りんごの日記

ミュージカルの感想や旅行、その他思いついたことを自由に書きます

宝塚歌劇星組公演 「ア ビヤント」観劇

2009-02-11 13:01:00 | 観劇
 このタイトルが発表された時、多くのファンは「もしやーーー。」と感じ、その後、大方の予想どおりトップ・コンビが退団を発表。今回のテーマは「劇場」。劇場に集まる人々のさまざまな想いをとおして、とうこさんのヅカ生活を振り返る構成。作・演出の藤井先生は、先の「アパショナード!」であさこさんの魅力を充分に引き出す素晴らしいショーを作り、今回は入団同期であるとうこさんを暖かく見送る作品に仕上げた。

 歌劇2月号の座談会によれば、藤井先生はとうこさんのショーと考えた時、何となくフランスが浮かんできて、小粋なシャンソンやレビューができたらと思ったとか。開幕前、古びた劇場のチラッと幕が開きかけた舞台が登場。幕の向こうには何やら階段らしきものが見える。そこへ可愛い掃除夫に扮したじゅんこさん登場。一瞬「これは草野先生のショーだったっけ。『レビュー伝説』が始まったのか?」と思ってしまった。するとシルバーのロングの鬘をつけたちえちゃん(=時間の妖精モントル)が現れて午前零時に魔法をかける。右脚を耳近くまで上げたちえちゃんの傍らをすり抜けるじゅんこさんがおかしい。カゲソロの音花ゆりさんの声が美しい。

 幕が開くと、セリの上にゴールドの衣装を纏ったとうこさんがいる。一瞬で輝かしいレビューがスタート。レビューの妖精たちが薄紫を基調とした衣装で登場し、両手でそれぞれドアノブをひねって廻すような振りでさよならを意味し「ア ビヤント(またね)」のテーマソングを歌う。上品で華やかなステージとなった。
 舞台中央に、後ろ向きであすかちゃんがセリ上がりコミカルに歌う。全員、手に竪琴のシャンシャンを持ち、早くもパレードとなる。銀橋を50人近い生徒たちが駆け抜け(確か『カクテル』の時も似た演出があったっけ。あの時は全員がチャーリーさんに、目でさよならを伝えていた。)一気にショーは盛り上がる。初舞台のロケット以後、なかなか銀橋を通る機会のない生徒さんも多いはず。きっと若手はうれしいだろう。

 続く第5場では、銀橋にとうこさん・すずみん・しいちゃんが登場。若手時代の思い出を語りながら、「スカピン」の洗濯女を思わせる発声で、すずみんとしいちゃんがとうこさんの才能を見出す女性を演じる。いったん客席降りしたとうこさんは再度銀橋に登れず、最前列のお客さんにお尻を押してもらってようやくカムバック。そして握手を交わす。もちろん、これも演出だろう。

 第6場は、今公演で退団する、朝峰さん、しみこさんがメインの場面。髪をひっつめに結ったバレエ教師(こういう人いそう。)朝峰さんが、ダンス音痴のしみこさんに手を焼くが、しみこさんは恋人のねねちゃんの励ましを受けながら次第に上達して、とうとうセンターで踊れるまでになる。ねねちゃんのしなやかな動きが美しい。

 第7場はちえちゃんのダンスが存分に楽しめる。稽古場でバレエのウォーミングアップを始めたスターダンサーのモントル。彼が踊ると、あちこちから奇妙な「ファンタースティック」と叫ぶ声が聞こえてくる。それらはモントルに恋した影たちで、激しく踊りながら影は自分たちの世界にモントルを引きずり込む。影のメインとなるのがあかしさん。カゲソロは水輝涼さん。

 第8~11場はストーリーがお芝居とかぶる。ここでは音花さんと美穂さんの歌が聴きもの。どちらも素晴らしい歌唱力の持ち主なので聞き応え充分。とうこさん演じるアランが、劇場のスター歌手ジザベル(=あすかちゃん)に恋するが、ジザベルにはパトロンのしいちゃんがいる。しかし惹かれ合う2人。嫉妬したしいちゃんは、ボディガードの紅さんからピストルを受け取りーーーー。ここで目が釘付けになったのが紅ゆずるさんのボディガード。とにかくかっこいい。とうこさんに投げる冷たく厳しい視線が、お芝居のエリックと全然違う。髪はオールバックで、ベージュのスーツが長身によく似合う。この人は善人役もいいが、こういうキャラも充分いけると見た。

 いよいよ中詰。午前4時。可愛い道化の少年少女3人(大輝真琴・華雅りりか・早乙女わかば)が客席に降り、「100年ぶりのレビューが始まる。」ととうこさんの写真つきビラを配る。ここからシャンソン場面がスタート。それぞれの場面は果物をテーマにしている。ここは退団者に配慮した場面でもある。

 まずオレンジ色のラテンっぽい衣装を着たしいちゃんとコトコトが登場。この2人は安心して見ていられる。コトコトはベテランだけれど、いつも若々しい。

 次は脚をだして、お尻を振りながらさくらんぼに扮した可愛いねねちゃんが、銀橋を渡る。後ろにはねねちゃんの魅力にメロメロの男役8名が続く。マイクを付けている位置がまずかったのか、ねねちゃんが動くたびに雑音が入り残念。

 赤い衣装でりんごをイメージしたしみこさんとまりもさんが銀橋で大人っぽく「男と女」を歌う。まりもさん、一瞬誰だかわからなかった。

 黄色い衣装ですすみんがバナナをイメージ。百花さんと「夜のメドレー」を。今公演で退団する星風エレナさんらと絡む場もあり。

 次はさわやかにレモンの麻尋しゅんさんが「パナム・パナム」を若手男役4名と共に歌う。真風さん、しっかり抜擢されている。紅さんもボディーガードの険しい表情はどこへやら、さわやかな青年で歌っている。(こういうギャップが楽しい。)

