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2005年09月02日  |  特別寄稿:団藤保晴
 

団藤保晴『ブログ選挙!? 実力のほどをわきまえて謙虚に』

特別寄稿第三弾は、全国紙記者で「ブログ時評」を書く団藤保晴氏。団藤氏は、1988年からネットの世界とかかわり、現在までネット社会の変遷を見続けています。ブログのほか、コラム「インターネットで読み解く!」、総合誌「世界」などへの寄稿など幅広く論評活動を行っています。黎明期から日本のネットを見守ってきた団藤氏は、今回の「ブログと選挙」騒動をどう見ているのでしょうか。

今回の特集の趣旨を理解していただき、「ブログ時評」から関連するエントリーを転載するという形で寄稿していただきました。



ブログ選挙!? 実力のほどをわきまえて謙虚に

特別寄稿 by 団藤保晴(ブログ時評)


 自民党の幹事長がメルマガやブログの作者を招いて懇談した初物現象も加わってか、「ブログ選挙」という言葉が一人歩きを始めようとしています。ブログの隆盛期とぶつかった総選挙に何らかの影響をもたらすはずですが、ブログの実力はまだ、たかが知れていることをデータで示し、ブロガー側が磨かねばならない課題を指摘したいと思います。

■ 簡単なブログ伝播力の測定結果

 ブロガーの皆さんからも秀作推薦を募り、200編以上のブログ記事を読んで書いた「小泉郵政解散へ賛成論と反対論まとめ [ブログ時評32]」は多くのウェブやブログから好意的な評価をいただきました。例えば「はてなブックマーク」で「このエントリーをブックマークしているユーザー 」の数は50は超えていたようです。

 私の持つ二つのサイト「インターネットで読み解く!」「ブログ時評」とで8月21日から公開、その後5日間にどれくらい、この「まとめ」にアクセスがあったか集計すると約2万件です。メルマガで配信した約14000部はこれには含みません。

 では2万件のうちブログを経由しきたアクセスはどれくらいでしょうか。「はてなブックマーク」関係やRSSリーダー経由と思われるものを加え、最大に見積もって4000件にしかならないのです。残りの圧倒的多数は個人ニュースサイトと呼ばれるところ経由です。今回の大所は「TBN」「かーずSP」で、前者が3500件、後者が2000件くらい。さらに多数の個人ニュースサイトが参加して例の「津波アクセス」が起きました。

 ブログ上の総選挙をめぐる議論は傍目にはとても盛り上がっているように見えますが、ブログの情報伝播力を客観的に評価すれば、まだ、この程度の力しかありません。あちこちのブログでオススメにしてもらっていても、ブログによるリンクの力は弱いのです。おそらく時事・論壇系のブログに出入りする人口は大した規模でないのでしょう。一方、1日に何万件もアクセスがある個人ニュースサイトはそれぞれに趣味系の強力な売りモノを持っていて、そこに来る人たちの1、2割が時事系の話題に反応する構図になっています。世論に影響を与えるとまでは言わないにせよ、「ブログ選挙スタート」と胸を張るためには、国内で先発しているネットパワー、メルマガや個人ニュースサイトの力を借りざるを得ないと思います。

■ 視野狭窄と知的衰弱から脱皮を

 今回の「まとめ」を書こうと思いついたのは、個々のブログが先鋭であればあるほど視野狭窄に陥る可能性が高いと見たからです。訪問してくる熱心なファンと一緒になって盛り上がってくると、批判的なコメントを残す人に「そんなのは○○派のブログに行ってやれ」と罵声を浴びせる有様にもなっています。解散総選挙となれば論点は非常に多岐になります。どれかを語ったから済むはずもありません。具体的に多くの論点を見てもらうのが一番です。

 私の企画に対して異論もありました。「はてなブックマーク」の多数支持エントリーを集めたら、自然に優れた賛否両論が集まるさ、と楽観的に言われる方がありましたが、すぐに無理と気づかれたようです。賛否のバランスが崩れているし、人気エントリーが質的にも高いとは限らないのは、ちょっと読めば見て取れます。適当なハブサイトが自然に生まれる状況でもありませんでしたし、手間を承知で私の鑑識眼で読み集めるしか無いと判断しました。

 劇場型の「わかりやすさ」に流れる現状では、論点が多い記事を読むのはとても辛いようです。優れた意見も並列でずらりと並べられたのでは、読むのがしんどいのです。今回の「まとめ」について「頭が煮えている私にはちょうど良い」と、どなたかが評されていたように、各要素がどう関連しているのか見えるようにストーリー仕立てになっています。これで必要な視野を確保して各論に踏み込んでいただきたい、というのが私の希望です。既に突っ込んだ各論があちこちで展開され始めています。選挙の裏話的なものに突き進みがちなメディア報道より、しっかりした分析が読めます。この際、広く見渡して勉強しましょう。敢えて申し上げておきます。一言で言える結論しか見えていない知的衰弱が、大盛況のブログにもあると。

(2005年9月2日)


■ PROFILE

団藤保晴
(だんどう やすはる)
全国紙記者。1988年のパソコン通信ネットワーク『Science Net』に参加して以来、電子メディアと積極的に関わる。1997年にINTERNET WATCHでスタートした連載『インターネットで読み解く!』(その後、独立してメールマガジンに)、そして2004年にスタートした「ブログ時評」では、専門分野のサイエンス・リポートに加え、政治・経済、社会問題、文化・スポーツなどの分野をカバー。ブログからメールマガジン、個人ニュースサイトといったネット・ジャーナリズムと、既成メディアとを横断する太い橋を架けるプロジェクトを展開している。

「ブログ時評」
http://dando.exblog.jp/


(gooニュース)

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