タイ国経済概況(2020年7月)
1.景気動向
(1)タイ中央銀行(BOT)は6月24日、2020年の経済成長率が▲8.1%になるとの予測を発表。新型コロナウイルスによる影響の深刻さが増したとして、3月時点の▲5.3%から下方修正した。同様に、商業・興行・金融合同常任委員会(JSCCIB)は7月1日、予測をこれまでの▲3.0~▲5.0%から▲5.0~▲8.0%へと引き下げた。タイの2020年経済成長率について、6月18日にはアジア開発銀行(ADB)が▲6.5%、24日には国際通貨基金(IMF)が▲7.7%、さらに30日に世界銀行が▲5.0%との予測を発表している。
(1)タイ中央銀行(BOT)は6月24日、2020年の経済成長率が▲8.1%になるとの予測を発表。新型コロナウイルスによる影響の深刻さが増したとして、3月時点の▲5.3%から下方修正した。同様に、商業・興行・金融合同常任委員会(JSCCIB)は7月1日、予測をこれまでの▲3.0~▲5.0%から▲5.0~▲8.0%へと引き下げた。タイの2020年経済成長率について、6月18日にはアジア開発銀行(ADB)が▲6.5%、24日には国際通貨基金(IMF)が▲7.7%、さらに30日に世界銀行が▲5.0%との予測を発表している。
(2)盤谷日本人商工会議所(JCC)は6月30日、会員企業を対象に行った2020年上期景気動向調査の結果を発表した。業況感を示すDI(Diffusion Index)は、2019年下期が▲24、2020年上期(見通し)が▲69、2020年下期(見通し)が▲44となり、1971年の調査開始以来35年ぶりの落ち込みとなった。2020年上期は新型コロナウイルス感染拡大によりタイ経済、世界経済ともに減速しDIは全業種でマイナスを示したものの、下期はマイナス幅が縮小する見込み。
(3)タイ工業連盟(FTI)が6月18日に発表した5月の自動車生産台数は、前年同月比▲69.1%の5.6万台だった。前年同月マイナスは13ヵ月連続だが、前月比では2.3倍に増えた。内訳は国内向けが同▲76.9%の2.0万台、輸出向けが同▲61.9%の3.6万台。1~5月の累計生産台数は、前年同期比▲40.2%の53.4万台となった。また、5月の国内販売台数は前年同月比▲54.1%の4.0万台、輸出台数は同▲68.6%の3.0万台。1~5月の累計国内販売台数と累計輸出台数は、それぞれ前年同期比▲38.2%の27.1万台、同▲35.0%の30.1万台となっている。
(4)FTIが6月18日に発表した5月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲62.4%の7.9万台だった。内訳は完成車(CBU)が同▲60.7%の6.7万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲69.5%の1.2万台。1~5月の累計生産台数は、前年同期比▲25.3%の78.8万台。また、5月の国内販売台数は前年同月比▲39.5%の9.7万台、輸出台数は同▲62.6%の2.7万台だった。
2.投資動向
(1)タイ商業省が発表した5月の貿易統計によれば、輸出額は前年同月比▲22.4%、輸入額も同▲34.4%となり、輸出入ともにおよそ11年ぶりの大幅下落となった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気悪化により、中国を除く主要輸出先の需要が落ち込んだことが主な要因。輸出を仕向地別でみると、首位の中国が同+15.2%の29.1億米ドル、アメリカが同▲17.3%の21.7億米ドル、日本が同▲23.9%の16.1億米ドルだった。主要品目別に見ると、缶詰類等の加工食品の需要増が寄与し、農水畜産品・加工品が同+2.5%となった。一方で工業製品は、自動車・部品(同▲56.6%)、電子製品・部品(同▲14.6%)、電気製品・部品(同▲31.7%)といった品目が低調で、全体で同▲27.0%の大幅減となった。
