現代の音楽ヒットの指標が、今やCD売上やラジオテレビのオンエア回数ではなく、サブスクなどネットでの再生回数、楽曲へのイイネの数が重視されるという話を知った。以前、昭和歌謡とかシティポップとか、古い楽曲が持ち上げられるのを見て、なんだか新しい音楽を作っている人たちが元気がないのか、あるいは音楽産業が新しいアーティストを育てるより古くて売れる楽曲に力を入れ、雇用市場同様の「即戦力」志向の呪いにかかっているのか心配したが、そもそも、サブスクでは完全に新しい楽曲も古い楽曲もシャッフルされて、世代間で聞いてる音楽が違っていた時代は終わり、音楽における世代の無意味化が進んだんだな、と理解した(新しい音楽を作っている人たちの支援は、アニメ市場とのタイアップらしい)。自分はこの歳まで音楽を聴いていて、古い曲も新しい曲も知ってるぜ、古い曲に良い曲は多いが、それでも新しい音楽をディグする冒険の旅を続けるんだ、なんてカッコつけたことを思っていたが、そもそもこうして流行音楽における世代の無意味化があるなら、それはもう単なる思い上がりでしかないな、と(だからといって、新しい音楽をディグする気持ちを捨てるつもりもないが)。
個人的な話はともかく、この話は、ファクトとかフェイクを見分けることが難しくなった今の時代を解くヒントにもなる。つまり、より多くの人がイイネをつけると、見かけ上「ファクト」になり、そうでないと「フェイク」にされてしまう理由がこれなんじゃないかと。音楽のヒットにはファクトもフェイクもないが、政治社会の報道においては、黙って見ている訳にはいかない。
とりあえず音楽については、分からなければ現場に行く、ということは個人的に実践している。できることなら、政治や社会の問題についても、現場で確認できれば良いが、さすがに遠く離れた場所の出来事ではそうもいかない。
少なくとも、既存メディアよりもネットが正しいとか思っている人には言いたい。ネット、特にSNSは、結局のところ「伝言ゲーム」だ、いくら既存メディアが信用できないと言っても、出来事の現場に一番近いのは既存メディア(と言うか、ちゃんと取材することで飯を食ってる人たち)だ。それを見て正しいか正しくないか判断するのが一番合理的な判断ができるはずだ、と。