ゴルコサーティーワン!その激闘の記録!

この世界は・・・
”チキン”だけが”生き残る資格”
を持っている・・・

第24話 ビター・ブラック後編

2008-09-12 17:42:19 | 第24話 ビター・ブラック
第4章 そして脱出。


2008.09.14(日)

 バスの出発は0830時だ。オフィスが開くのは0700時と朝早い。
 しかし治安の安全なドミニカ共和国を1100時に出発して夕方ハイチ着、そして治安の悪いハイチを朝0830時に出発してドミニカ共和国へは1600時頃着とはどうかんがえても襲われやすいスケジュールだ。これが逆なら分かるが・・・

 オフィスの開く時間ぴったりにいっても早すぎるだろうと私は0730時にオフィスに到着。

 だがオフィスはしまっている。

 『はぁぁぁぁ~・・・』


 サントドミンゴではきっちりと運行されていたこのバス、国が変わればスタンダードも変る。そういえば西や中央アフリカではよく「朝0600時に来い」と言われてその時間にいくとそこから延々とまたされて出発したのが5時間後なんてのもざらだったが、ハイチに入るとこのしっかりとした旅行会社であっても「黒人国家スタンダード」で動くのか?

 そんな事を考えていると0800時になってオフィスがオープンする。

 1時間遅れ・・・

 まあいいだろう、私がチケットオフィスに入り、壁にかかっている時計を見るとなにやらおかしい。

 『んっ・・・・?』


 そこには2つの時計、そしてハイチとドミニカ共和国の間には1時間の差が・・・


 『・・・』



 『・・・・・・』


 『まっ、まさか・・・こんな・・・大きいと言っても所詮は九州に四国を足してすこし増やした程度のこの島で・・・』


 『国が二つあるからと言って時差を設けるなんて・・・』


 『なんだっ!なんのPRだ!!こんな小さな島で時差を設けて“俺の国はお前とは違う”と言いたいのか??』


 幸いにして私は時刻遅いほうに間違えていたので一時間余分に待つだけで済んだが・・・


 『はぁぁぁぁ~・・・馬鹿の考えることはわからん・・・』


 ここでバス会社のオフィスでチェックインする時にもう一つ気付いたことがある。

 彼等は国境での手数料として当初聞いていたのとは違う「15USドルと100グル」を請求してきたのだが・・・

 確か日本人にはドミニカ入国の際のツーリストカードは不要で料金はかからない筈だ。

 それに行きでもそうだったがレシートも何も貰っていないから払っている金額が正当なのか?手数料が上乗せされているのかが分からない。

 往路は治安の悪いハイチに入国すると言うことでナーバスになっていたのでお任せにしたが・・・ここは確認するひつようがあるだろう。

 私はオフィスに「日本人はドミニカ共和国入国に費用はかからない事を告げ、国境で確認する必要がある」と告げるとオフィスは私にお金を返して、じゃあ国境でと言うことになる。

 これが乗り込んだバス。


 バスは順調にすすみ国境へは1030時に到着

 バスのスタッフが私のところに来て「ハイチの出国税が10ドルと100グルかかる」と告げる。

 支払わない理由は無い。彼女に料金を手渡す。

 そして「ドミニカ入国にはツーリストカード代が10ドルかかるからそれも今支払ってくれる?」と聞いてきた。

 その際に私は彼女にこう告げた。

『ドミニカへの入国は日本人はツーリストカード不要だから料金は必要ないよ』

と。

 彼女も私の説明に一応は納得したようだが、そもそもこのバスに日本人の利用者など乗ることがあっても稀だ。彼女がそれを知らなくても別に非難には値しないし尤もなことだろう。
 ちょっとおかしく感じたのは最初にオフィスで言われた金額は15ドルに100グルだがこうして分割して払うと20ドルに100グルとなるのは不思議だ。やはり賄賂絡みなのだろうか??
 まあでもハイチの出国に賄賂があったとしてもドミニカの入国がタダなら請求額よりは5ドル安くなるからそれはそれでいいのだろう。

