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draw_or_die

everything will be worthy but cloudy

風邪ひいた、死にそう、っていうか死ぬ

2008-10-11 16:26:57 | 最近読んだ本
・「スロー・リバー」/ニコラ・グリフィス

 未来の生活用水循環システムを開発し、莫大な利権を持っている一族のローア。彼女は今、誘拐犯から逃れて裸で放り出されていた。手のひらのIDチップも外されてしまって、自分の身分さえも失っているところを助けてくれたのは、女ハッカーのスパナー。彼女はしばらくスパナーのハッカーの仕事を手伝っていたのだが、ある理由によって離別し、一人で自立していこうと考えるようになる。
 こうして新しいIDを手に入れるためにあまり仲の良くないスパナーを再び訪れ、街の下水処理場で働き始める彼女の新しい人生が始まるのである。

 別にひどいことをされた誘拐犯に対して復讐してやろうとかそういう気負いはなくて、あくまで環境の変化に伴う「新しい生活をエンジョイする」が主軸なのは女性作家らしい視点なのか。ストーリーは保護された直後のローアの話、小さい頃のローアの話、それから下水処理場で働き始めるローアの話の3パート。ラストに近づくにつれて何故彼女が誘拐されたのか、それから何故スパナーと別れることになったのか、という謎が明かされることになる。
 水質循環システムが特に克明に描写されていて、汗まみれのスーツを着けながら重労働したり、新人を教えたり上司と対立したりはたまたみんなで協力してピンチを乗り切ったり…と、純粋に新しい生活を楽しんでいるな、という雰囲気が良く出ている。

 しかしラストになって突然、仕事の同僚の女が輝き始めるのは何か不自然だよな。自分が雇っていた女がじつはお金持ちの娘だと知り、とてもだまされた気持ちになる。それで彼女を嫌悪するのは描かれているけど、それからローアが自分に関する謎を解くのを手伝って欲しい、と言われたところから急に快活になって、どんどんアドバイスを出すようになる。
 うーん、ここは逆にローアのほうがグイグイ引っぱっていく感じじゃないとダメなんじゃなかろうか。そもそも下層の仕事の、ちょっとしたチーフにしか過ぎない女だよ?結局ローアは元の身分に戻ってしまうのに、それに対するマグヤーはあくまでも平民で愚鈍、というキャラを貫いたほうが分かりやすいのに。…っていう考え方は女性作家的じゃないよな。と思ってしまった。

10月は忙しくなるだろうな~

2008-10-03 14:10:57 | 最近読んだ本
・「侵入社員」/ジョセフ・フィンダー

 通信機器メーカー・ワイアットに勤めているアダム。仕事をよそに遊んでるようないわゆるダメ社員で、会社の経費を使ってパーティーを開くというちょっとしたイタズラがバレて、部長さんに呼び出されてしまう。そこで必死に弁解するアダムだったが、その背後には社長の影が。そこまで芸術的な言い訳ができるようなら、お前にチャンスを用意してやる。ライバル会社に社員として入社し、とある極秘プロジェクトの情報を持ち帰れ…というもの。もちろん断れば起訴されて50年余りの刑を食らってしまう。
 こうしてアダムはダメ社員から一躍、有能なプロジェクトリーダーという肩書きを身につけさせられて、戦々恐々ライバル社へと潜入するのだが…。

 生来の口のうまさも手伝って、ダメな僕がいきなり重役社員へとステップアップ…そんな軽い感じのストーリー。多少スパイの要素も入っていて、誰もいないオフィスに忍び込むとか、そういったハラハラするシーンはいくつかあるかな。
 まあそれ以上にいわゆるアッパークラスでエグゼクティブな方々の、何だかピリピリした会話の雰囲気が主人公のアダム君の胃を痛くするし、読んでいるこっちも緊張してくる。やっぱりこういう高給取りの人たちは見た目から考え方からまるっきり違う、別の人種なのかな~、と思ってしまう。

