徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

朝の月、世界と舞台の隙間にて 16

2020-05-06 09:49:16 | 小説





 本文詳細↓



 「ナイトウォーカー。僕はずっとあなたに会いたかったんです。あなたが何者で、どうしてあの日僕にあんなことを言い残したのか、あなたは普段どこで何をしているのか、何が好きで、何が嫌いなのか、聞きたいことがたくさんあって、同時に僕のことも知ってほしいと思っていました。
 ……もしあなたが何か困っているなら、助けになりたいとも、思っていました」
 「なら、どうして英雄にならないなんて言うの?」
 「……すみません。英雄になるなんて大それたこと、僕は望んでいなかったし、そのつもりでも生きてこなかったから」
 情けないと誹る声が聞こえてきそうだけど、人生を左右する選択の場面において、『できる自信はないけれどやってみる』ことを選ぶ勇気は僕になかった。
 「僕たち人間は、誰もが自分の信じる世界の中で生きています。物理的な世界が本物か偽物かなんて関係なく。たとえば、故郷にいた頃の僕の世界に、ケ・セルの山に閉じ込められた一族なんていなかったように。そんなもんです。僕らは僕ら一人ひとりの目で見て感じる世界を、世界の全てだと信じて生きている。そんな人々にこの真実を告げ、本当の自由への解放を目指して戦うなんて……。そういう『英雄』は、運命に望まれるんじゃなくて、人々に望まれて現れるんです。かつてのイルミナリスがそうだったはずです。人間を救ってくれる誰かが望まれ、彼は人間を救うために奔走し、実現させた。


コメント
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