タイ国経済概況(2023年9月)

1.景気動向
(1)タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)の8月21日発表によると、2023年第2四半期の経済成長率は前年同期比+1.8%で、今年第1四半期の同+2.6%から大きく減速した。第2四半期の伸び率は東南アジア主要6ヵ国の5番目(伸び率の高い順からインドネシア、フィリピン、ベトナム、マレーシア、タイ、シンガポール)だった。部門別では農業が同期比+0.5%、非農業が同+1.9%で、非農業のうちサービス業が同+4.1%(うち宿泊・飲食は同+15.0%)、工業が同▲2.1%だった。NESDCは、サービス業の伸び率低下と、輸出不振を今回のGDP伸び率低下の理由にあげた。2023年通年の成長率については、今年5月に発表した同+2.7~3.7%から、+2.5~3.0%に下方修正した。

(2)タイ工業連盟(FTI)の発表によると、2023年7月の産業景況感指数(TISI)は前月比▲1.8ポイントの92.3で、過去10ヵ月での最低水準を記録した。FTIは政治的空白の長期化や輸出額の大きな減少、家計債務の増加等が消費者心理を冷やしていると指摘。また、業種別では45業種中21業種が上昇。企業規模別では、小規模企業が前月比+1.2ポイントの95.9、中堅企業が同▲2.0ポイントの97.3、大企業が同▲4.4ポイントの84.3だった。小規模企業は、14ヵ月連続の上昇となった。

(3)FTIが8月24日に発表した7月の自動車生産台数は、前年同月比+4.7%の15.0万台だった。内訳は国内向けが同▲1.2%の6.3万台、輸出向けが同+9.5%の8.7万台。新型コロナ前の2019年7月の生産台数17.1万台を下回った。また、7月の国内新車販売台数は同▲8.8%の5.8万台で、輸出台数は同+30.0%の10.8万台。新型コロナ前の2019年7月の販売台数が8.1万台、輸出台数が8.2万台であり、輸出台数は新型コロナ前の水準を上回った。

(4)FTIが8月24日に発表した7月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲7.8%の19.5万台で、3ヵ月ぶりのマイナスを記録した。2019年7月の生産台数は19.7万台であり、新型コロナ前と同水準だった。内訳は完成車(CBU)が同+11.1%の17.0万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲57.6%の2.5万台。また、7月の国内販売台数は同+12.7%の15.1万台、輸出台数は同+91.5%の3.8万台だった。2019年7月の販売台数が14.9万台、輸出台数が2.3万台であり、販売台数、輸出台数ともに新型コロナ前の水準を上回った。


2. 投資動向
(1)タイ商務省事業開発局によると、年初7ヵ月における高齢者介護分野における新規事業登録件数は、前年同期の57件から+17.5%の67件だった。一方で、事業規模が比較的小さかったことから、同期間の登録資本総額は昨年同期から2,870万バーツ減少(▲23.4%)の9,370万バーツとなった。また、同局によると海外投資家も高齢者介護事業に関心を示しており、同分野への投資総額の5.9%を占める。7月だけで海外からの投資額は2,460万バーツ増加し、前年同月比+15.6%の2,844万バーツだった。7月時点での国別の年初来累積投資額では、1位がシンガポールの8,980万バーツ(49.2%)、2位がスイスの3,610万バーツ(19.7%)、3位が台湾の1,800万バーツ(9.9%)、4位が中国の1,780万バーツ(9.8%)、5位が日本の635万バーツ(3.5%)だった。また、内資からの投資が29億2,000万バーツ、外資が1億8,200万バーツだった。事業運営者は研修や試験を受ける必要があり、保健サービス支援部門の免許を取得する必要がある。2021年1月27日発効の同規制は、施設、建物、トイレ、スロープ、ベッドの間隔、専門スタッフ雇用に関する法律の順守を義務付けている。

(2)新首相が選出され政治と経済の方向性が明らかになったことで、タイの株式市場は回復の兆しを見せている。8月23日の議会投票でセター氏が過半数を獲得し首相に選出されたことを受け、SET指数は2.22%上昇した。7月から8月にかけては、新政権樹立とFRBの利上げにおける不確実性により、タイ株式市場は動きの少ない横ばいに推移した。政治の方向性が明確になるにつれ、国内外の投資家の信頼は徐々に回復すると予想される。8月25日時点のSET時価総額は19.12兆バーツに相当し、前月から僅かに減少した。サービス分野が時価総額5.01兆バーツで依然としてSET最大分野であり、資源分野が3.94兆バーツで2番目の規模。


3. 金融動向
タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2023年の7月末時点で金融機関預金残高は24兆4,827億バーツ(前年同月比+1.7%)、貸金残高は30兆3,186億バーツ(同+1.9%)といずれも増加。また、8月2日にBOTは政策金利を2.00%から2.25%に引き上げた。


4. 政治動向、その他
8月7日に第二党のタイ貢献党が前進党による連立協議から離脱し、タイ誇り党や国民国家の力党等の計11党での連立に移行。8月22日にタイ貢献党のセター・タウィシン氏が首相立候補として推薦された。首相選出投票の結果、両院の賛成票が過半数を超え、セター氏が第30代の首相に正式任命された。新首相は61歳で、不動産会社Sansiriの創業オーナーである(2022年11月に同社を退職し、既存13社の全株を娘に譲渡済)。その後9月2日に、国王に提出した閣僚名簿が承認された。9月5日には新閣僚が国王への忠誠を宣誓し、正式に新内閣が発足した。(9月7日時点)

(2)タイ政府観光庁(TAT)は、2023年7月の訪タイ外国人数は前年同月比2.2倍の249万人で、中国人が前年同月比16.1倍の410万人で1位になったと発表した。前月までは13ヵ月連続でマレーシアが1位だった。2位はマレーシアの37万人、3位は韓国の15万人だった。今年7月までの累積では、前年同期比4.8倍の1,540万5,334人となった。また、TATチェンマイ事務所は8月22日、今年7月までのタイ国内観光客数が、新型コロナ流行前の2019年同期比93%に達したと明かした。今年通年の国内観光客数は1億6,000万人を見込んでおり、観光収入は19年比+75%の8,082億バーツまで拡大すると予測している。


(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。

情報提供:三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.


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