 そして最後に明らかになるのは、こういう業界では企業スパイがいつでもどこにでも日常的に存在しているということ。つまり結局主人公が苦しもがいて手に入れたものも、大きな筋書きの一部だったってこと。えっ、それじゃ感情的なエピソードだった死んだ息子さんの話って何!?あれでアダム君は俄然やる気になったというのに、作り話だったってことですか?そんな、納得いかないっスよ!…という軽いノリで終わる。まあ軽いノリなのかどうなのかはわかんねーけど。

動いていく

2008-09-28 16:46:07 | 最近読んだ本
・「恐怖」/コーネル・ウールリッチ

 最高に美しくて最高に愛しい、あこがれの人だったマージョリー。プロポーズが成功し、主人公はついに彼女と結ばれることになった。そんな結婚式を間近に控えたある日、主人公のアパートに見知らぬ女が訪ねてくる。彼の事を何でも知る女、ようやく思い出してみれば、彼女は婚前に一晩だけ付き合った女だった。
 女は彼に付きまとい、住む場所を変えてもやって来る、そして結婚式の直前さえも。ついに頭にきた主人公は女ともみ合いになり、そこで誤って彼女を殺してしまう。そこからが悲劇の始まりだった、偽りの結婚式を挙げ、逃げるようにニューヨークから飛び出し、どこか遠い街で別の仕事にありつく。
 主人公は常にニューヨークという影に怯えていた。やがて彼の勤務先に新しい男が入り、その男は妙に主人公に気にかけている。奴はどう見ても警察だ、きっと自分のことを監視しているに違いない。主人公はどうにかしてその男を振り払おうとするのだが…。

 舞台が1915年のニューヨーク、それに今から60年ぐらい前の作品なんで、ある種の古めかしい人物造形とか心理描写のシンプルさを感じた。まあもちろんストーカーなんて言葉もないわけだしね。でもストーカー女のちょっとした少女っぽい仕草とか、妙に印象に残るような演技をしてくれて、何だか可愛いなとか思ってしまう。
 それから急に見知らぬ土地に行かされて、無私無欲、ひたすら夫に尽くすマージョリーさんもかわいそう。あんまりアメリカ的ワイフなような「我」を感じさせない、静かな美しさをたたえているだけに、夫に無茶に振り回されて少しずつ生活が崩壊していくのは、ちょっと残酷。中絶までさせられて、涙は見せないけどまるっきり表情をなくしてしまい、こんなセリフを口にする。
「あたしはあたしの赤ちゃんばかりでなく、それ以上のものをなくしちゃったの。あなたへの愛情が、なくなってしまったの。」

 ラストは主人公が完全に狂ってしまって、マージョリーさんも口論の末に殺してしまうというエンド。う~む、こういうのは最後にいくらかハッピーエンドにしたほうがいいんだろうか?でもこのシーンがとても綺麗に(?、あるいは上手に?)描かれていて、あー何だかこれで納得してしまうような結びになっているので、気持ち悪い後味はあんまり残らなかったけど。

時間が

2008-09-11 05:04:15 | 最近読んだ本
・「炎の記憶」/リドリー・ピアスン

 シアトルで起きている連続放火事件。普通の放火と違うところは、その炎が300メートルも吹き上がり、アスファルトが青く変色するほど高温で焼き尽くされているところ。そのため現場にはほどんど証拠は残らず、ボールト刑事は捜査に頭を抱えていた。
 一方で事件のカギはそれとなく集まってくる。犯人がつけ狙うのは子供のいるシングルマザー、麻薬取引のような現場を見たという子供、妙にうさん臭い態度を取る身内の火災調査官。そのうちボールト刑事自身も狙われて、あわや自宅が爆発しそうになるという危機に。
 やがて、火災調査官であるガーマン調査官が自首を表明、上層部はこれを機に事件は解決…という動きになるのだが、集められた証拠とガーマンを結ぶものはほとんどない。つまり、彼のほかに真犯人がいるということになる。ボールト刑事らは真犯人を求め、さらに調査を続けていくことになるのだが…。