(1)タイ商業省が発表した5月の貿易統計によれば、輸出額は前年同月比▲22.4%、輸入額も同▲34.4%となり、輸出入ともにおよそ11年ぶりの大幅下落となった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気悪化により、中国を除く主要輸出先の需要が落ち込んだことが主な要因。輸出を仕向地別でみると、首位の中国が同+15.2%の29.1億米ドル、アメリカが同▲17.3%の21.7億米ドル、日本が同▲23.9%の16.1億米ドルだった。主要品目別に見ると、缶詰類等の加工食品の需要増が寄与し、農水畜産品・加工品が同+2.5%となった。一方で工業製品は、自動車・部品(同▲56.6%)、電子製品・部品(同▲14.6%)、電気製品・部品(同▲31.7%)といった品目が低調で、全体で同▲27.0%の大幅減となった。
(2)タイ投資委員会(BOI)は6月17日、農業分野の投資条件や恩典を「BCG(バイオ、サーキュラー<循環>、グリーン)モデル」に基づき修正したことを発表。技術とイノベーションの活用を促進し、付加価値と生産性の向上を目指す。新しく奨励事業に加わった植物工場は、高品質な農産品の安定的な生産に貢献するとして、投資恩典として5年間の法人所得税免除が付与される。またペットフード、動物飼料、野菜・果物・花・農業廃棄物由来製品等の包装および保管といった、テクノロジーの導入や持続可能な開発を促す事業に対する恩典も修正された。
3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると、2020年5月末時点の金融機関預金残高は22兆448億バーツ(前年同月比+10.2%)、貸金残高は25兆4,271億バーツ(同+3.6%)といずれも増加。
タイ中央銀行の発表によると、2020年5月末時点の金融機関預金残高は22兆448億バーツ(前年同月比+10.2%)、貸金残高は25兆4,271億バーツ(同+3.6%)といずれも増加。
4.金利為替動向
〈金利動向〉
(1)(6月の回顧)
6月のバーツ金利は経済活動再開への期待から5年以降の長期金利が小幅上昇した一方、政策金利は当面据え置かれるとの見方で5年未満では金利低下。特に2年、3年での金利低下が顕著であった。月初、前月末のトランプ米大統領の会見にて香港に対する優遇措置の撤廃を指示したものの、米中通商合意に関しては維持される見通しとなったことで安心感が広がったことや、世界景気の早期回復期待が台頭したこと等から長期金利を中心に金利上昇。そういった中発表されたタイ5月消費者物価指数は前年同月比3.44%低下、コア指数もわずか同0.01%上昇と2009年7月以来の落ち込みとなったが、楽観的な見方が支配的でタイSET指数も1,400台を回復したことでバーツ金利は一段と上昇。9~10日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)でイールドカーブ・コントロール(YCC:長短金利操作)が議論されるとの思惑でドル長期金利が低下すると、バーツ長期金利もこれに伴い低下。YCCについては、米FOMCで議論されたが効果については疑問となり今回の導入は見送られた。また、今後の政策金利見通しが2022年末まで現状維持の見通しが示された。これを受けてバーツ中期金利が小幅低下した一方で長期金利は小幅反発。その後、米連邦準備制度理事会(FRB)が新型コロナウイルス対策の社債買い入れ開始を表明したことでリスク選好が高まり、タイSET指数上昇、バーツ金利は長期を中心に上昇となった。24日のタイ中銀金融政策委員会(MPC)では大方の予想通り政策金利は0.50%に据え置きとなったが、経済見通しは大幅に下方修正となった。これを受けてバーツ中長期金利は低下。月末にかけても小幅バーツ金利低下となり、タイ10年物国債利回りは1.28%台、同5年物利回りは0.82%台とそれぞれ前月末対比では0.04%、0.01%上昇となったが、同2年物は0.11%低下した。
〈金利動向〉
(1)(6月の回顧)
6月のバーツ金利は経済活動再開への期待から5年以降の長期金利が小幅上昇した一方、政策金利は当面据え置かれるとの見方で5年未満では金利低下。特に2年、3年での金利低下が顕著であった。月初、前月末のトランプ米大統領の会見にて香港に対する優遇措置の撤廃を指示したものの、米中通商合意に関しては維持される見通しとなったことで安心感が広がったことや、世界景気の早期回復期待が台頭したこと等から長期金利を中心に金利上昇。そういった中発表されたタイ5月消費者物価指数は前年同月比3.44%低下、コア指数もわずか同0.01%上昇と2009年7月以来の落ち込みとなったが、楽観的な見方が支配的でタイSET指数も1,400台を回復したことでバーツ金利は一段と上昇。