本文だけで480ページのなかなか読みでのある本でした。
2月に亡くなられた西村賢太さんの未完の遺作です。
連載ものだったようで、最終回の執筆中だったかで急逝されて
未完という状態で出版されたものです。
実はこの作のほかにも連載中だったものがあるようですが、
それは今後徐々に陽の目をみるのかもしれません。
さて、西村賢太さんの本については、
なかなか感想が書きにくく、
それは今年の2月に西村賢太さんが亡くなられたときに
ブログに書いていますので、よろしければそちらをお読みいただくとして。
→西村賢太さん亡くなる
この本では、同人誌などでしか書いていなかった西村さんが
商業作家となっていく、その過程が綴られています。
私小説ですので、あくまで北町貫多(西村賢太をモジった)という
主人公がいてのフィクションふうにはなっていますが、
出版社名や文芸雑誌名もほぼ丸わかりの名称ですし、
もちろんいくつかの脚色もありながらの、
“商業作家になりつつある時代”の西村さんの生活が垣間見えます。
まあ、例によって知人への直接的な暴言や
女性への片思い(岡惚れと表現)と
その女性らに対する妄想での言葉の暴力(^_^;)
もう、ホントにワタシも時にイヤな気持ちになるほどの他者への口撃。
まったくもって女性にはお薦めできない内容です。
これをエンタメとはとても言えないし、
ご本人もそんなことは望まないでしょう。
ただ、ひとつのジャンルとしてはアリだと思いますし、
今後、こういった作風の作家の新作が読めないことは残念です。
グダグダと自分の気持ちを語り、
キレてはほんのちょっとだけ後悔、
少しだけ反省してはまた怒ってキレる、そんな繰り返し。
実際この本の中でも、
「この女性はどうなるんだろ」とハラハラさせられたり、
世話になっている知人が怒るほどの悪態をついた顛末だったり、
面白いは面白いンですけどね。
遺作という名目の出版はまだありそうですが、
もう新作は読めないんだなあ。
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