 これはボールト刑事のシリーズモノの一冊ということで、この主人公以外にもレギュラーが多々登場するらしいんだけど、やっぱりこのシリーズモノならではの「中だるみ」がどうにも目についてしまう。主人公の家庭の危機、あるいはヒロインとの新たな進展を見せたり…とか。う~む、この部分を削ったりコンパクトにするだけでも、もう少しボリュームは抑えられたんじゃないかなあ。600ページはちょっとお腹いっぱいです。

 それで、主役陣とは別にもうひとつの焦点となるのが、ある重要なシーンを目撃することになる少年。この少年サイドからもストーリーが進行していくんだけど、むしろこっちのほうが楽しく読めたんでこっち側をメインにしてくれてもよかった。でもあくまでもスタンダードな警察小説を貫く、ということで証拠集めやら調査やらが前面に出てくるのはまあ…それはそれでいいのか。
 最後の突入シーンも勢いにまかせてツッコんで行くのかと思いきや、ある大それた作戦を思いつき、それを実行してそれから犯人逮捕という流れ。これはかなりどうでもいいです。とにかく読後はお腹いっぱいな感じになりました。

まあそんな感じ

2008-09-05 14:09:53 | 最近読んだ本
・「オイディプスの報酬」/リチャード・ニーリィ

 ニューヨークからはるばるヒッチハイクで実家にやって来たジョニー。その目的は友人と映画を撮るという名目で父親から金を引き出すことだった。しかしドアを開けて目の前に現れたのは、若くて美しい父親の再婚相手。ひと目で彼女に心奪われたジョニーは、その新妻のルシルにも協力してもらい、金をねだるのだが結局その話は御破算に。
 そもそも親父は昔から俺に冷たかった。互いに憎みあい、敵対しているといってもよかった。そんなわけでジョニーは積年の恨みを晴らすべく、父親を殺す計画を立てる。地元の建設業者の元締めである親父を殺し、ルシルとその莫大な財産を分け合う。そして二人でどこか遠いところへ行く。
 親父を上手く空き家に誘導し、気絶させてから火を放つジョニー。一見この計画は上手く行ったかと思われた。が、それから事件は思わぬ方向へと発展していくのであった…。

 まさに「まったく先の読めないサスペンス!」といった言葉がふさわしい、なかなかにスピーディで予想外の展開の連続に驚かせられる作品。
 実は親父はあそこで死んでいなかった!という事実が明らかになったところから、いよいよ物語はスピードアップしてくる。焼け落ちた空家(もとは自分の実家だった)からジョニーの母親の遺体が発見され、一転して親父のほうに殺人の容疑がかけられる。そして親父はいまだ潜伏したまま。なぜ親父は母親を殺す必要があったのか?親父の影に怯えながら、じわじわと追いつめられていくジョニー。

 主人公ジョニーが父親に対する激しい憎しみを持っている一方で、女の子にやたらモテるプレイボーイ、というキャラ設定も面白い。女に対して洒落たセリフを言ってみたり、冗談を飛ばしたりと、こういった男女間の欲望の描き方なんかも特徴的なのかな。とにかく要所要所であっと驚かせられる、この衝撃的な展開の仕方が上手いです。

