25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

福岡伸一

2015年09月14日 | 文学 思想

 吉本隆明が死去してから、読書への僕の関心は「福岡伸一」と「村上春樹」にある。吉本隆明の言葉は初め難解であったが、四十年も読み続け、再読を重ねていると、僕の中で僕自身の骨や筋肉になっていくようだった。福岡伸一は分子生物学者である。文が学者の文ではなく、どちらかといえば文学的な文をかける人だ。彼は「生命とはたんぱく質の分解と化合の流れの中で平衡を保っている」と言う。こういう言葉はわかりにくい。わかりにくくさが消えるまで再読を重ねる。「生命とはエネルギーと情報の流れである」という言葉がくっついてくると、それはどうやらたんぱく質が行っている。酵素もたんぱく質である。

 私たちは瞬間瞬間たんぱく質が死に、生まれ、それが化合して生まれ変わることを繰り返している。

 福岡伸一の思考のしかたになれていき、自分の言葉としていくためには自分の思考回路を通り、そこで、濾過もし、取捨選択し、自分これまでの思考と照らし合わせ、という作業をやっていくしかない。面白い本とはそのようなものだ。

 読んでいたはずなのに、記憶されていないことがひとつあった。

 取りすぎた過剰な脂肪酸や糖質はブドウ糖となって脂肪細胞組織にあるマカロニのような装置で脂肪組織に取り込まれ、脂肪となって保存される。私たち人間が飢餓状態で700万年やってきた、生き延びるための装置だ。獣がとれたら、どっと食べて体内に保存しておく。それが脂肪である。もちろん脂肪はエネルギーの元となるひとつである。するとそのマカロニのようなブドウ糖を取り込む命令をだすところはどこか。毎日基礎代謝である2000キロカロリーに対して2000キロカロリーをとれば溜め込めばマカロニはブドウ糖を吸収して脂肪をつくらずともいいのである。でも飢餓から開放された今の時代、溜め込む必要もないのに、僕らは過剰に食べる。飲む。するとマカロニが出てきてブドウ糖を脂肪細胞に取り込んでいく。この指令塔は実は膵臓である。膵臓のランゲルハウス島である。

このことを確認した。すっかり頭の中から去ってしまっていた。 



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