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のらりくらりSEVEN ART☆

40歳からのぼちぼち人生

フットサル抜粋☆

2016-11-10 18:53:09 | 日記
昨今、質の高いフットボーラーを輩出していくという共通の目的のもと、サッカーとフットサルが連係を深めている。その意味で「サッカーに生きるフットサル」の重要性の理解が進んでいるが、一方で、現場レベルではまだ、指導者やプレーするサッカー系の選手が、フットサルを有効活用しているシーンを見ることが少ない。シュライカー大阪の木暮賢一郎監督が10月、「フットサルの育成」にフォーカスした指導者講習会を行ったが、そこで「日本人はディフェンスが絶対的に足りていない」と指摘した。その真意とは――。
(文・本田好伸)
どの年代でもサッカーとフットサルはリンクする
 フットサルのみならず、将来の日本フットボール界に不可欠なものは、「指導者養成」と「選手育成」である。今年、日本サッカー協会(JFA)のフットサル委員会に北澤豪委員長、小西鉄平フットサルテクニカルダイレクターを中心とする技術部会が設立され、「日本代表強化」「指導者養成」「育成」の3本柱が改めて整備された。小西ダイレクターがサッカーの技術委員会にも参加することで、サッカーとの連係を図りながら、質の高いフットボーラーを輩出していくというビジョンを描き始めた。海外のトップサッカー選手を引き合いに「フットサルがサッカーに生きる」と言われて久しいが、日本でもようやく、この流れを加速させていくという明確な意思表示がなされたと言える。
 ただ、「サッカーに生きるフットサル」とは、より低年齢の育成年代から始めない限り、本当の意味でのフットサルの有効性を体得することは難しい。なぜなら、サッカーにもフットサルにも共通する技術、戦術、さらに身体能力や運動能力は、特にU-12年代までに学ぶべきものだからである。その後、それぞれの競技に求められる体力面の違いが顕著になるU-15年代からは、サッカーとフットサルが枝分かれし、U-18年代を経て、トップカテゴリでは明確に別競技となっていく。ただし、育成年代の根底で培ったフットボールの原理原則は常にどちらにも有効に働くものであり、その意味では、どの年代においてもサッカーとフットサルはリンクすると言える。つまり、「フットサルがサッカーに生きる」のである。
 こうした考えは現在、JFAからも発信され、フットサルC級ライセンス、フットサルB級ライセンスを取得できる指導者養成講習会などでも常々、指導者たちに伝えられている。
 ただし現実は、その理想のピラミッド構造を築くにはいたっていない。フットサルを専門に教える育成年代のチームや、民間のリーグ戦などに所属しながらフットサルを日常的に取り入れているサッカーチームなども増えている一方で、JFAが主催する大会においては、フットサルの本当の意味での有効性が理解されていないと感じるシーンも目立つ。
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 筆者が以前、執筆した「“投げ合い”から”蹴り合い”へーーポートボール化するバーモントカップ。このままで子どもたちは成長できるのか?」のコラムでも話題に上った、バーモントカップ全日本少年フットサル大会がまさにそうである。
 この大会は、サッカーチームにフットサルの有効性が浸透せず、フットサルの競技性を感じることのできない単調な“蹴り合い”が覇権を握っている。
 なぜ、サッカーに活きるはずのフットサルが理解されず、蹴り合いになってしまうのだろうか? この点について、10月に東京・渋谷区のDMM.com内の会議室で行われた『木暮賢一郎フットサル講習会』で、シュライカー大阪の木暮賢一郎監督が自身の見解を明かした。
「日本人は絶対的にディフェンスが足りていない」
「守備能力こそが世界との最も大きな差である」
彼がそう指摘する理由はどこにあるのだろうか。


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 今年のバーモントカップの決勝を映像分析した木暮監督は、プレス回避、定位置攻撃、ディフェンス、セットプレーなど、そこで何が起きているのかをまとめ、かつ同年代のブラジルやスペインで行われているプレーとの比較を示した。そこで強調していたのは、「あくまでも、そのプレー、システムが良いという話ではなく、『なぜそれをしているのか?』を指導者が考えるべきだということ。指導に正解はないからこそ、しっかりとフットサルで起きる現象を理解し、トップカテゴリだけではなく、同世代の世界の現状なども含めて考えていくことで、育成年代の選手が次のステップに進める」ということだった。その意味で、特にバーモントカップの決勝で起きていた現象を見て、木暮監督は、「これが日本のスタンダードになっているのかもしれない」と語った。その現象こそが、プレス回避のシーンで見られた、2-2というボックスの形である。
 詳細はこうである。「GKのクリアランスから、両チームともに、99パーセントが2-2の形からスタートし、このボックスの配置から、ハーフライン手前への山なりのボールが送られる。オフェンスの選手もハーフよりも前にいてもボールが来ないために、全員が自陣にいる状態であるか、もしくは、自陣のキックインからのプレス回避で、前線にキックするパターンが見られた。一方で、ブラジルの同年代の試合では、3-1の形で深さを作り、ピヴォを使って回避するという、大人と同じようなことをしている。スペインでも、4-0、2-1-1、2-2など、プレス回避の質は高い」。
 ただし、木暮監督が指摘するのは、あくまでもその形が悪いということではなく、「例えばスペインでは、ディフェンスもしっかりしているために駆け引きがあるが、日本にはそれがないために、オフェンスもディフェンスも選択肢がない」ということである。そもそも、プレス回避に限らず、ベースとして2-2を選ぶチームが多いが、木暮監督は「オフェンス、ディフェンスを分業することが、サッカー的で指導しやすいためではないか」と考察している。日本の多くのサッカーチームが、サッカーのベースの技術を、フットサルコートでどのように発揮するかということにフォーカスしているが、「どんな狙いを持ってその形を使っているのか」を指導者が考えることが何よりも大切である。現在のバーモントカップは、そうした思考にいたっていないことで、「そもそもディフェンスもそのオフェンスに対応できないために、駆け引きがない」という状況が生まれている。だからこそ、「日本には絶対的にディフェンスが足りない」と指摘しているのだ。
 フットサルの守備システムは「考え方は人によっても違うが、大きく分けて、マンツーマン、ゾーン、ミックス、マーク交換があり、攻撃システムを含めて、これらはすべて、各年代ごとの正しいタイミングで習得すべきである。良い選手を育てて、トップカテゴリーやプロに送り出したいのであれば、U-18年代までに攻守のすべてのシステムのトレーニング経験を積んでおかなければ、プロになったときに大きな差になる」と言う。
 例えばU-6からU-8年代では、「攻撃であれば、1対1、フィニッシュ、運ぶドリブル、トラップ、コントロール・オリエンタード(トラップ時のボールの方向付け)、ボールの移動中に味方に寄るなどを学ぶ必要があり、守備であれば、ボールの移動中に相手に寄せる、守備の優先順位、相手の利き足や体の向き、状況に応じた寄せ方などを学ぶ必要がある」と、最初に取り組むべきものがある。木暮監督自身、「こうした個人技術こそが、日本と世界の明確な差になっているところ」だと感じている。
 この個人技術は、「サッカーにも共通する部分」であり、フットボールの原則は、1対1、2対2、3対3、4対4と広げていくなかでイメージを深められるものである。



