
「ベルばら」「エリザベート」は宝塚が誇る観客動員間違いなしのドル箱作品。それゆえ忘れた頃に再演を繰り返してきたが、ここ最近は忘れる間もなくの再演続き。特に今年から始まった1公演1ヶ月上演制度では、再演に頼らないと演目に事欠く。再演するとなれば、前回と全く同じと言うわけにいかないから、話題作りにも心を砕く。今回はこの話題作りが先走り、全体的には平凡で霞んだ「エリザ」になってしまった気もする。

話題作り その1
毎回宝塚の「エリザ」では、トートのビジュアルをどうするかが大きな関心の的。前回雪組では緑を基調とし、ミズさんは手の甲にタトゥーを入れ、鬘はストレートスタイルだった。今回は衣装デザイナーの有村先生があさこさんが紫が好きなことを覚えていて、紫を基調としたお衣装を作った。髪型はあさこさん自ら提案したドレッドヘア。赤メッシュは小池先生の要望とか。メークはCHIHARUさん。舞台上では目元にキラキラする光るシャドー(のようなもの)を塗っていた。トートのビジュアルは見る人の好みがあるから、どれがいいかは一概に言えない。フィナーレのデュエット・ダンスでは久しぶりにリフトを披露。かちゃの身長が高いせいか、みほこさんの時のような軽々さはなかったものの見栄えはした。次回公演の思わせぶりなタイトルを考えると、今回のトートは「ルキーニ→エリザベート→トート」と3役を演じるあさこさんのヅカ生活の集大成になるのかもしれない。
綱渡りに失敗し、黄泉の世界に足を踏み入れそうになったエリザにトートが初めて出会い、その生気あふれるまなざしにひと目で恋に落ちる場面「愛と死の輪舞」では、あさこさんがかちゃの左肩に伸ばした指先(または指輪か爪)が、かちゃの鬘と絡んでしまい、歌の間中そのもつれを解こうとしていたが、二人とも全く動じたふうもなくごく自然に向き合っていた。幸い歌が終わる頃には絡みも解け、その後の展開はスムーズに運んだ。見ているこちらがヒヤヒヤした。
あさこさん、いくら3度目の「エリザ」とはいえ、自分のことだけでも精一杯だろうに、今回はかちゃエリザをもリードしなければならず、お稽古は相当ハードなものだっただろう。トップになればさまざまな重責を背負う。フィナーレの背負い羽根の重さは、あらゆるものをひっくるめた重さでもある。
話題作り その2
トップ娘役不在の月組で「エリザ」を上演するに当たり、ヒロインを他組のしかも中堅男役さんを抜擢したことが今回一番の目玉だった。かちゃ=凪七さんは、若手のホープであることは知っていたが、本公演ではまださほど通しで出番の多い役は演じたことがないし彼女のソロを聞いたこともない。新人公演やバウで主演を務めたこともない。そんなかちゃをこの大作のヒロインに抜擢したのだから、これはものすごい賭けだったはず。初日の幕が開いて約1週間。1回見ただけの私の感想は「優等生エリザ」。主演経験がない人がこれだけの大役を、しかも慣れない娘役を演じるわけだからかなり大変なはずだが、かちゃはそれを表に出さず(本人的にはかなり苦しみや葛藤はあっただろう。他組での客演も精神的にはキツイはず。)初の娘役とは思えぬほど落ち着いて堂々と演じていた。難曲「私だけに」も娘役経験がないのが信じられないくらい歌えていた。こうした姿が月組娘役陣にはどう映っていただろう?ただ「優等生エリザ」の香りがしてきて、私には今ひとつ面白味に欠けた。今後場数を踏めば、もっとわがままや弱い面を持った人間臭いエリザになれるのではないだろうか?彼女の身長があと5cm低ければ、入団当初から娘役一筋でいけたかもしれない。舞台姿からは、かちゃの真面目で誠実な、そして自分の分をわきまえて振舞える頭の良さが伺えた。人間的にも芯がしっかりしているのだろう。でないとあの若さで抜擢に応えることはできない。「エリザ」が終わればまた宙組に戻り、男役としてどんどん成長を遂げるのだろうか、それとも別の道を歩むのだろうか?