最悪の所は過ぎた

2008-08-28 06:30:18 | 最近読んだ本
・「長い雨」/ピーター・ガドル

 父親の残した葡萄園を処分するために、この田舎に住みこんでいる主人公の私。同時期に妻との離婚もあり、私の心は空っぽになっていた。少しでも高く売るために家や畑を手入れしていくうちに、私は農園にのめり込んでいくようになっていた。葡萄を剪定し、雑草を刈り、水をやる。ずいぶんと大雑把な栽培だったが葡萄は奇跡的に実をつけ、その少しばかり珍しい品種は葡萄酒の業者へと売ることができた。
 それから私の生活は明るい方向に開けていった。元々弁護士の仕事をしていた私は、そこの田舎で小さな法律事務所を開き、収入を得られるようになった。2年目の葡萄の収穫も上手くいき、自分のワインを作ろうかとも考えていた。別れた妻(と子供も)も遊びに来るようになり、やがて一緒に住むようになった…。
 そうした新たな人生を踏み出そうとしていたある日、私は山道で人をはねてしまう。相手は子供。ショックと恐ろしさのあまり、私はそこを逃げ出す。自首するべきなのだが、それを切り出すタイミングが見つからず、やがて私とは別の犯人が逮捕される。真実を心の中に隠したまま、私の心は安定を失い、同時に夫婦生活も少しずつ歪んでいくのだった…。

 とにかく最初100ページまでの持ち上げっぷりと、それに続く落とし方がヒドイ…。独身男の「自分だけの王国」を築き上げていく過程がとても楽しくて、それだけでも十分絵になるのに、ここから落としていくという残酷さ。
 そして、事故。たとえ加害者が罪に問われなくても、加害者は無傷というわけにはいかない。無罪の判決を受けても、加害者は罪の意識を一生引きずっていくことになる。それは人生を大きく狂わせてしまうかもしれない。主人公が法律関係ということもあって、法律と照らし合わせながら必死に葛藤する姿も描かれている。

 しかし物語はここから多少ポジティブな方向へ転じていく。妻と子供が出て行ってしまい、まさにどん底のある日、主人公は逮捕された別の男を弁護しようと決心する。たとえそれが自分を破滅させることになろうとも、それが自分への贖罪になるだろう、と。
 男と会話をしていくうちにある種の共通点を感じながらも、二人は裁判へ意気投合していく。けれども男の裏切り、それから隠されていた真実が明かされて、男と私は唐突な結末へと…。

 そして最後に残された私。結局は散々なお話だけど、ラストにささやかな「救い」が描かれているのが良い。父の、祖父の残した葡萄園を耕していくこと。それを自分の子供に受け継いでいくこと。自分の子供が葡萄園を継がなくても構わない。ただ毎日、葡萄や作物を育てることに、人生の喜びがあるのだから…と、十分にスローダウンしていって前向きなエンディングで〆るのが、ほっとさせてくれる。

もっと早起きしようぜ

2008-08-20 12:48:03 | 最近読んだ本
・「カエアンの聖衣」/バリントン・J・ベイリー

 無人惑星に不時着したカエアンの商船。その中には莫大な価値を持つカエアンの「衣装」が眠っていた。この情報を聞きつけた一団は、密かにカエアンの財宝を持ち帰ることに成功する。
 その中の一人、服飾家のペデルはコレクションの中からフラショナール・スーツと呼ばれる伝説のスーツを発見する。その価値を知る彼は、真っ先にそのスーツを手に入れるや仲間と別れることにする。カエアン文明の衣装は服以上の意味合いを持ち、精神に作用を及ぼし、気分を高揚させる、いわば魔法のスーツのような存在。伝説のスーツを着用したその瞬間から、ペデルの輝かしい人生が幕を開けるのだった…。
 その一方で、宇宙を漂う民族のアレクセイは見知らぬ宇宙船に捕らえられ、スーツを引き剥がされようとしていた。生まれるとすぐに鋼鉄のスーツを身にまとう彼の種族は、一生をスーツという小さな宇宙船の中で過ごす。彼を捕らえた研究者たちは、アレクセイの種族が謎に満ちたカエアンの文明に何らかの関連があるとみて調査を続けるのだが…。

 服は哲学であり、人であり、あらゆるものである…という大前提のルールに則って作り上げられるSF世界。たとえば他のSFなら、色々なアイデアに基づいて細かなガジェットを設定していくけど、コレに関しては「服が服以上の意味を持つ世界」と、これだけ頭の中に入れておけばじゅうぶん読んでいける。
 密輸団の下っ端で、なよなよしいオカマちゃんだったペデルのサクセスストーリーと、カエアンにまつわる大いなる謎…。なるほど、わかりやすい話とわかりづらい(隠された)話を同時進行させていく構図ね。「ロボットの魂」でも感じたとおり、この作家はじつに密度の高い世界を作り上げていくのが上手くて、もちろんこの作品でも王宮から囚人惑星、蝿の惑星からラストに訪れるプロッシムの惑星…と、変化に富んだ景色を見せてくれる。

