瞬刊★差楽部

ジャンルに特筆しない雑記です( ´,_ゝ`)

高橋真琴作 『王冠』

2008-04-22 11:27:09 | 其の他

高橋真琴という作家を知っているだろうか?名前は知らずとも、誰もが子供の自分に絵本の挿絵などで眼にした記憶があると思う。氏に筆による背景に花を背負った外国人の少女の絵を知らない30代以上の人はいないんじゃなかろうか。
少女マンガ特有の背景に花を背負ったコマ割りはこの作家の影響によるものが大きいと思われる。この作家がいなかったら、少女マンガの登場人物の眼に星が浮いていたり、背景に花が描かれていたりするようなこともなかったかもしれないというくらいにある意味重要人物なわけだ。

誰もが知っているほどの作品を生み出した多作家だが、高橋真琴の自宅は以外にも簡素な作りだった。千葉県佐倉市志津という田舎町にあるその家は、自宅前が作品のギャラリー兼即売所になっている。何故、知っているかというと、数年前に嫁がなにかものの本でこの作家が千葉県在住だということを知り、自宅にギャラリーがあって、時々本人が応対してくれるらしいので、行ってみたいと言い出したからだ。住所を頼りにたどり着くと、極普通の家だったわけ。ギャラリーも簡素で、そのときは家族だと思われる女性しかいなくて、嫁はがっかりしていた。

その後すぐにこの作家が銀座で展覧会を開くという話を嫁が聞きつけた。「銀座だったら、会社からすぐでしょ?行ってサインを貰ってきて!」とせがまれた。「えっ?オレが行くの...?客なんて、みんな女だろ!オレだけ目立っちゃうよ」と断ったが、子供が小さいので自分で銀座に行くのは大変だとか適当な理由で押し切られてしまった。御丁寧に有楽町の書店に画集を注文までしてあり、それを受け取ってサインして貰って来いという難易度の高い司令だ。
嫌々、足を運んだ会場は小さなビルの2階で、そこには30代から40代と思わしき女性が心なしかフリフリ気味のワンピース姿で溢れかえっていた。ガラス扉の前で引き返そうと思ったが、後から来た女性が扉を開けたので覚悟を決めて飛び込んだ。そこは壁やテーブルには沢山の美少女画が並び、客のカワイー!だのキレー!だのといった黄色い声が飛び交う異空間だった。会場の真ん中では高橋真琴思われる品の良い白髪の老人が一心不乱に絵を画いている。周りでは覗き込むように数人の客が氏を囲んでいた。

サインを貰うなんて絶対無理...。

「絶対無理!サインをくれなんて言える状況じゃないぞ」と一度扉の外に出て嫁に電話をかけたが、「なんとか貰って!」と取り付く島が無い。仕方なく戻って、飾れた絵なんかを見て回ったが、時間が経てば経つほどにたった一人の男性客であるオレという存在がかなり浮きまくる始末。

『ままよ!作品を製作途中にサインをくれと空気を読めない依頼をして、断られて帰りゃいいんだろ!!』と、覚悟を決めて声を掛けた。「先生、お忙しい所恐縮ですが、“家内”にサインを頂いてくるように頼まれまして、なんとかお願いできないでしょうか」と“家内”の部分をかなり強調して。
なんと先生、快く受けてくれました!絵を画く筆を止めて、差し出した画集2冊に丁寧にサインをしてくれました。「お姫様の画集だから、王冠も画いておこうね♪」などと言って、サインの横に王冠の絵まで画いてくれました。ラメ入りの金色のサインペンです。
恥ずかしいやらなんやらで顔から火が出そうになっていたのだが、ふと我に返ると会場はやけに静かになってしまっていて、自分の後ろにはいつの間にか手に画集を持った客の長い列が出来ていた。そして、皆一様に「よくやってくれた!」とオレに眼で訴えかけてくれていたのはいうまでもない。

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
切っ掛けづくり (ぷれ!)
2008-04-22 14:30:15
すごいですね!勇気一発!ダメでもともと?w

そこにいらした皆さん・・・刑事ヨッチさんがヒーローに見えた事でしょうwww

ナンパのチャンスだったのに・・・(爆)
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なんでも一番最初ってのは勇気がいる (しゅにん)
2008-04-22 20:50:06
「あら、このお方ったらこんな精悍な風貌をしてこんなメルヘンチックな画集をお持ちなのね。『奥様の』なんてきっと嘘よ。」

みんなそう思ったはずだ。

間違いない!(あの芸人はどこへ行ったんだろ??)
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レス (dekayocchi)
2008-04-23 13:44:54
>Mr.ぷれ!

>ナンパのチャンスだったのに・・・(爆)

ないないw
あの状況下で声なんて掛けた日にゃ、会場の他の客のガン見に晒されちゃいます。
まぁ、声を掛けたくなるような対象も目に付かなかったけどw

----------------

>Mr.しゅにん

>奥様の』なんてきっと嘘よ。

絶対にそう思われてたかと...w
それにしても名前こそあまり知られていないものの、作品だけなら超有名人なのにあまりに気取った所がなくて、凄い気さくな先生でした。

>間違いない!(あの芸人はどこへ行ったんだろ??)

『残念』とか、『ヒロシです』とかもいなくなっちゃいましたね。
次は『そんな関係ねぇ』あたりでしょうか。
個人的には友近とその彼氏にさっさと消えて欲しいです。

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