9~10日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)でイールドカーブ・コントロール(YCC:長短金利操作)が議論されるとの思惑でドル長期金利が低下すると、バーツ長期金利もこれに伴い低下。YCCについては、米FOMCで議論されたが効果については疑問となり今回の導入は見送られた。また、今後の政策金利見通しが2022年末まで現状維持の見通しが示された。これを受けてバーツ中期金利が小幅低下した一方で長期金利は小幅反発。その後、米連邦準備制度理事会(FRB)が新型コロナウイルス対策の社債買い入れ開始を表明したことでリスク選好が高まり、タイSET指数上昇、バーツ金利は長期を中心に上昇となった。24日のタイ中銀金融政策委員会(MPC)では大方の予想通り政策金利は0.50%に据え置きとなったが、経済見通しは大幅に下方修正となった。これを受けてバーツ中長期金利は低下。月末にかけても小幅バーツ金利低下となり、タイ10年物国債利回りは1.28%台、同5年物利回りは0.82%台とそれぞれ前月末対比では0.04%、0.01%上昇となったが、同2年物は0.11%低下した。
(2)(7月の展望)
先月は経済活動再開への期待の一方で政策金利が当面据え置かれるとの見方となり、長期金利が上昇の一方で中短期金利が低下し長短金利差が拡大した。タイ国内ではロックダウン緩和が順調に進み経済活動も再開しているが、世界的には感染第2波への警戒が強まっている。そういった中、今後の感染状況とともに経済指標を確認していく時間帯になると考える。今月は28~29日に米FOMC開催が予定されており、引き続きYCCの議論が注目される。
先月は経済活動再開への期待の一方で政策金利が当面据え置かれるとの見方となり、長期金利が上昇の一方で中短期金利が低下し長短金利差が拡大した。タイ国内ではロックダウン緩和が順調に進み経済活動も再開しているが、世界的には感染第2波への警戒が強まっている。そういった中、今後の感染状況とともに経済指標を確認していく時間帯になると考える。今月は28~29日に米FOMC開催が予定されており、引き続きYCCの議論が注目される。
〈為替動向〉
(1)(6月の回顧)
6月のドルバーツ相場は3ヵ月連続で続落。中国の香港国家安全法制定を巡っての米中関係、新型コロナウイルス感染の再拡大といったものへの懸念はあるが、タイでは新型コロナ感染抑制に成功してロックダウン緩和が順調に進んでいったことや、世界的にも経済活動が再開となっていったことからリスクセンチメントが改善したことでバーツ買いが進行した。月初、ドルバーツは31.8台前半でオープン。前月末のトランプ米大統領の会見にて香港に対する優遇措置の撤廃を指示したものの、米中通商合意に関しては維持される見通しとなったことで安心感が広がったことや、世界景気の早期回復期待が台頭したことからドルバーツは下落、さらに欧州中央銀行(ECB)が新型コロナ危機対応プログラムを予想以上に拡大したことでドルバーツは一段と下落し、31.50を割り込んだ。その間、タイ中銀はバーツの上昇はタイ経済と一致していない可能性があり、バーツ高が国内経済に一段の影響を及ぼさないように必要な措置を講じる用意があると表明。夜間外出禁止令の解除を含めたロックダウン緩和第4弾の導入が検討との報道や、米FOMCで政策金利を2022年末まで現行のまま維持する見込みが示されたこと等からドルバーツは続落し、31割れに。これを受けてウッタマ財務相はバーツ相場が景気回復の障害にならないよう動向を注視するようタイ中銀に要請した一方、タイ中銀は足元のバーツ高進行はドル安によるもので域内通貨の値動きと整合的とした。その後、米国で新型コロナ感染の第2波の兆候があること等で株が大幅に下落しリスクオフとなったことや、朝鮮半島情勢や印中での軍事衝突といった地政学リスクの台頭でドルバーツは31.2台まで反発。その後、新型コロナ感染拡大への警戒が続いた一方、タイ国内では感染抑制に成功しており市中感染ゼロで推移していることからさらなるロックダウン解除への期待も強く、双方の要因が綱引きとなりながらも徐々に上値の重い展開に。24日に開催されたタイ中銀MPCでは、政策金利は現状維持が決定され経済見通しは軒並み大幅下方修正となった。ただし、予想の範囲内であったことからドルバーツ相場への影響は限定的であった。その後もドルバーツは31を挟んでの攻防が続いたが、ロックダウン緩和第5弾の決定等が重しとなり30.9台でクローズとなった。
