・冷却効果Cooling effect れいきゃくこうか
夏の暑い日には、古きよき昭和の時代には、よく道や庭先などに打ち水をしている光景が見られました。気化熱(蒸発熱)により大地のこもっている潜熱(せんねつ)を奪い去り涼しくなることより行われていました。
ただ水をまけば涼しくなると思っていませんか?
間違ったタイミングで打ち水を行えば逆に湿度が高くなり蒸し暑くなり、求めていたものとはま逆の結果になってしまうこともあります。昼間に少しばかりの打ち水を行うとかえって湿度の上昇により部屋の中の快適さを奪う結果になってしまうのです。
打ち水を暑い時間帯に行うとコンクリートやアスファルトの熱くなっているときに水をかけるとすぐに乾いてしまいます。蒸発することを「気化」といい、この時に行われているのが気化することで熱を奪うということが起きています。
気化熱を使って気温を少し下げるというのが本来の打ち水の効果です。効果的なタイミングで行えば最大で1.6度の温度が下がってくれるというデータもあるようです。温暖化の影響で35度以上にもなる猛暑日では生半可な打ち水では返って蒸し暑さを感じることとなります。
よいタイミングで行えば少しだけ快適な環境を作ることができます。
打ち水をすると涼しくなるという理由は2つです。1つ目が気化熱によるものと2つ目が 空気の流れによるものです。 気化熱で涼しくなる? 気化熱とは液体が気化する時に、周囲から吸収する熱のことです。
最近よく見かけるミストシャワー(Shower mist:Fogging mist)は、水を微細なミスト(霧)の状態にし噴霧、水が蒸発する際に気化熱を吸収することを利用し、その空間の気温を下げて冷却する仕組みです。
噴霧する10~30ミクロンの微細ミストは触れても濡れない爽快感を周囲に与えます。噴霧直後に素早く気化しますので、浴びても濡れません。乾いた霧(ドライミストないし霧の噴射(ミストシャワー)と呼んでいます。
夏季の気温を下げる以外に、室内での加湿、防塵、防臭、花粉対策などに使われてます。温度を下げる電力消費は、一般的エアコンの20分の1程度ともいいます。加湿器は不衛生になるとレジオネラ属菌の繁殖で注意が必要です。
赤ちゃんに、よく使うベビーパウダー(シッカロール)は、一般的にあせもやただれを防ぐために皮膚に塗布する粉末を指します。 主成分はコーンスターチやタルクTalc(滑石[かっせき]は、含水珪酸マグネシウムの鉱物)です。トウモロコシのデンプンであるコーンスターチは粒子が6~25μmと細かく、優れた吸水性があるため、余分な水分の汗を効果的に吸収し、発散させます。
吸湿性が低くかさかさ肌の水分が必要な時はその水分を放出する働きがあります。
タルクは水酸化マグネシウムなどを含む鉱石の粉です。タルクの球体の粉同士の間にできた隙間が毛細管現象を引き起こし、効率的に汗を蒸発させます。
どちらのタイプを用いる場合も、しっかりと乾かした肌に薄くつけることが効果的です。冷却というより制汗剤としての利用です。
ミント味のガムやキャンディー、チョコレートなどを食べると涼しく感じたことがあると思います。ミントの主成分メントールMentholは、口の中にもTRPM8(Transient Receptor Potential Melastatin 8)という冷たさを感じる受容体があるのです。
ミントに含まれるメントールが刺激を与えることで受容体が活性化し、実際に口の中の温度が下がったわけではないのに、冷たく感じます。さらに、冷たさを感じる受容体は喉の奥にもあるので、口だけではなく、喉の奥までひんやりした感覚を感じることができ、爽快な気分になれます。
また、トウガラシを含む食べ物を食べると、実際に体温が上がったわけでもないのに、熱く感じますが、こりはトウガラシに含まれるカプサイシンがTRPV1(Transient Receptor Potential Vanilloid 1)という熱さを感じる受容体を活性化させ汗がでてきます。汗をかくことで、汗が気化する時に体に溜まった熱を奪って最終的には少し涼しく感じることになります。
他に冷却効果をあげるものとして、制汗剤(エタノール・メントールMenthol)では、エタノールは気化熱の利用、メントールでは皮膚や粘膜の上にあるTRPM8という冷たさを感じる受容体を刺激して、冷たく感じさせています。
メントールで冷たく感じても実際には体温は下がっていないのですが、これらの作用によって皮膚が冷たいと感じ、発汗を抑えているのです。
瞬間冷却剤は、熱を吸収する反応を利用しています。この冷却剤の中には硝酸アンモニウムと尿素という化学物質と、水または硫酸ナトリウム・十水和物(10個の水分子がくっついている化合物)という化学物質が、別々の袋に入っています。硝酸アンモニウムと尿素は水に溶ける時に周りの熱をたくさん吸収するので叩くと中の袋が破けて化学反応が始まり、一気に冷たくなります。
洋服の素材で、肌に触れた時に涼しく感じる衣料素材は、天然繊維の麻、化学繊維のレーヨンやキュプラがあります。これらは、繊維中に水分を多く含み、熱が伝わりやすく、触った時に少し硬く感じることなどが影響して涼しく感じます。他にはポリエステルとエバールという物質を用いた複合繊維があります。
エバールは繊維中に水分を多く含むため、着用した時に冷たい感触です。
また、近年では湿度の変化に応じて通気性を制御する素材の開発が進んでいます。例えばトリアセテートとセルロースとが絡み合った複合繊維は、湿度が低いとセルロース部分が水分を失って縮み、生地の隙間を閉じて通気性を抑えます。一方、湿度が高いと生地の目が開いて通気性が良くなります。
衣料素材の性質を理解し、日々のコーディネートを考えましょう。
ご紹介した方法をうまく取り入れて、爽快に夏を乗り切ってください。
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