 それからこの伝説のスーツ…、あらゆる力を与える全知全能のスーツではなくて、もちろん「呪い」も含まれているスーツなんだけど、このカエアンの聖衣によってカエアンが他の種族に対して征服をたくらんでいるのではなくて、実はその上にもう一枚何者かが噛んでいる…というのが、物語の最後になって明らかにされるところ。
 驚きにさせられることの連続、これぞまさしくSFって感じだよね。

肩が痛い、腰が痛い、手首が痛い

2008-08-09 16:58:19 | 最近読んだ本
・「環境問題はなぜウソがまかり通るのか2」/武田邦彦

 最近何かと話題の環境・省エネ問題。何の前触れもなく誰も彼もが言いはじめたのは、突然降って湧いた話のようにしか見えない。果たして突然現れたこの環境ブームは一体何なのか、それから世間に良いと言われているリサイクルは上手くいっているのか?…という本の第2弾。第1弾は適当に本屋で立ち読みしたので、2だけを買って読んでみた。

 本書はまず京都議定書から触れている。「チーム・マイナス6%」という言葉を聞いた事があるかもしれない。これは、二酸化炭素の排出量を2012年までに1990年比で6%削減しよう、というものだが、もうこの議定書を結んだ段階で日本はハメられていると筆者は指摘している。
 この1990年という年、日本は既に高度にエレクトロニクスが発展し、生活水準も他国に比べて十分に高くなっている年。かたやヨーロッパ、例えばドイツなら1990年は東西統合されてやっと文明化への道を歩み始めた年である。それと比較して6%削減せよ、というのだから日本は相当に不利なのである。ドイツなら最新の省エネ機器を導入すれば、すぐに達成。日本は…、外宇宙の未知のテクノロジーでも使って画期的なモノを発明しないと達成できないカナ…?

 それから、ペットボトルのリサイクルの問題。正直なところ、やっぱりこれは多くの人に知ってもらうべきだと思う。一見リサイクルが上手くいっているように見えるけど、ペットボトルのリサイクル化には大きな欠陥があって、一言で言うと「ペットボトルをリサイクルしてペットボトルを再形成すると、普通にペットボトルを形成するよりコスト(石油)がかかる」ということ。

 う~む、ちょっと前にペットボトルのリサイクルの現状についてテレビでやっていたのを見た気がするけど、こうも上手くいってないとは…。これについて、筆者は「ペットボトルを含むプラ製品は、焼却するのが最も環境に優しい」と提言している。「あれ?プラ製品は焼却すると有害物質が…」と思うかもしれない。しかしそれもウソなのである。現代の焼却炉では有害物質を出さずに焼却が可能なのだ。そもそもプラスチックは石油から精製されたもの。石油を成分とするモノが燃やして悪いわけがない。しかもわざわざゴミを分別するよりは、一緒になっていたほうがゴミが燃えやすく処理しやすい、という指摘もある。

 それから話題はマイバッグやレジ袋などに続いて、最後に日本という国の体質について触れている。たとえばある研究者が国に認められ、「○○は環境に良い」と言ったら、たとえそれが後になって間違いであっても、それは国家的に正しい、ということにされてしまう。そしてそれに異を唱える者は非国民。そういう独裁的なシステム。あるいは企業と癒着し、「○○を売りたいので○○というブームを作りましょう」という流れ。メタボリック症候群とかはまさにそれなんじゃねえの。肥満とか成人病とかと、どこが違うんだよ…。