話題作り その3
役替わりルドルフの中でも一番人気はみりおさんだろう。私もみりルド狙いで今回のチケットを取ったからーーー。この役を演じるには今が旬のみりおさん。個人的には「役替わりしなくても全公演フルでみりおさんでーーー。」と思ってしまったが。今月号のグラフの表紙を飾り、新公ではトートを演じ、今月組いや歌劇団若手中堅男役の中で一番勢いのある人だと思う。台詞もはっきりしているし、歌もダンスもいい。この人のエリザ役も見たかった。第2部では同期のかちゃと親子を演じるのがちょっと不思議な感覚。あひるさん、もりえさんのルドルフを見ていないので何とも言えないが、「闇が広がる」ではあさこさんとの身長差がいいし、二人のハモリがきれいに響く。ルドルフは青年皇太子なので、瑞々しさのある人がいい。ただ番手も考慮しなければいけないから、今回の役替わりはやむをえない措置。
話題作り その4
こうした話題作りの陰で霞んでしまったのがきりやんフランツ。きりやんがフランツを演じると分かって時点で「ああ、きりやんならそつなくまとめてくるだろう。」と思っていた。そのそつなさと、数々の話題作りが、結果としてフランツの存在を薄くしてしまった。第1部が終わった時点で「あれー、きりやんどうだったけ?」とずっと頭に?がついていた。この印象の薄さはどうしてだろうと帰宅してから考えたのだが、結局きりやんの登場場面には常にかちゃエリザ、みりおルドがいて、私的にはきりやんよりもかちゃやみりおが気になってしまい、結果きりやんをほとんど見ないまま終わってしまった。きりやん、ごめんなさい。しかし若手の台頭で、きりやんは難しい位置にいるなと感じた。これはあひちゃんにも当てはまる。
話題作り その5
あいあいのゾフィー。「宮廷でただ一人の男」と言われるようには全く見えないし、きりやんの母と言うより、かろうじて姉と言ったところか?第1部第1場「プロローグ 死者と夢見人たちの夜の世界」では、霊魂であるゾフィー、ルドヴィカには歌でもっと締めてほしいところだが、キーが合わないのか二人ともほとんど声が聞こえてこなくて残念。しかしそれ以降は若い嫁に古いしきたりを叩き込もうとする(小)姑ぽさが出て来た。彼女なりの健闘が伝わってきた。第2部では加齢を表現するため白髪に加えて、額にしわも描いていたが、「千と千尋の神隠し」の湯婆婆そっくり。
フィナーレ、淑女姿でのダンス姿を見て、ようやくあいあい本来の(年相応の)美しさを見てホッとした。きっとあいあいもヒロイン系でない今回の役を、自分なりに工夫して頑張っているだろうが、ゾフィーはきりやんとの年齢差や「宮廷でただ一人の男」と言われて違和感を感じさせないためにも、専科の方の力を借りてもよかったのではないか?私はゾフィーというと東宝版の初風さんやいーちゃんのイメージが強い。黄昏ゆくハプスプルク家の存続を賭けて必死で生きた女性だから、ここはどっしりとしたベテランを起用してほしかった。
話題作り その6
3番手を通り越してまさおくんに振られたルキーニ。まだまだ手探り状態で、まさおくんのオリジナリティが充分発揮されているとは感じられなかったが、こちらもかちゃ同様、今後場数を踏むにつれ、もっと「行っちゃった感じ」が出てくるだろうし、それを見越しての今回の抜擢だと思うので、まさおくん、もっともっと弾けてください。第2部冒頭は派手に客席をいじってください。
長くなりそうなので、ここでひとまず区切りを。まだ書きたいことがあるので、次回に廻します。
