赤毛の少女が見た夢のはなし
作 / nana℃
赤毛の少女が見た夢のはなし
ママ譲りの赤毛と
ちいさなソバカスは
あたしのIdentityだと
おじさんは
言いました
足が誰よりも
長いことが
おじさんのIdentityだそうです
おじさんは
あたしに
絵本を買ってくれました
青や緑や赤の世界で
生きる
ある動物のお話です
おじさんは
あたしに
洋服を買ってくれました
赤やピンクや紺色の
あたたかい洋服です
おじさんは
あたしに
学校に行くように
言いました
あたしは
おじさんがくれた
帽子をかぶり
リュックを背負い
見慣れた通学路を
あたしは
おじさんと歩きました
おじさんの手は
とても
おおきかったように思います
おじさんと
眺めた夕焼けや
星空や木々の紅葉
海の雫や
青い石や
白い砂浜は
今でも忘れることが
できません
おじさんはあるひ
さよならを
告げにきたと言いました
あたしには
さよならの意味が
まだわかりませんでした
おじさんは
いくつかの数字を書いて
なにかあったら
連絡するようにと
言いました
並んでいる
いくつかの数字は
それだけで
意味をなし
あたしを
安心させました
世界にひとつだけしかない
数字のひとつひとつが
つながって
数式という
目に見える答が
できあがるのだと
おじさんは
誇らしげにいいました
あたしは
数字が
大好きになりました
おじさんが
あたしに
会いに来てくれることは
ありませんでした
ただ
一年に数回
あたしの誕生日や
Christmasに
ちいさなポストカードが
届くだけ
あたしと
おじさんとのつながりは
それだけでした
あたしは
郵便やさんに
恋をしました
彼とバイクで
いろいろなところへ
行きました
綺麗な風景を
いくつも
みました
あたしは
おじさんのことを
思っていました
雨の日も
風のつよい夜も
まぶしい朝も
おじさんが
迎えにきてくれるのでは
ないかと
淡い期待を抱いていたのです
さよならは
言いませんでした
あたしと
おじさんには
必要ない
言葉
意味のない
言葉のように
思います
時々
思うのです
なぜ
おじさんは
あたしを
助けてくれたのでしょうか
なぜ
あたしと
手をつないで
くれたのでしょうか
あたしは
わすれたくないから
今日も
影を見つめます
長く
とても
長く
あの日の夕闇に
向かって
伸びていく
赤毛の少女が見た夢のはなし
あの長い影を
連れて
今日も
空を仰いでいます
プロフィール
名前:魔女っこ kirara・*★
性別:女性
現住所:大阪府
誕生日:09月22日
自己紹介:nana℃(ななど)といいます。
小説、脚本、音楽関係のお仕事などをしています。
一口メモ
現在、mixiの大人気者。nana℃さんの短編小説『ふたり』が、アメーバーブログで連載中です。とても、nana℃さんの作品の完成度は高く“人の心や魂の叫び”を訴える感動作品です。ぜひみなさん応援してくださいね。
http://ameblo.jp/phoenix720/
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一口メモ
宇多田ヒカルというと、1stアルバムの『First Love』が、いきなり国内外で約1000万の超メガヒットになる売り上げをし、彼女がそれをきっかけに日本の音楽業界で神話的な存在になり、日本の音楽史上歴代1位のとなる超スーパースターになったことは、あまりにも有名な話です。しかし、彼女の本当の才能を開花させる基本は、彼女自身が幼い頃からアメリカンスクールに通い、唯一世界に通用する歌や映画づくりやショービジネスの本場であるアメリカで生活していた、“帰国子女”であったということではないでしょうか。そして、それが世界の音楽市場の厚い壁を突き破ると同時に、日本での“R&B”の彼女独特の“音楽の世界”を生み出し、超スーパースター「宇多田ヒカル」という、日本一のブランド名が創りあげられる、大きな要素になっているような気がします。
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