(1)(6月の回顧)
6月のドルバーツ相場は3ヵ月連続で続落。中国の香港国家安全法制定を巡っての米中関係、新型コロナウイルス感染の再拡大といったものへの懸念はあるが、タイでは新型コロナ感染抑制に成功してロックダウン緩和が順調に進んでいったことや、世界的にも経済活動が再開となっていったことからリスクセンチメントが改善したことでバーツ買いが進行した。月初、ドルバーツは31.8台前半でオープン。前月末のトランプ米大統領の会見にて香港に対する優遇措置の撤廃を指示したものの、米中通商合意に関しては維持される見通しとなったことで安心感が広がったことや、世界景気の早期回復期待が台頭したことからドルバーツは下落、さらに欧州中央銀行(ECB)が新型コロナ危機対応プログラムを予想以上に拡大したことでドルバーツは一段と下落し、31.50を割り込んだ。その間、タイ中銀はバーツの上昇はタイ経済と一致していない可能性があり、バーツ高が国内経済に一段の影響を及ぼさないように必要な措置を講じる用意があると表明。夜間外出禁止令の解除を含めたロックダウン緩和第4弾の導入が検討との報道や、米FOMCで政策金利を2022年末まで現行のまま維持する見込みが示されたこと等からドルバーツは続落し、31割れに。これを受けてウッタマ財務相はバーツ相場が景気回復の障害にならないよう動向を注視するようタイ中銀に要請した一方、タイ中銀は足元のバーツ高進行はドル安によるもので域内通貨の値動きと整合的とした。その後、米国で新型コロナ感染の第2波の兆候があること等で株が大幅に下落しリスクオフとなったことや、朝鮮半島情勢や印中での軍事衝突といった地政学リスクの台頭でドルバーツは31.2台まで反発。その後、新型コロナ感染拡大への警戒が続いた一方、タイ国内では感染抑制に成功しており市中感染ゼロで推移していることからさらなるロックダウン解除への期待も強く、双方の要因が綱引きとなりながらも徐々に上値の重い展開に。24日に開催されたタイ中銀MPCでは、政策金利は現状維持が決定され経済見通しは軒並み大幅下方修正となった。ただし、予想の範囲内であったことからドルバーツ相場への影響は限定的であった。その後もドルバーツは31を挟んでの攻防が続いたが、ロックダウン緩和第5弾の決定等が重しとなり30.9台でクローズとなった。
(7月の展望)
(2)先月は中旬に新型コロナウイルス感染拡大への懸念、地政学リスクの台頭でリスクオフとなりドルバーツも反発する局面があったが、タイ国内での感染抑制成功でロックダウン解除が順調に進んだこともありドルバーツは下落となった。今月は新型コロナ感染拡大の状況およびロックダウン緩和後の経済指標の確認をしていく時間帯になるものと考える。今月28~29日に米FOMCの開催が予定されている。
(2)先月は中旬に新型コロナウイルス感染拡大への懸念、地政学リスクの台頭でリスクオフとなりドルバーツも反発する局面があったが、タイ国内での感染抑制成功でロックダウン解除が順調に進んだこともありドルバーツは下落となった。今月は新型コロナ感染拡大の状況およびロックダウン緩和後の経済指標の確認をしていく時間帯になるものと考える。今月28~29日に米FOMCの開催が予定されている。
5.政治動向、その他
(1)タイ政府は6月30日、タイ全土を対象とした非常事態宣言の適用を7月31日まで延長する旨を発表。非常事態令第9条に基づく決定事項(第11号・第12号)を官報に掲載し、経済活動の規制緩和第5弾として7月1日から学校や各種施設の再開を許可したほか、タイに越境入国できる対象者や条件を公表した。
(1)タイ政府は6月30日、タイ全土を対象とした非常事態宣言の適用を7月31日まで延長する旨を発表。非常事態令第9条に基づく決定事項(第11号・第12号)を官報に掲載し、経済活動の規制緩和第5弾として7月1日から学校や各種施設の再開を許可したほか、タイに越境入国できる対象者や条件を公表した。
(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。
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情報提供:
三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.
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