別件:檀ちゃんが次回舞台を体調不良のため降板。「鉄分不足による貧血」が原因とのこと。早く回復され、1日も早く復帰されることを願っています。

話題作り その1
毎回宝塚の「エリザ」では、トートのビジュアルをどうするかが大きな関心の的。前回雪組では緑を基調とし、ミズさんは手の甲にタトゥーを入れ、鬘はストレートスタイルだった。今回は衣装デザイナーの有村先生があさこさんが紫が好きなことを覚えていて、紫を基調としたお衣装を作った。髪型はあさこさん自ら提案したドレッドヘア。赤メッシュは小池先生の要望とか。メークはCHIHARUさん。舞台上では目元にキラキラする光るシャドー(のようなもの)を塗っていた。トートのビジュアルは見る人の好みがあるから、どれがいいかは一概に言えない。フィナーレのデュエット・ダンスでは久しぶりにリフトを披露。かちゃの身長が高いせいか、みほこさんの時のような軽々さはなかったものの見栄えはした。次回公演の思わせぶりなタイトルを考えると、今回のトートは「ルキーニ→エリザベート→トート」と3役を演じるあさこさんのヅカ生活の集大成になるのかもしれない。
綱渡りに失敗し、黄泉の世界に足を踏み入れそうになったエリザにトートが初めて出会い、その生気あふれるまなざしにひと目で恋に落ちる場面「愛と死の輪舞」では、あさこさんがかちゃの左肩に伸ばした指先(または指輪か爪)が、かちゃの鬘と絡んでしまい、歌の間中そのもつれを解こうとしていたが、二人とも全く動じたふうもなくごく自然に向き合っていた。幸い歌が終わる頃には絡みも解け、その後の展開はスムーズに運んだ。見ているこちらがヒヤヒヤした。
あさこさん、いくら3度目の「エリザ」とはいえ、自分のことだけでも精一杯だろうに、今回はかちゃエリザをもリードしなければならず、お稽古は相当ハードなものだっただろう。トップになればさまざまな重責を背負う。フィナーレの背負い羽根の重さは、あらゆるものをひっくるめた重さでもある。
話題作り その2
トップ娘役不在の月組で「エリザ」を上演するに当たり、ヒロインを他組のしかも中堅男役さんを抜擢したことが今回一番の目玉だった。かちゃ=凪七さんは、若手のホープであることは知っていたが、本公演ではまださほど通しで出番の多い役は演じたことがないし彼女のソロを聞いたこともない。新人公演やバウで主演を務めたこともない。そんなかちゃをこの大作のヒロインに抜擢したのだから、これはものすごい賭けだったはず。初日の幕が開いて約1週間。1回見ただけの私の感想は「優等生エリザ」。主演経験がない人がこれだけの大役を、しかも慣れない娘役を演じるわけだからかなり大変なはずだが、かちゃはそれを表に出さず(本人的にはかなり苦しみや葛藤はあっただろう。他組での客演も精神的にはキツイはず。)初の娘役とは思えぬほど落ち着いて堂々と演じていた。難曲「私だけに」も娘役経験がないのが信じられないくらい歌えていた。こうした姿が月組娘役陣にはどう映っていただろう?ただ「優等生エリザ」の香りがしてきて、私には今ひとつ面白味に欠けた。今後場数を踏めば、もっとわがままや弱い面を持った人間臭いエリザになれるのではないだろうか?彼女の身長があと5cm低ければ、入団当初から娘役一筋でいけたかもしれない。舞台姿からは、かちゃの真面目で誠実な、そして自分の分をわきまえて振舞える頭の良さが伺えた。人間的にも芯がしっかりしているのだろう。でないとあの若さで抜擢に応えることはできない。「エリザ」が終わればまた宙組に戻り、男役としてどんどん成長を遂げるのだろうか、それとも別の道を歩むのだろうか?
