
- <noscript></noscript>仕事場には約200種類の香料の瓶がずらりと並ぶ。「香りの持つ効果も研究しています」(東京都北区のコーセー研究所で)
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香料の瓶で埋め尽くされた部屋は実験室のような雰囲気が漂う。
化粧品メーカー「コーセー」(東京)の研究員、巣山優さん(36)は、約2000種類の香りを嗅ぎ分ける力を駆使し、新製品の調香を行う。
企画担当者が打ち出した商品の基本概念に沿って、商品の価格や用途、利用者の年代などもヒントにしながら調香していく。「データに頼るのではなく、これまでの経験と自分の感性を頼りにしています」と話す。
9月に発売されたスキンケア商品は40代の女性を購買層に定めた。同社の看板ブランドから発売される新シリーズとあって「長年のファンを裏切らず、なおかつ新しさを表現して」と担当者から要望された。
メインは、フレッシュな花の香り。そこに、独自に開発したフジの花の香りを加えて高級感を出した。さらに、「肌に良さそう」と感じてもらえるようにカモミールやローズマリーなどのハーブの香りも加えた。
すがすがしいハーブの香りから、フジなどの優しい花の香り、最後はムスクなどの高級感あふれる香りへと20~30分かけて移り変わるように仕上げた。「肌の手入れをしながら、癒やしを感じてもらえれば」
試作を繰り返し、企画担当者に提案するまでに3種類程度に絞り込むが、意見が食い違うことも。「香りは個人の思い出や生活パターンと結びついている。30回突っ返されたこともあります」と苦笑いする。高級感、透明感、女性らしさ――。「抽象的な言葉から実際の香りを作り上げていくのが最も難しく、やりがいを感じるところです」と話す。
香りの流行にも敏感だ。百貨店を回って人気の香水をチェックするのはもちろん、香りを求めて同僚の研究員たちと植物園を訪れることも。フジの花の香りも、こうした素材探しから生まれた。
「口紅をぬるだけで笑顔になる人がいる」と化粧品の持つ力を実感したのがこの職を志したきっかけ。「香りの力で誰かを癒やしたり、前向きな気持ちにしたりする化粧品を作っていきたい」(野倉早奈恵)
【退社後】社内チームで汗…対戦成績も好調
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社内のバスケットボールチームに所属=写真、前列右から2人目=、月2、3回、仕事の後に体育館で汗を流す。チームは創部約30年で、昨年まで3年間キャプテンも務めた。
バスケットボールは中学時代以来。入社時に勧誘され、久々にボールを触った。デスクワークが中心なので、2時間練習するといい運動になるという。
チームの成績も好調だ。関東近県の化粧品会社6、7チームが加盟する「コスメリーグ」では2011年以降4連覇中。12年には別の大会でも快進撃し、ダブル優勝の快挙を果たした。
常時練習に参加するメンバーは15人ほど。20~50代と年代は幅広く、部署もバラバラだ。しかし、年1回の合宿を含め、常に和気あいあいとした雰囲気だという。「雰囲気が良いのが我がチームの強み。社内の人脈作りにも役立っています」
【道具】「匂い紙」試作チェックなどに
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「匂い紙」という香りを嗅ぐための専用紙=写真=を白衣のポケットに常備している。画用紙ほどの厚さで細長い形状だ。
瓶から直接嗅いだり、肌に付けて嗅いだりはしない。「瓶の口の周りに香料が付着していたり、体臭と混じったりすると、匂いを正確に評価できない」と話す。「お店で香水を選ぶときは、サンプルを紙に吹きつけて嗅いでみるといいですよ」とアドバイスする。
調香作業の際にも役立つ。例えば、2枚の紙に異なる香りを染み込ませ、両手に持って鼻から近づけたり遠ざけたりする。鼻からの距離で香りの強さが変わるので、2種類の香料をどのぐらいの比率で合わせればいいか予測できる。
試作した香りを企画担当者に嗅いでもらうときは、説明の前にまず、香りを付けた紙を差し出す。「これでどうだ、という思いを紙に託しています」
すやま・ゆう 1977年、長野県生まれ。東京理科大大学院修了後、2003年に「コーセー」入社。メイクやスキンケア製品の研究を行う。08年から香料グループに所属し、製品の調香や新しい香りの開発、香りの流行の調査・分析などを担う。
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