白鳥座61番星 瀬川昌男

2006-07-07 23:54:16 | 天文・天文学
七夕の夜ですから、わたしのとっておきの本をご紹介します。
ただし、この本は入手不可能ではないかと思います。 わたしが持っているのは昭和35年版東都書房から出版され、当時¥200でした。

右側の画像をクリックしてご覧になってください。
これが、織姫/彦星の七夕物語の舞台です。
天の川の真ん中、やや左寄りにかかっている はくちょう座は、銀河鉄道では「北十字」として登場しましたね。
北十字をひっくり返して、長い首を持った白鳥が飛んでいる姿に見立てたのが はくちょう座です。
織姫星は天の川の上のほう、こと座の1等星でヴェガ、彦星は天の川の右下、わし座の一等星でアルタイルと呼ばれています。 かささぎの橋は白鳥座の羽根の部分なんですよ。

地球からの距離は織姫星が26.5光年、彦星が16.5光年ですが、問題はこのふたつの星の距離でしょう。 16光年ほど離れています。 光の速さで16年かかる距離。 
織り姫と彦星が天の川の向こうとこっちで見つめ合ったとき、実は16年前の姿を見ていることになります。 う~ん・・・


物語は遠い未来、31世紀。
人類は25世紀頃から、銀河系の星々に移民を始めていました。 ところが織女星の第5惑星トレモでは地震や火山活動が頻発して人間が住むには不適当な状態になったため、他の星系に移住することになりました。
12歳の少女ルミノと感情を持ったロボット少年プピが向かった先は はくちょう座61番星の惑星アリス。
さて、16光年離れた牽牛星の惑星アグロを出発した「空間人」の宇宙船では、10歳の密航少年が見つかります。 ミツオでした。
空間人とは、各星系に散らばった移民たちに地球の最新のテクノロジーや文化を伝達する役目を持つ宇宙の船乗りたちです。
ミツオは空間人の仲間となって、はくちょう座61番星に向かうことになります。

織り姫星と彦星から2機の宇宙船が、かささぎの橋のすぐそばにある星に向かって飛んでいく、という七夕にふさわしい物語なのですが、ふたつの宇宙船が着いた白鳥座61番星の惑星アリスでは独裁者による圧政が敷かれていて、織女星から移住しようとした人々は捉えられてしまいます。
この星で巡り会ったミツオとルミノとロボット少年プピは、独裁者と戦うために立ち上がるのでした。

この物語はたいへんよくできていて、大人になった今でも十分に楽しめる本です。 ロボットと人間、冷凍睡眠、脳間通信、相対性理論による時間の遅れ、さまざまな要素が含まれていながらひたすら楽しく読むことが出来ます。
物語の最後に、ミツオとルミノは実は兄と妹だったという落ちまでついていて、16光年も離れた星に暮らしていたふたりが、兄妹であるというパラドックスにはほんとうに驚かされました。

といっても、この本は地球上に100冊も残っていないかも、というレアものですので、本屋でどうぞとは言えないのがとても残念です。
復刻版が出たらいいんですけれどね。 たのみこむに言ってみようかな。



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2 コメント

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心に残る小説 (泊瀬光延)
2015-03-30 02:17:03
私も少年の頃この小説に熱狂しました。瀬川さんにファンレターを出したら丁寧なお返事を貰いました。そこには特殊相対性理論を駆使して航行中の時間と残された人達の時間を計算することが大変だったと書かれていたと記憶してます。既にそれから数10年経ち内容は忘れてしまいましたが、広大な宇宙空間を恒星から恒星へと旅行する自分と想像を絶する光景を夢見る自分が出来ました。カール・セーガン博士の「コスモス」を見て、ああこの人も僕たちと同じ夢を見ていたんだと思いました。
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Unknown (さくらじかん)
2019-09-27 12:11:20
『白鳥座61番星』。
懐かしい~
小学生のころ、図書館で見て、忘れられないタイトルです。
わたしには難しかったのですが、冬眠して遠い星に行くということが忘れられず、ずっと後で赤木かんこさんの「本の探偵」に聞こうかと思ったこともあります。しかし日本の物語だということも知らなかった。よほど小さかったんですね。最初が新聞小説とは。しかもそれほど知られた小説とは思っていませんでした。大阪なので国際児童文学館で見てみようと思います。 kumiko
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