話題作り その3
役替わりルドルフの中でも一番人気はみりおさんだろう。私もみりルド狙いで今回のチケットを取ったからーーー。この役を演じるには今が旬のみりおさん。個人的には「役替わりしなくても全公演フルでみりおさんでーーー。」と思ってしまったが。今月号のグラフの表紙を飾り、新公ではトートを演じ、今月組いや歌劇団若手中堅男役の中で一番勢いのある人だと思う。台詞もはっきりしているし、歌もダンスもいい。この人のエリザ役も見たかった。第2部では同期のかちゃと親子を演じるのがちょっと不思議な感覚。あひるさん、もりえさんのルドルフを見ていないので何とも言えないが、「闇が広がる」ではあさこさんとの身長差がいいし、二人のハモリがきれいに響く。ルドルフは青年皇太子なので、瑞々しさのある人がいい。ただ番手も考慮しなければいけないから、今回の役替わりはやむをえない措置。
話題作り その4
こうした話題作りの陰で霞んでしまったのがきりやんフランツ。きりやんがフランツを演じると分かって時点で「ああ、きりやんならそつなくまとめてくるだろう。」と思っていた。そのそつなさと、数々の話題作りが、結果としてフランツの存在を薄くしてしまった。第1部が終わった時点で「あれー、きりやんどうだったけ?」とずっと頭に?がついていた。この印象の薄さはどうしてだろうと帰宅してから考えたのだが、結局きりやんの登場場面には常にかちゃエリザ、みりおルドがいて、私的にはきりやんよりもかちゃやみりおが気になってしまい、結果きりやんをほとんど見ないまま終わってしまった。きりやん、ごめんなさい。しかし若手の台頭で、きりやんは難しい位置にいるなと感じた。これはあひちゃんにも当てはまる。
話題作り その5
あいあいのゾフィー。「宮廷でただ一人の男」と言われるようには全く見えないし、きりやんの母と言うより、かろうじて姉と言ったところか?第1部第1場「プロローグ 死者と夢見人たちの夜の世界」では、霊魂であるゾフィー、ルドヴィカには歌でもっと締めてほしいところだが、キーが合わないのか二人ともほとんど声が聞こえてこなくて残念。しかしそれ以降は若い嫁に古いしきたりを叩き込もうとする(小)姑ぽさが出て来た。彼女なりの健闘が伝わってきた。第2部では加齢を表現するため白髪に加えて、額にしわも描いていたが、「千と千尋の神隠し」の湯婆婆そっくり。
フィナーレ、淑女姿でのダンス姿を見て、ようやくあいあい本来の(年相応の)美しさを見てホッとした。きっとあいあいもヒロイン系でない今回の役を、自分なりに工夫して頑張っているだろうが、ゾフィーはきりやんとの年齢差や「宮廷でただ一人の男」と言われて違和感を感じさせないためにも、専科の方の力を借りてもよかったのではないか?私はゾフィーというと東宝版の初風さんやいーちゃんのイメージが強い。黄昏ゆくハプスプルク家の存続を賭けて必死で生きた女性だから、ここはどっしりとしたベテランを起用してほしかった。
話題作り その6
3番手を通り越してまさおくんに振られたルキーニ。まだまだ手探り状態で、まさおくんのオリジナリティが充分発揮されているとは感じられなかったが、こちらもかちゃ同様、今後場数を踏むにつれ、もっと「行っちゃった感じ」が出てくるだろうし、それを見越しての今回の抜擢だと思うので、まさおくん、もっともっと弾けてください。第2部冒頭は派手に客席をいじってください。
長くなりそうなので、ここでひとまず区切りを。まだ書きたいことがあるので、次回に廻します。
別件:檀ちゃんが次回舞台を体調不良のため降板。「鉄分不足による貧血」が原因とのこと。早く回復され、1日も早く復帰されることを願っています。
お疲れをものともせず、『エリザベート』のレポ、見事です~
あちこちで聞こえてくるうわさ話が、ああ、ホントにそうなんだなぁと納得できました。こうなると、早く観たい!との想いが強くなります。まだ宙組も始まっていないのに(汗)
・・・劇団の話題作りは、結果として成功したんですね、きっと。
私、城咲さんのあの気の強そうな外見(失礼!中身は知りません)がわりと好みなので、エリザベートがよかった~と今でも思っています。凪七さん、難しいところ、がんばってらっしゃるのですね。私もムラに行きたくなってきました(笑)