 まあそういうことで、もっとリサイクルや環境問題についてよく現状を知り、自分の意見を持ちましょう、ということですね。

昔の

2008-08-05 12:02:09 | 最近読んだ本
・「消された私」/スコット・ボーグ

 湖畔で釣りをしていたアンダーソン。そこへ何者かが襲い掛かる。もみくちゃになって抵抗しているうちに、アンダーソンはその男を溺死させてしまう。暗くてよくわからなかったが、その顔を見ればアンダーソンそっくりではないか。身元を調べるために財布を探ってみると、その男はピーターソンという名前だった。
 ピーターソンの家に行ってみると、女が彼を出迎える。どうやら彼女は彼をピーターソンだと思っているらしい。豪華な屋敷、多方面から送られてくる多額の現金。ピーターソンとは何者だったのだろうか?アンダーソンは、必死にピーターソンを演じながら彼の正体を探るのだが…。

 右も左もわからないアンダーソンが、推理やカンを働かせながら大金持ちのピーターソンの役割を演じていくミステリ。もちろんこれだけでも十分面白いけど、これにはもう一つの謎があって、「なぜピーターソンはアンダーソンに殺されようと計画していたのか?」という謎に中盤以降は取り組むことになる。

 つまり、富も名声も得たピーターソンがビジネスから引退するために、姿顔も良く似ているアンダーソンを殺して彼の身分を得ようとした…というのがピーターソンの計画なんだけど、彼の計画の全貌は最後までは描かれない。

 計画の最終段階は、ピーターソンの女と共にメキシコに行くこと。そこで彼女は、何かの不法所持(忘れた)で逮捕されてしまうが、逃亡しようとして撃たれる。
 そして女の最後の言葉。彼女は、どんな心境で最後のセリフを言ったのか?彼を本物のピーターソンだと認識していたのか?彼をピーターソンに偽装したアンダーソンだと認識していたのか?それから逮捕の直接の原因となった、彼女への贈り物。これはピーターソンが仕込んでおいた物なのだろうか?それともアンダーソンがたまたま贈ったものが、彼女を殺してしまったのか?

 最後まで「アンダーソンなのか?ピーターソンなのか?」と揺れる疑念がこびりつく、なんともすごい作品。それは読後の今でも常に揺れ続けているのがまたすごい。で、読み返そうにも蔵書から消えているのが残念。なので画像なし。

昔の

2008-08-04 02:01:20 | 最近読んだ本
・「虚ろな穴」/キャシー・コージャ

 記録目的で昔読んだ本をピックアップ。

 僕のアパートの踊り場にある物置き、そこには不思議なモノがあった。何か「穴」のようなもの、中はどうなっているのかわからない。僕らはそこに色々なモノを投げ込んだり、ビデオを入れて撮影してみたり…。義理で付き合っている僕をよそに、その「穴」に狂ったように魅せられるガールフレンド。
 のめりこむあまりに、穴の中に落ちそうになってしまう彼女。あぶない、と思って僕は誤って穴の中に手を突っ込んでしまう。何かぐにゃりとした気持ち悪い感触。すると僕の手のひらに、小さな「穴」ができてしまったのだ…。

 内容的にはまるっきりホラーなんだけど、それよりもどこか「そんなの関係あるかクソッタレ」みたいな、若者っぽいアナーキーでシュールな語り方がコミカルですらある。手のひらの「穴」は次第に臭い汁を出し始めて、どんどん気分が悪くなってくる(体調も悪くなってきている)。僕はレンタルビデオ屋のバイトも辞めて、友人に支援してもらいながら引きこもるようになる。
 その一方で、「穴」の内部を撮影したビデオ。僕のガールフレンドはその映像を何度も繰り返し見ていて、それがある種のカルト的な宗教のように伝染していく。そしてついには、僕を神とまで崇拝しはじめる友人。もううんざりだ。一体どうなっているんだか…。

 例えばかさぶたみたいに、触っちゃいけないと思いつつも、つい触れてみたくなってしまうような、あの誘惑。そして取り返しのつかないことになってしまう、おバカなところ。アパートの一室の中に広がる暗黒空間、この密室の濃度がすごかったな。