 いちごのあすかちゃん。再びしみこちゃんが登場し「2人の恋人」を歌う。ちょっと意外なカップル。

 しめはちえちゃんのブルーベリー。美穂さんの歌に合わせて踊る。ダルマの衣装を着たともみんとあかしも登場。大人の魅力と迫力にあふれている。この場面、もう少し見ていたかった。

 第14~15場はとうこさんの女役が楽しめる。とうこさん以外はすべて男役。金髪のボブの鬘、濃紺のガウン、右手の甲に派手な飾りをつけシャンソンを歌う。女役姿も美しいなあと感心していると歌が終わり、ガウンを脱ぎ捨て、鬘を後方に放り投げ、濃い紫の衣装を纏ったかっこいい男役に早変わり。薄紫の衣装のちえちゃんと2人だけで踊る。カゲソロは毬乃ゆいさん。今までショーなどで2人きりで踊る場面はあまり見たことがない。最後は銀橋中央で、2人が下手に向かって上半身を反ったポーズで決める。

 第16場。ここからは華やかなカンカンの場面。あすかちゃんを中心に「すみれの花咲く頃」のメロディに乗り、ほぼ全員でカンカンを披露。これは見ごたえがあった。カンカンが気合が入っていた分、ロケットはなし。あすかちゃんが可愛かった。

 第17~18場。午前5時。にぎやかなカンカンの場面も終わり、一人楽屋でガウン姿で佇むアラン。左手には赤いロケットの衣装を来たバービー人形(に見えた)を持ち、これまでの想いを歌う。その後美穂さんが歌い継ぎ、とうこさんが脱いだガウンをとてもいとおしそうに抱いて、下手にはけて行く。ガウンを脱ぐとゴールドの衣装姿になる。楽屋を去り緞帳を上げると、組子のコーラスが響く中、大階段をゆっくりと登っていく。この時、ちえちゃんがとうこさんに上着を着せてあげるのだが、何だかホロリとしてしまった。

 第19場。ここは大好きな場面と言うか、藤井先生の演出が一番冴えているように感じられた。前の場面でとうこさんを見送ることができなかったあすかちゃん。花束を抱えて遅れて劇場に到着。「ああ、間に合わなかった。」との想いを歌う。この時の衣装はすぐにピンと来た。深紅のガウンにスパンコールで華やかに胸元を飾っているこの衣装は、以前宙組で、はなちゃんがショーで用いたもの。(ショーの題名を忘れてしまった。)このガウンの下にはなちゃんは黒いシンプルなドレスをつけており、ずんこさんにガウンを脱がせて貰ったのち、2人で踊る場面へと続いていった。また同じく宙組のショー「ザ・クラシック」で、るいちゃんが『ウィンターガーデン』の場面で登場する際にも着用していた。

 あすかちゃんががっかりして舞台を去ろうとする時、妖精モントルが「もう一度、夢を見せてあげよう。」と魔法をかける。すると黒燕尾のとうこさんが登場。ガウンを脱いだあすかちゃんは白いドレス姿。「愛の賛歌」のメロディでデュエットダンスを見せる。カゲソロの美穂さんが巧い!

 次いで生徒さんたちが両手に白い羽根扇を持って登場し、華やかなダンスを展開。これぞ宝塚!と言った感じ。ショーは終始フランスの劇場をイメージして構成されている。ここで、なくてはならないのが男役の総黒燕尾ダンス。今回はちえちゃんがとうこさんにはなむけの歌を歌い、それに合わせてダンスを展開。

 エトワールはあすかちゃん。最後まで退団者に暖かい配慮の感じられる舞台だった。同時にちえちゃんの舞台姿に、次期トップの風格すら漂い始めていた。サラブレッドが順調に育った。どの組でもこうしてじっくり、生徒を育成できたらいい。そして然るべき時が来たら、存分に活躍していただく。
 
 写真はプチミュージアムに展示中の「スカピン」フィナーレ、とうこさんの衣装。 


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (zuzu)
2009-02-11 17:35:23
シャンシャンのお写真にコメントし損ねましたが、実際にとうこさんのつかったシャンシャンを手にとって見られるなんて!
私ならシャンシャンを持ってポーズをとり
プチミューのお姉さんに写真をとってもらうところです(笑)

ショーのレポートもスカイステージのニュースで見る断片が一つ一つ繋がって
いくような・・・そんな感じで納得いたしました(^^♪
zuzuさま (りんご)
2009-02-11 20:44:49
 コメントをどうもありがとうございます。本当は私もシャンシャンを手に取り、すぐそばにあるミニチュア大階段の前で写真を撮りたかったのですが、度胸が足りませんでした。zuzuさま、ムラに行かれた折には、ぜひ私の分までリベンジを果たしてきてください。
 
 東京公演のチケットをどう確保するかが課題です。
Unknown (華笑)
2009-02-11 22:27:20
こちらショーの歌は本日でも口をついて出てきます「またね♪」なんて・・。
良いショーでしたね。
とうこさんのデュエットでは今日まであまりリフトを見かけなかったような気がします。
今回も無かったような??
お二人のデュエットを見たとき、熟した素敵なトップコンビだったのだと改めて思いました。
華笑さま (りんご)
2009-02-12 22:01:51
 コメントをありがとうございます。とうこさんのリフト、ありませんでした。と言うよりとうこさんは「歌巧者」ですね。背丈もさほど高くありませんしーーー。

 もう一度ムラに行きたくなりました。藤井先生のショー、大好きです。

コメントを投稿