りんごの日記

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「ピアフ」観劇

2016-02-28 21:50:17 | 観劇
 ずっと前から一度見たかったしのぶさんの「ピアフ」。ようやく今シーズン、チケットを得て劇場に足を運ぶことができた。

 大竹しのぶさん…テレビのトーク番組だと、ほんわかした天然っぽい方にお見受けするが、ひとたび板に上がればまるでイタコにでもなったかのように化けて、役に入り込む。憑依的とはまさに彼女のこと。しのぶさんの演技が苦手な人もいるだろうが、私は好き。エディット・ピアフは実在のシャンソン歌手。路頭で大声を張り上げ歌っていたところを、クラブのオーナーに見い出され、成功の階段を上がっていく。若いころから晩年まで相手は変わっていくが、傍らには常に彼女を支える恋人がいた。ピアフは言う。「一人ぼっちはいや。そばに男がいないと、生きていけない。」と。
 
 貧困からのし上がっていく女性の話だから、結構下品な台詞や場面がある。けれど生きていくためにはそうせざるをえなかった。わがままなようでいて、実は相手を想って行動するピアフ。劇中しのぶさんは有名なシャンソンを何曲も歌う。決して音域が広いわけでない。高音部は苦しそうな部分もある。けれどしのぶさんはテクニックではなく、魂で聴かせる。もともとシャンソンは歌の中にドラマがあるから、お芝居の巧い女優さんが歌うと、何とも味わい深い響きがある。第2部クライマックス、しのぶさんが「愛の讃歌」を歌い終えると、あちこちからすすり泣きが聞こえた。越路さんや美輪さんとは違う、身も心もボロボロになりながらも、愛することだけを頼りに生きていく女性の魂の叫びが聞こえた。シャンソンは決してきれいに歌えばいいってものでない。歌う人の人生観が如実に表れるなぁと今回痛感した。

 マレーネ・ディートリッヒと、ピアフの秘書の二役を務めた彩輝なおさんが素敵だった。第1部の軍人スタイル、第2部のゴージャスな白いロングドレスを、どちらも無理なく着こなせるのは元宝塚の男役トップスターさんゆえ。宝塚時代より歌が巧くなった気がした。そして第2部、ピアフの秘書役がこれまた見事。献身的にピアフに尽くそうとするが、薬物に溺れあまりにも感情の起伏の激しいピアフについていけなくなり、とうとう彼女のもとを去る。宝塚退団後、彩輝さんのステージを見たのは今回が初めて。いつのまにこんな立派な女優さんに成長していたのか!!
 
 ピアフ役はしのぶさんのライフワークになるだろうか?ぜひこれからも再演を続けてほしい。場面転換が素早くて、まるで宝塚のショーを見ているよう。膨大な量の台詞を語り、かつ歌うしのぶさん、喉は大丈夫だろうか?一日二回公演の日は、かなりきついのでは?けれどしのぶさんの気力と体力が続く限り、この作品に魂を込め演じ続けてほしい。大竹しのぶさん…ご本人はどう思っているか知らないが、映像より舞台向きかな?


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