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「ナイトウォーカー。僕はずっとあなたに会いたかったんです。あなたが何者で、どうしてあの日僕にあんなことを言い残したのか、あなたは普段どこで何をしているのか、何が好きで、何が嫌いなのか、聞きたいことがたくさんあって、同時に僕のことも知ってほしいと思っていました。
……もしあなたが何か困っているなら、助けになりたいとも、思っていました」
「なら、どうして英雄にならないなんて言うの?」
「……すみません。英雄になるなんて大それたこと、僕は望んでいなかったし、そのつもりでも生きてこなかったから」
情けないと誹る声が聞こえてきそうだけど、人生を左右する選択の場面において、『できる自信はないけれどやってみる』ことを選ぶ勇気は僕になかった。
「僕たち人間は、誰もが自分の信じる世界の中で生きています。物理的な世界が本物か偽物かなんて関係なく。たとえば、故郷にいた頃の僕の世界に、ケ・セルの山に閉じ込められた一族なんていなかったように。そんなもんです。僕らは僕ら一人ひとりの目で見て感じる世界を、世界の全てだと信じて生きている。そんな人々にこの真実を告げ、本当の自由への解放を目指して戦うなんて……。そういう『英雄』は、運命に望まれるんじゃなくて、人々に望まれて現れるんです。かつてのイルミナリスがそうだったはずです。人間を救ってくれる誰かが望まれ、彼は人間を救うために奔走し、実現させた。