なぜ、蹴り合いが起きるのかを考える必要がある
 木暮監督が語った、「ディフェンスができないために駆け引きが生まれない」という言葉は、突き詰めれば「フットサルを知らない」ということである。木暮監督は、以下のように話していた。「例えば、『ディフェンスが悪い』というときに、今どんな状態にあるのかを理解していないと、選手にしっかりと伝えられない。数的不利のディフェンスに問題が起きているのか、撤退が遅いのかなど、指導者は年代ごとに的確な表現を使って、選手がより理解できるように促してあげる必要がある。だからこそ、フットサルの構造というものを理解しないといけない」。さらに、「日本の育成年代ではまず、2-2から始めることが多いとされる。ただスペインの指導者と話すと3-1から始めるほうがいいと言っている。これはどちらが良いのかではなく、指導者が、なぜ2-2から入ったほうが良いのか、なぜ3-1のほうが良いのかを理解して、自分のなかで根拠を持ってトレーニングをしたり、選手に伝えていくことが大事」と話した。こうした育成年代における指導プロセスこそが、選手の将来に大きな影響を与えるということだろう。
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 木暮監督による講習会の第1部のテーマは「フットサルの育成」であり、木暮監督は、「フットサルにおいても、世界のフットボールのスタンダードと同様、U-6くらいからU-18くらいまでの育成年代において、それぞれの年代ごとに学ぶべきものがある」ということを強調していた。各年代ごと、オフェンス、ディフェンスなど、どのようなことを学ぶべきなのか、その理由や狙いはどういったものなのか。また、同年代のブラジルやスペインはどのようなことに取り組んでいるのかなど、内容は多岐に渡り、考えるべきことは多い。これらはあくまでも「フットサルの育成」のことではあるが、冒頭にも記したとおり、特にU-12年代くらいまでに学ぶべき要素は、「サッカーに生きるフットサル」を考える上でも必要不可欠なものであることは間違いないだろう。
 講習会にも、サッカーで4種を教える指導者の姿があったが、こうしたサッカーとフットサルを横断して学んでいくことこそが、この先の日本フットボールに求められているのではないだろうか。木暮監督が推測したように、バーモントカップの決勝で見られたプレス回避の2-2という形は、ある意味で日本フットボールのスタンダードかもしれないし、オフェンスとディフェンスの意識を明確にし、陣形を変えずに自分のゾーンでプレーすることは、日本人のバックグラウンドに合ったものなのかもしれない。しかし、そうした土壌を根底から考え直していこうというのが、現在の潮流である。木暮監督も「育成は、下のカテゴリーから始めて一貫性を持たせることが大事」だと強調していた。
 そうであるならば、指導者、そして選手自身が、育成のピラミッド構造の下層にあるU-12年代における現状、「バーモントカップの蹴り合い」を直視し、考えていくことこそが必要であろう。なぜその現象が起きているのかを理解し、打開策を考えていくことが、質の高いフットボーラーを輩出していく近道ではないだろうか。その段階を経て、日本フットボールの未来は、フットサルの育成年代から変わっていくはずなのだから。
<合わせて読みたい>
“投げ合い”から”蹴り合い”へーーポートボール化するバーモントカップ。このままで子どもたちは成長できるのか?
 なお、木暮監督によるオンラインサロン「日本フットサルが世界で勝つために」が10月1日からスタートしている。
 木暮監督が考えるフットサル論・監督論などを動画を交えて配信する他、実際に行なっているトレーニングメニューや対戦相手のスカウンティング方法を紹介するなど、フットサル指導者・関係者にとって興味深いコンテンツとなっている。
 月額は2160円。詳しい内容や入会方法は下記のリンクより
木暮賢一郎 日本フットサルが世界で勝つために(オンラインサロンDMM Lounge)