 彼女は私に「じゃあドミニカのイミグレで確認してね」と言ってその場は終わりになる。

 しかし出国手続きもバス会社任せだ。私は顔をパスポートを照合され、後はそのスタッフにパスポートを返すからバスに戻ってくれということだ。

 おそらく手続きだけしてそのバスに乗らずに勝手な所に行かれるのが怖いからだと思うが、旅行者としてはパスポートが手元から離れている瞬間はなんとも嫌な気分だ。

 出国手続きを難なく終え、ドミニカ共和国のイミグレへ向かう。

 パスポートは一度乗客達に返されている。

 ドミニカとの国境付近のマーケット、相変わらず水浸し
 

 私はパスポートを持ってイミグレの列に並ぶ、

 バスのスタッフであるハイチ人の若い女性はイミグレの中で乗客リストを係りに見せているようだ。

 私の番が来て私は残りページの少なくなってきたパスポートのページを開いて『ここにスタンプを』と告げる。
 
 彼等は私のパスポートを見せ、なにやらそこの偉い人にすこし相談した後で「問題ないよ」と告げてくる。

 お金の話は出ていない。ということはもう払わなくていいだろう・・・

 私は特に『タダだよね~』と念押しすることも無く、彼らが「パスポートはバスのスタッフに渡してバスで返すよ」と言ってきたのでバスに戻ることにする。

 国境の風景
 


 いずれにしてもドミニカ共和国に帰ってきたのだ、セーフティーゾーンにいるからもう安心だ・・・

 後はパスポートが帰ってきたら一息つけるだろう・・・


 手続きは意外に長く、一時間ぐらいたってからだろうか?バスに乗客が戻り、そしてスタッフが帰ってきて出発となる。

 『ふぅ・・・』


 後はスタッフが私にパスポートを戻せば終わり・・・


 『んっ?』


 スタッフの女性が私の所に一直線にやってくる。

 そしてスペイン語で私を非難するようにこう言い始めたのだ!


 「あなたっ!ドミニカ入国にお金がかかって私が10ドル建て替えたのよ!!」


 『えぇっ!!』


 『私は言ったでしょう、日本人には入国カードが必要ないから料金もかからないって・・・』


 「あなたはそれを確認したの??」

 確かに・・・念を押すことはしなかったから確認はしていない。だがドミニカに最初に入国した時に空港にでかでかと看板があり、そこにツーリストカード不要な国として日本もばっちり書かれていたのだ。ガイドブックにも不要とかかれているし外務省のホームページにも不要とかかれている・・・

 私は抗弁をする

 以下“D” 『確かにきちんと確認しなかったが・・・でも不要なのは確かなんだ・・・』

 バスのスタッフ:以下“ス”「でも私が代わりに払わされたのよ」

D 『なんで払ったの??』

ス 「彼等は料金を請求してきたわ、10ドル必要なんでしょう、支払ってよ・・・」

D 『領収書は?ツーリストカードは?あれば払うよ!!』

ス 「無いわよ、イミグレでそのまま回収されているわよ!!」

 そう言えばバスに乗る前にたまたま仕事でハイチに訪れたフランス人と話し、彼に聞いたらフランス人はツーリスト・カードがいるから空港で買わされたが、それも入国審査官に渡すので実際にカードを持つわけではないと言っていたのだ・・・

 しかし、いままで周った国で国境で料金がかかるならそれに基づく領収証が必ず出る筈だし、そもそもレシートが出ても回収されるなんて払った人間にはそれが適切な物なのかどうかも分かりようがないだろう。

 こんな馬鹿げた話はない・・・


 『はぁぁぁぁ・・・』


 言いたいことはまだある、彼女は何故払えと言われた時に私を呼ばなかったのか?そうすれば払う事になったとしても私は納得できただろう。人が必要ないと説明し、彼女も理屈は理解していた筈だ。

 それをわざわざバスが出発して、もう戻れなくなってから人を非難するように言ってくるなんて・・・

 言っておくが10ドル支払うというのはたいしたことではない、気に入らないのはそれが正当でないと思えるからこうも抗弁するのだ。



 だが・・・


 確かにイミグレで『タダだよね』とダメ押ししなかった私にも問題が無かったとはいえない。彼女の剣幕から言って彼女が払ったと言うのは信用できる。そしてそれ以上に私の拙いスペイン語では相手が分かるようにきちんと筋道だてて理屈を説明するのは無理だ・・・



 私は彼女にこう告げる。

D 『分かった。10ドルは出す、だけどパスポートを今すぐ返してくれ』

ス 「他の乗客と一緒に後でまとめて・・・」

D 『それならばその時払う、でも今人に支払えと言うならパスポートと交換だ』

 彼女はやるせないといった表情を見せ、パスポートを持ってきて私に返す。

 私はもう一度『日本人には入国時にツーリストカードは必要ないんだけどね』と言って10ドルと引き換えにパスポートを受け取る。

 想像通り、そこにあるのは入国スタンプだけで支払いの証明もツーリストカードも無い・・・

 実際に陸路の場合は空路と違ってなにがしかのお金が必要なのかもしれないが・・・

 これではその証明もしようがない、ハイチを出国し、ドミニカ共和国に帰ってきた私だが・・・


 なんとも後味の悪い帰国であった・・・




エピローグ


 世界最初の黒人共和国ハイチ・・・


 私にとっては別に良いも悪いも無い。


 不釣合いに立派な建物があるのに、脆弱なインフラ。
 街をあるけば「シノワ・シノワ」と侮辱され・・・


 そして国境でのごたごた・・・


 今から話すことの前に予め言っておくが私は別に人種差別主義者ではない、

 私には「白も黒も黄色も関係ない」。

 ただ私にとって気になるのは「彼らがボッてくるか来ないか」それだけだが・・・

 だが、私はおそらく他の旅行者よりも遥かに多くの黒人国家を見てきている。
 そして黒人国家を訪れた後はいつも決まってこういった感傷になってしまう事を止められないのも否めない事実だ・・・







 黒人の国だけに・・・






 「苦々(にがぁにがぁ)しい思い出だけだった・・・」




 と・・・



最新の画像もっと見る