http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/snk20140128096.html
2014年1月28日(火)08:02
(産経新聞)
安倍晋三首相は27日夜、3日間のインド訪問を終え、政府専用機で羽田空港に帰国した。首脳会談では経済協力などを推進する共同声明を発表したが、親日国・インドへの訪問には、首相が安全保障戦略の柱に据える日本と中東を結ぶシーレーン(海上交通路)の安全確保を盤石にする狙いもあった。(峯匡孝)
「最大の民主主義国であるインド最大の行事に主賓として招かれた。日印関係にとって画期的なことだ」
首相は名実ともにインドが独立国となったことを祝う26日の「共和国記念日」式典出席後、記者団にこう訪問の意義を強調した。
インドは毎年式典に各国首脳らを招待する。約10年トップに立ち、今年の総選挙(下院選)で退任意向を表明したシン首相が最後の年に1人だけ招いたのが安倍首相で、「両首相の非常に強い信頼関係と友情の表れ」(同行筋)となった。
だが、友好関係の促進だけが目的ではなかった。海空戦闘能力を増強する中国軍の積極的な進出は東、南シナ海を含む西太平洋にとどまらない。インド洋周辺のパキスタンやスリランカなどで軍事利用を視野に港湾整備を支援する「真珠の首飾り戦略」で遠方への戦力展開能力を強めている。
日本政府は昨年12月決定の国家安全保障戦略で「地政学的にも重要なインドとは海洋安全保障をはじめ幅広い分野で関係を強化する」と位置付けた。
安倍首相も第2次政権の1年余りでシーレーン沿岸国の東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国や中東の湾岸協力会議(GCC)6カ国を全て訪問。「シーレーン戦略外交」で最後に残っていたのがインドだった。
25日の日印首脳会談では海上自衛隊と印海軍の共同訓練の継続も確認した。平成24年6月の初訓練は基礎的な艦隊行動の連携に重点が置かれたが、昨年12月は対水上射撃や対潜水艦戦といった実戦を想定した訓練に格上げされた。
集団的自衛権の行使が自衛隊に認められない中、日印連携には限界があるが、海自の潜水艦索敵能力などを印海軍が習得し、シーレーンの抑止力が高まれば日印両国の国益に合致する。
インドは中国との経済的な関係も深めているが、同行筋によると、中国への脅威認識は「日本と変わらないように映った」という。国際秩序の構築に主導的な役割を果たしていく安倍首相の「積極的平和主義」は、インドでも受容されたようだ。