サイテーの愛でも
魂を目覚めさせられる。
ベテランの頸骨がぽつぽつと歩きだした。
商店街のアーケードはクジラの骨だよ、とレジ打ち係の同僚がぼやいた。パサージュから外に出るときその下をくぐるのだが、頸の骨はいくつあるか、それをとにかくハエトリ紙(そういうあだ名のベテラン女)に訊いてみたい。いくつになってもわからないことだらけ。なぜ在るものは消えて、無いものが現れるの?そしたら「サイテーの愛でも、裏路地の魂を目覚めさせられる……って、七つめの頸骨がぽつぽつと歩きだしたのよね……」ベテランの口からシャクトリムシのように外に這い出てきた「ぽつぽつと」が、いきなりサイコーの愛になって前景にきた。目を覚ました街を洗う、銀色の雨だ。あっちは晴れてるのに、こっちだけ降ってる。