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2013年1月5日(土)7時0分配信 NEWSポストセブン
大手家電メーカーの苦境が伝えられるなか、あらゆる要求に応えてきた技術力をもとに、頑張る町工場を紹介しよう。金型とプレス加工を主体とした金属加工メーカーの三進製作所(東京都墨田区)は、企業ではなく個人、しかも1個からの注文でも応じている。
同社の丁官(ちょうかん)一郎・代表取締役が説明する。
「うちは大手メーカーの2次下請けとして、パソコン、携帯電話、デジタルカメラの電子部品や、自動車の電装部品などを作っていました。でも、20年ほど前から海外に仕事を奪われ、新たな仕事を見つけなければならなくなった。そこで、7~8年前にホームページを立ち上げ、1個からの注文にも応えるようにしたのです。すると、意外に個人からのニーズがあることがわかりました」
同社ではこれまでハンドメイドの自転車部品やモデルガンのパーツ、ゴルフのグリーンフォークを飾る部品などを作ってきた。中には、デスクトップパソコンをある有名キャラクターの形にカスタマイズしてほしいという注文や、個人がネットで売るためのアクセサリーを装飾する金属部品を作ってほしいという注文もあった。
「個人からの仕事は勉強になるんです。図面通り作ればいい従来の仕事と違って、図面もなく現物だけを見せられて、これと同じものをつくってくれといわれることもあります。最初は苦労しますが、2~3回やるとある程度できるようになる。ものづくりの根本が学び直せました。自社にない設備の加工が必要な注文でも、同じ墨田区の町工場の協力を得て対応しています」(丁官氏)
今やネットを通じて新たに獲得した顧客(中小企業を含む)の仕事は、同社の売り上げの4~5割を占めるようになった。
「昔は『うちは大手メーカーの下請けをやっている』と自慢する町工場がたくさんあった。そういうプライドだけで仕事をしているところは今では潰れてしまっています。どんなに大手の仕事をしていても、仕事がなければ意味がない。個人の仕事を受けて生き残る方がいいに決まっています」(丁官氏)
※週刊ポスト2013年1月18日号