MIN LEKPLATS

& Patrick Chan is the ONE

J'ai soif

2010-01-28 17:43:00 | Season09/10
マヨロフがバンクーバー五輪の補欠に決定。いよいよ今回の五輪は踏み台覚悟、本番は4年後のロシアって路線に全面切り替えらしい。
なんていうと、え、もともとそうだったろ?と反論されそうだが、五輪委員会はともかく、スケ連のほうはユーロ前にはもうちょっとニュアンスのある見方をしていたような気がする。ベルントソンが行く場合のシナリオも当然あったはずだ。

今回はそういうユーロ前後のスウェーデンの風向き具合みたいなものを探ってみたい。
とはいってもど素人な外部者(しかも慢性妄想人)の書くことだから、まったく勘違いな可能性も少なからずある。被害を負われても一切責任取る準備はないので、それをご承認のうえ読むなら読んだくださいな。

五輪委員会(略してSOK)が提示した基準格差は周知のことだったので、ユーロ前から世間では五輪行きはシュルタイス優勢と思われてはいた。が、スケ連の考えがそれと全く同調していたかどうかといえばそれは疑問だ。
考えてもみてよ、『スウェーデン・フィギュア・イコール・ベルントソン』だった時代がかれこれ10年近くもあったんだ。現代史では文字通り並ぶ者のない存在。彼のスウェーデン・フィギュア界に対する貢献度は、もう計り知ることさえ出来ない。そのベルントソン最後のシーズンになるかも知れないって時に、何の感慨も抱けないとしたら、そりゃもうスウェーデン・フィギュアの関係者たる資格がない、そうだろう?

ちなみに、スケ連のHPでは「(五輪選考基準に関しては)周りの言うことに耳を貸さず、我々の言葉だけを信じるように」と両選手に再三言い聞かせたとある。それだけ回りがうるさくて大変な状態だったのだろう。また彼らが何を二人に語っていたのかも興味をそそるところだ。むろんSOKの路線に全く反することは言ってないだろうけど、この場合言外の含みとかが非常な意味を持ったんじゃないか。今となってはそれも永遠の秘密だけど・・・

スウェーデンTVのユーロ解説は、例年の如く専門家のロッタ・ファルケンベックと素人代表のローゲル・ブロムクヴィストが担当した。
ここ数年STVではユーロやワールドの開催中一般から質問を募り、番組の流れの中でそれに答えるということをやっている。大半は無邪気な質問だが、なかには意地悪なものもある。今回は、なんとか「五輪行きはシュルタイスが有利」とか「技術的にはシュルタイスのほうが上」という回答をさせようという意図がみえみえの質問がいくつかあった。一般ファンを代表する立場のローゲルおじさんも、質問者の意図を汲んでかなりしつこく食い下がっていた。が、ロッタは断固としてそれに乗らなかった。「五輪に誰が行くかは未定」「二人の実力は伯仲していて甲乙をつけることは不可能」の一点張り。全てはこの大会に掛かっているというニュアンスだった。


で、ショート後。
これ、外国の人にはピンとこないみたいだけど、あのショート演技直後スウェーデンではベルントソンの扱われ方ががらりと変わった。
確かに一応自己新で、シュルタイスより上位につけてはいたけど、点数だけならわずか2,65差にすぎない。それなのに翌日の新聞とかでは、二人に凄い差がついたかのような書かれ方だった。STVPlayに挙げられた動画のタイトルも、方や「シュルタイスのナンバーを見よう」なのに対して「ベルントソン、素敵なショーを提供」と、かなりネーミングの意気込みが違う(原語だともっと差のある印象だ)。

