源氏物語の男たち(6) 藤原惟光(ふじわらのこれみつ)

2009-03-24 23:26:16 | 源氏物語
天つかぜ雲の通ひ路吹きとぢよ をとめの姿しばしとどめむ (僧正遍昭)

さあ、クイズです。をとめとは誰のことでしょうか。
そうそう天女のことですね、でも僧正遍昭はどこで天女を見たのでしょうか。

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藤原惟光(ふじわらのこれみつ)は光源氏の家来です。源氏物語の初めのほうにはちょくちょく登場していました。
夕顔の巻では、光源氏と夕顔を引き合わせるために暗躍し、夕顔が急死した時には光源氏の代わりに葬儀一切を行っています。

源氏の君が惟光をそこまで信用したのは、惟光が乳母子(めのとご)だったからだと思います。
この二人の会話は、主人と家来というよりも兄弟に近いニュアンスで、惟光は敬語こそ使っていますが
光源氏にずけずけと物言いをしているからおかしい。

しかし惟光が物語に登場するのは須磨・明石の巻あたりまで。
その後はほとんど顔を出しません。
いえね、逃げ出したわけではなくて、彼は地方官(受領)として都を離れていたのです。
家来といっても惟光は中流の貴族です。 そのうえ光源氏の引きがありましたから参議という職にまで出世しました。
こうやって書き出してみると、惟光は実に運の強い人だと感じます。

物語の中盤に入ってから、惟光は再登場いたします。
それは「乙女の巻」で、惟光の秘蔵っ娘が五節の舞姫に選ばれたときでした。

源氏物語にはふたりの五節の舞姫が登場します。
ひとりは光源氏が思いを寄せた筑紫の五節と呼ばれる舞姫、もうひとりが惟光の娘で、夕霧が恋心を抱いた舞姫です。

夕顔は葵の上の忘れ形見で、光源氏の長男。 当時の夕霧は失恋の身でした。
そんな折りに五節の舞を見た彼は、憂鬱な気持ちを胸に秘めながらも、惟光の美しい娘に恋をしたのです。
彼はラブレター(恋歌)を詠んで惟光の娘に贈ります。

大事な娘にラブレターが来たことを知った惟光はかんかんに怒りましたが、それが夕霧からのものだと知ると急に笑顔になります。
五節の舞姫に選ばれた娘たちは宮中へ出仕しなければいけない決まりがあって、惟光は気が進まなかったのです。
宮中へ入ったら惟光の目が届きませんから、悪い虫が(宮中へ出入りする貴公子たち)ついても追い払うことができない。

光源氏の息子夕霧はいずれは大臣になろうお方、彼の夫人になることは娘の幸福だ。 出仕なんてくそくらえ。
惟光はそう思い、それを彼の妻に言いました。

惟光の娘、藤尚侍(とう・ないしのすけ)は夕霧の三人の夫人のひとりとなります。
身分には限りがあったので、雲居の雁(頭中将の姫君)、落穂の宮(朱雀帝の女二宮)に次ぐ第三夫人でしたが、
当時のものさしで計れば、素晴らしく幸運な女性と噂されたことでしょう。

惟光が他界した後のことになりますが、彼の孫娘(夕霧の六の君)は匂宮の正室になりました。
宇治十条をお読みになるとわかりますが、匂宮は次の皇太子候補なのです。
ということは惟光の孫娘は帝の妃が約束されている女性。
藤原惟光は明石の君の父、明石の入道に匹敵する幸運な男だったと言えます。

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というわけで、天つかぜ雲の通ひ路・・・の をとめは五節の舞姫、が正解です。
これならば、宮中の行事に招かれた僧正も天女を拝むことができたでしょうね。

五節の舞姫については、故障中のDoblogにも書いたことがあったので、興味がございましたらご覧くださいませ。
■GENJI雑感 五節の舞姫

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2 コメント

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Unknown (隼のママ)
2009-03-26 00:15:05
惟光さんは私の中では 源氏にズケズケ物の言える忠実なワンコのイメージです。

惟光さんは受領として赴任していたのですね。
源氏物語を読んでいたのは随分昔なので色々忘れている事が多いです。
また読み返さないと・・・

例の源氏物語はちょっと私には読みにくい代物でした
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☆隼のママちゃま (デュエット)
2009-03-26 01:27:35
いつもコメントをありがとうございます。
例の源氏って、外人さんが書いたアレ?
たしかに読みにくいけど、その違和感が新鮮って感じでした。
読みやすいのは円地文子かなぁ・・・

>>惟光さんは私の中では 源氏にズケズケ物の言える忠実なワンコのイメージです。
なんて的確な!!

源氏物語は5年に1回くらい読み直しています。
忘れちゃうんですよね~~(笑)
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