25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

世界をつくった6つの発明

2016年12月04日 | 社会・経済・政治

 「世界つくった6つの革命(ステーブン・ジョンソン著 朝日新聞出版」という本を読んでいる。全米ベストセラーに躍り出ている。副題は「新・人類進化史」である。

 普通、歴史と言えば、年表順に誰が政権をとり、どんな時代であったか、文化、経済はどうだったか、そんなものである。ところがこの著者は、視点が全く違う。ガラス、氷、音、清潔、時間、光 というものから歴史を語るのである。

 すると、おもしろい庶民の姿や意外な発展の歴史が浮かび上がってくる。

  ニューイングランドに住む大金もちの息子が熱帯の中南米を旅した時、氷がないことに気づく。この地域に氷を売ればさぞかし儲かるだろうと、社員を派遣し、氷代理店を作るように命じ、自分は大型の帆船を作る。ところが熱帯地方の人々は氷がわからない。シャーベットや飲料水に入れればきっと使うだろうと思い、力説するが、熱帯の人々は理解できない。おまけに、近くの池から切り取った氷はだんだんと溶けていく。いまから思えば馬鹿な話だが、本人は真剣である。すべての財産を投げ打ち、借金を返さないということで、当時刑務所にいれられても、彼は頑張る。やがて、船上でも溶けてしまわない輸送方法を考え出す。船中でむしろを敷き、その上にまたむしろ、という風に氷を重ねるのである。やがて、熱帯の人々は氷を理解するようになり、彼は巨万の富を築くのであるが、氷が部屋の空気を冷やすということまでは知らない。彼はここまでだ。科学者ではなかった。しかし、氷は肉類や魚類をが腐るのを長引かせることにも気がつかなかった。

 氷が部屋を冷やす。食料を長持ちさせる人工氷を作ろうとするものが現れる。すでに電気もある時代である。

船でインボンベイまで運んでいたのだからすごい需要があるはずだ。ここから冷蔵庫の開発が始まり、冷凍庫の開発、さらに小型化の研究が始まった。それをてがけたのはさきの青年ではない。すでに、彼は世にはいない。

 瞬間冷凍技術も開発された。今では女性の卵子まで冷凍保存ができて、100万人をこえる人間が生まれ、暮らしている。氷によって、砂漠に都市もできるようになった。氷のなかった国々に大会都市ができるようになった。人々は夏は涼しく、冬は温暖な暮らしができるところに徐々に移動した。

  15000年間前にリビア砂漠に層として眠っていたガラスは、現在、眼鏡、鏡、窓ガラスと発展し、顕微鏡、望遠鏡はいうに及ばず、ついにグラスファイバー、光ファイバーへと発展した。

 ネアンデルタール人が洞窟に描いた絵には、それに伴う音があったことがわかった。洞窟の一番音が響き、共鳴し、こだまする場所に点を打った。音は音楽を生み出し、電話に発展した。

 人間がちょっとづつ積み上げていった結果をぼくらは普通のように、当然のように享受している。あらぬ方向にいくもの、偶然に発見するもの、忍耐を重ねるもの、大失敗するもの。歴史を考える上で、相当に役立った。さすがベストセラーだ。

 

  

 



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