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『英語屋さん』の宝箱

『英語屋さん』『英語屋さんの虎ノ巻』(集英社新書/電子書籍版)、『英語で夢を見る楽しみ』(財界研究所)の著者のブログ

映画『フラガール』を見て

2006-09-28 11:48:05 | 随想

 都内でフラを教えている家内に引っ張られて、上映中の映画『フラガール』を見てきました。なにしろ出不精な私、映画館に足を運ぶのは『千と千尋の神隠し』以来、実に4年半ぶり。


 『フラガール』は、昭和40年代、エネルギー需要の変化に伴って閉山を迫られた炭鉱会社が地元の雇用確保のために建設した常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)に東京から招かれたフラダンス教師が、素人の田舎娘をフラダンサーに育てる物語。その経緯は、かつてNHKで放送していたドキュメンタリー番組『プロジェクトX』でも取り上げていましたが、この映画はそのストーリーを涙あり笑いありの娯楽作品に仕上げていました。生活のため娘に「腰ミノをつけて裸踊り」をさせることに対する炭鉱夫たちの屈辱感や怒り、東京から来たフラ教師との葛藤というモチーフもよかったと思います。


 家内のほうはフラを教える教師の側に感情移入して見ていたそうですが、私自身は昭和40年代の田舎の風景の描写に見入ってしまいました。私が育った北海道の田舎でもよく見かけた板葺き平屋建ての社宅や、通学に使ったのとよく似たディーゼル車を見て、懐かしさがこみ上げてきました。「よくできたCG(またはセット)だなあ」と思って見ていたら、そのほとんどが現存している建物や乗り物をロケで撮影したものだそうです。やはり、実写の映画はいいですね。ハワイのダイヤモンドヘッドの稜線を彷彿とさせるボタ山(ズリ山)を随所で見せた手法、有名なハワイのウクレレ奏者ジェイク・シマブクロが演奏するBGMも、全体の雰囲気をよく盛り上げていました。


 この映画は、あの高度成長期に日本全体が繁栄を謳歌していた陰で、このような苦労を重ねて生活の基盤を築いた人もいるという事実を思い出させてくれます。まだ、地域社会や会社が一種の共同社会として、人々の暮らしを守ろうとする古き良き時代だったのかもしれません。同じ地域振興策といっても、国がばらまいた金でひたすら「箱物」を作っては失敗したバブル期以降の社会の風潮に対する一種の警鐘と受け取るのは、少しうがった見方でしょうか。


 ところで、ひさしぶりに訪れた映画館は、数年前とはかなり様変わりしていることも驚きました。やわらかいイスで快適に見られましたし、夫婦割引や年齢による各種の割引も利用できるようになっていました。平日の昼間ということもあって映画館には年輩の人の姿も多く見られました。この国の映画産業の努力の跡が伺えます。