知人との昼食会があって、何年ぶりかで阿賀野川を越えた。
刈り入れ前の稲穂の匂いも爽やかな秋晴れで快適なドライブだったが、
それにしても町の景色の変わり様にはビックリし通しで、
わずか3・4年の間の変貌ぶりには感慨深いものがある。
大河・阿賀野川の河口に架かる橋に「横雲(おううん)」という名の橋があって、
(渡ったのはバイパスに出来た新・横雲橋だが)
これよりさらに河口近くに架かる橋に「泰平橋」というのがあるんですが、
「天下泰平」から採ったらしいその名前に比べて、
「横雲」という名には昔から、なにやらみやびな趣を感じていた。
新古今和歌集の中の、有名な定家の和歌
春の夜の夢の浮橋とだえして 峰に別るる横雲の空
”艶っぽい夢から覚めてみれば、峰には朝日を浴びた美しい雲がかかっている”
(途絶えるが別れに繋っている、なかなか色っぽい歌)
を思い出すからです。
新潟平野を流れるもうひとつの大河・信濃川に架かる橋の名は、
まず有名なのが万代橋。
千代・八千代、そして万代に亘って永らえるようにとの思いをこめられた名前で、
この橋の上流に架かる橋を八千代橋という。
そのまた上流には昭和橋。
昭和に造られたからという、味も素っ気もない名で、
これは新潟地震であっさりと崩壊したので有名になった。
最近万代橋の下流に、もう一本出来た橋があって、公募で決まった名が柳都大橋。
新潟が柳の都といわれている処から名付けられたので、
よその国の人はしらないだろうが、新潟には大きな堀が二本通っていて、
そのひとつ西堀沿い南北約2kmにわたってお寺が立ち並んでいる。
その門前に、人間界と幽界の結界の象徴である柳がサワサワと揺れている。
さらに、かつて港町だった新潟は、花柳界も盛隆をきわめ、
柳は色街との結界をも象徴する樹でもありますから、
それで新潟を新潟人は誇りをもって柳の都と言うのですね。
今花柳界の面影はほとんどなくなってしまいましたが・・・
横雲橋の名前の由来の話だった・・・
公共建造物の名前の付け方として一般的なのが、地名の組み合わせでしょう。
道路の場合よくあるのが、起点と終点の地名を一字づつとって付けるもの。
たとえば新潟の紫鳥線というのは、紫竹と鳥屋野の頭の二文字をとっている、というように。
すると「横雲」もそうなるのだろうか。
横は横越から採ったものとして、川向に雲の付いた地名があるということか。
雲井とか雲和田とか・・・たぶんその可能性が高いんでしょう。
橋の名前を「新古今」の和歌から採るなんて、
そんな粋なこと、お役所がしそうもないですしね。
でも川面に朝霧が流れ、五頭連峰を望む朝焼けは奇麗なところでしょうから、
もしかするとってことは有り得ますが・・・・