な意味以上のものがあると思う。
そのフィリップも遂にクリストファーの本当の意味でのライバルにはなれなかった。彼にあと少し力があったら、SWEフィギュア史のありようもまた随分違ったものになっていたんじゃないかと思う。

こう考えると、去シーズンアドリアンがクリストファーのワールド(と五輪)参加を阻んだことが、SWEフィギュア史において如何に画期的な出来事であったかが見えてくる。
同時に、もういい加減バトンタッチしろよ、と数年前から騒ぎ続けてきたマスコミの心境も幾分はわかる気がする。

しかし・・マスコミの主張やはり不当だ。何故ならその長いキャリアを、クリストファーは決して無駄に、あるいは安易に過ごそうとはしてこなかったから。目標は世界のトップに至ること、かれこれ10年にも及ぶシニア時代をみても、そこから彼の焦点がずれたことは一度たりともなかった。信じられないような根気と忍耐力だ。普通最初の数年でブレイク出来なかったら引退するか、さもなければ現状維持、守りの態勢に入るものだろう。どっちにしてもつまり諦めるってことだ。
しかし、クリストファーは諦めなかった。だからこそ極めてゆっくりではあったが、ランキングにおいても実力においても継続して上昇してこれた。
そういう彼を、まるで御山の大将で胡坐をかいているみたいに思って非難するのはとんでもない見当外れだと思う。

「僕が最も誇りに思うのは、絶えず成長しようと本気で努め続けてきたこと、立ち止まって満足しなかったことだ。(どういうことかと言うと、ナショナル、ノルデック、ユーロ、ワールドといった大会に向けてだけでなく、日常生活にまでも目標を定めている。例えば、練習で特定のジャンプを5回決めるとか、気分が重い時にもなんとか動機を失わないように頑張るとかいうように)」

という彼の発言を私はそういう含みで聞いた。
『僕はずっとトップを目指してきた。どうやら山頂まで行き着くのは無理みたいだけど、僕が全力を尽くさなかったとは誰にも言わせない。僕はいつも死力を尽くしてきた』そう言いたかったんじゃないかな、と。
彼がそうしてきたのはよくわかっていたけど、本人が言葉で表現するのを聞くのは初めてだった。正直驚かされた。

クリストファーは言葉の人ではない。無口な上に典型的理数系タイプなんだろう、話す内容がいつも直接的実際的過ぎて、文科系の私などは肩透かしをくってるような気分になってしまう。リップサービスなんて逆立ちしてもできない人だ。ニコニコに上がっているスケーター名言集とかに入れたくなるようなカッコイイ台詞を彼が言うのを聞いたことがない。
しかし、この言葉は名言集入りに値するよ。クリストファーにしか言い得ない、真実の重みをもった言葉だ。彼の人格と人生が圧縮されていると思う。

大体そんな感じ・・で今日まで歩んできたクリストファーだが
ところで、今彼は何を思う。
ふと気がついたら時代が変わっていた、だけど・・
渇望未だやまず。
彼の物語はまだ完結していない。

終章を楽しみにしているよ

前にも書いたけど、
僕の前に道はない。僕の後に道はできる・・
それもまたいいさ。


シュルの前にはべるが
マヨの前にはべるシュルが
オンドレ君以下の者達の前方にはべるシュル+大マヨがいる。

一国の運勢ってそんなふうにして創られていくものなのかも。

アドリアン達には、変プロのみならず『天分の最後の一滴までも絞り尽くす』クリスの根性をも相続して貰いたい。

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3 Comments

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Unknown (ringo)
2010-06-19 16:24:27
こんにちは、先日拍手の方でコメントさせて頂いたringoです。

今回のベルントソン選手のお話、興味深く読ませて頂きました。
持って生まれた才能を極限まで磨き上げ、日常生活にまで目標を設定する…先を行く大先輩が国内にいないベルントソン選手にとって、その歩みは常に自分自身との闘いだったんですね。自身で道を作り、スウェーデンのスケート界を切り拓いて来たその強い精神力に感服しました。
そうしたベルントソン選手の努力の歴史があり、現在のシュルタイス、マヨロフ選手らの若手の成長や、女子も含めたスウェーデンスケート界の活況があるというわけですね。その流れを牽引してきたベルントソン選手の功績は計り知れないものがありますね。

次の世界選手権に向けて、ベルントソン選手の挑戦もまだまだ続きますね、持てる力で最高の演技をし、是非有終の美を飾って頂きたいです。シュルタイス選手ら若手選手ともども応援したいと思います。
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-- ()
2010-06-20 16:38:29
ringoさん

人間というのはいくら自分だけでやっていると思っていても、決して一人ではないですから。
上があってこそ下がある、前があってこそ後がある。そういう流れの秩序を尊重しない国、人は未来もたいしたことにならないと思います。
これからフィギュアの新時代に入っていくスウェーデンに、そういう気持ちの良い継続が出来ていけば最高です。
そういう意味で、来季は大事ですね。

ちなみに、SWEの伝統色としては、『変プロ』ではなく「自分の個性をよく知ってそれを恐れずに活かす」であって欲しいなあ。それが人によっては変プロにもなりうるってことで(笑)
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拍手ご返事 ()
2010-06-20 19:00:52
今回はいつにも増して多くの拍手を頂きました。どうも有難うございます。
嬉しい反面、このように多くの若い方の純粋な心の琴線に触れてしまったのかと、それなりの責任も感じています。
ベルントソン君は学べることの多い素晴らしい内容を持った人だと思います。私も学ばせてもらっています。素敵な人でもあるから若い女性ならぞっこんになるのも無理ない。だけど、あまり感情移入し過ぎて思い詰めないでくださいね。いろいろあっても、彼は思う存分好きなことに賭けられる幸運な人なんですから。明るく楽しみながら応援してやってください。それを彼も望んでいると思います。

> 06/19 00:02 にコメントくださった方へ
仰るように彼の業績は少し距離を置いてはじめてわかるのかも知れませんね。いろいろ見方はあると思いますが、今回の日本ファンのバックアップは彼にとって絶対必要なものだったと思います。SWE全体にとっても意義あることだった筈です
クリスとの出会いが貴女の人生をプラスの方向に転換するよすがとなったとしたら、それは素晴らしいことですね。そういう魂の触れ合いを数多く持ちたいものです。ご自身とクリスの人生を結ぶ絆をじっくり慌てず培っていってください。

> ななしお返事不要さんへ
コメ有難うございます。
これはお名前だと理解して、またご返事させていただきますね(笑)
クリスの掛け値なしの真面目さ、真摯さは、地味すぎて巧く言葉で表現するのが難しいけれど、どんな派手なスタンドプレイにも増して見る者の心を打ちますね。
くりすとふぁ物語はハッピーエンドになるしかないと思ってます。と、彼を信じてもう一年・・(笑)

> 06/19 14:57 にコメントくださった方へ
拍手ボタン、見つけづらいですよね、済みません。gooブログでは拍手ボタンを投稿ごとにつけるのが難しいらしくて。
そうですか、「大マヨ」で笑っていただけましたか。嬉しいです!
読者に泣き笑い両方満喫していただければ書いてる側としては、もう言うことなしです
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