私も同感だったから良くわかる。スウェーデンのフィギュア関係者は、ベルントソンがあのショート演技で見せた気迫にぶっとばされちゃったんだよ。
彼の荒ぶる魂が遂に満ちて一気に噴出したかのような凄まじい滑走だったと思う。ジャンプの回転数がいくつとかステップのレベルがどうだとか、そんなことは二の次みたいな気にさせられた。それが彼の五輪への執念ともろに重なって伝わってきた。まあ、蛮人コナンの死闘に、ゆるゆるクラシックで対抗させられたシュルタイスこそいい災難だったとも言えるけど。スウェーデン観衆はあの演技を観て、ベルントソンの五輪に賭ける願望の強さを思い知った、それは間違いない。

その点、日本ではファンの反応も含めて、あの演技の特殊性が全く認識されなかったようなのがちょっと不思議。あれはスウェーデン人にしか認識できない特殊現象だったのかしらん。

何はともあれ、そういう背景で迎えた決勝だ。我々の眼にはベルントソンは無敵に見えた。ジャンプにむらがあるとか、ここ一発に弱いとかそんなのはもはや過去の話。彼が失敗するなんて考えられなかった。

勿論これは私の個人的嗜好に則ったプロジェクションの産物といえなくもない。人はみんな自分にとっての現実を絶えず創造しているのであって、ある意味では絶対的事実なんてないも同様なんだから。しかし・・

ベルントソンのフリー演技の直前に、シュルタイスのインタヴューが入った(クリスの直前・・つまりまたもやトマシュの演技の最中。毎度毎度インタヴューの背後画像にされて、彼もえらい災難だな)。具体的な言葉回しは忘れてしまったが、不本意な滑走になってがっかりしているシュルタイスに、ローゲルは「このままだったらベルントソンに五輪権持ってかれるんじゃない?違う?どう思う?」というように詰め寄った。シュルタイスは確かに不本意な演技をしてしまったとはいうものの、だからと言って五輪を逃す危険があるなんてことはその時まで夢にも思ってなかったんじゃないだろうか。『だってクリストファーにSOKが納得するほどの成績を上げられるわけがないんだから』”・・or?” それが事に依るとそんなに確実なことでもないのかもしれない、という思いが突然湧いてきたのではないだろうか。『え?え?ええっ!?ちょっと待ってくれよ!!!』みたいな雰囲気があって、最後にかなり上ずった声で「そりゃあ、クリストファーが(SOKの)基準を満たしたら、彼が行くべきと思うよ、だけど・・」

だけどどうなのかはわからないままインタヴューは終わった。

アドリアンの名誉のためにも、ここでもう一度断っておくべきだろう、これはあくまでも私の想像に過ぎません。もしかしたら彼はただ予期せぬ質問を受けて、ちょっと戸惑ったというだけなのかもしれない。ただ実況で聞いた時、私にはそのように聞き取れた、それ以上でもそれ以下でもないです。

ポイントは・・
ローゲル氏も私も、ベルントソンが素晴らしいフリーを演じてくれると信じて疑わなかったってことなのですよ。

だから本当にびっくりしたよ・・

ローゲルはそれでも無理やり会話を続けようと努めてたけど、ロッタに至っては滑走半ばからほとんど無言だった。
そして最後、ベルントソンの後姿を見送りながら、嘆息とともにこう叫んだ。

“What a pity that he can’t make jumps done. He has good pirouettes, good choreography and gave everything for the presentation. He has much more to give!”

(↑すみません、どうしてもピンとくる日本語訳がつけられなくて)

この嘆息は今回のユーロのことだけではなく、ベルントソンのキャリア全体に対するものだったと思う。(ほんとだよ、なんでジャンプが決まらないんだ・・)
また、ロッタさんの嘆息は彼女ひとりのものではなかった。翌日スケ連が彼女のこの台詞をそのままHPに掲載したのが何よりの証拠だ。

スケ連がベルントソンに引退の花道を与えたいと願っていたのは間違いないと思う。
しかし、いくらチャンスを与えようとしても、受け取るかどうか最後は当人次第。
なぜベルントソンはチャンスを活かせなかったのか・・
私にとっては永遠の謎だ。
いつか答えが得られるといいと思う。

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