舞踊修行の途上で、美学者の高橋巌氏から受けた指導は僕にとって非常に大きなものですが、上の写真は氏の著作の中でも特に心動かされたひとつで、デザインは横尾忠則さんです。
内容とデザインが互いに強く働きあって、この一冊の本の存在は、長年にわたって僕に特殊な光を投げ続けています。
書物装丁に限らず、舞台公演の宣伝デザインなども、受け手にとって強い影響を与え、内容と絡まってイマジネーションを高めることが、ままあります。
デザイナーというのは、プロジェクトの表層ではなく、むしろ深い核の部分にまで影響を与える、重要人物だと僕は思っています。
そのことを最初に知らされたのが、唐十郎さんや土方巽さんの公演をはじめとする、横尾忠則さんデザインの様々なポスターでした。
また、画家宣言をされたあとの横尾氏の作品の動向は、いつも人生に何かしらのメッセージを与えてくれているような感触がありました。
そしていま、『GENKYOU』と題された最新の展覧会を鑑賞して、より激しく、背を押され、いや、お尻を叩かれたような感じが、あります。
木場の東京都現代美術館で17日までやっていて、展示内容は初期作から現在進行の新作やコロナ関連の取組まで、膨大です。
横尾忠則さんの作品から、僕は個人的には、文学のように読み解いてゆく面白さと、吹き出るようなエネルギーを浴びる興奮を、感じています。
一枚の絵の中に、非常に異なるものが、いっぱい、そしてギュッと凝縮されていて、絵を見つめていると一冊の書物を読み解いてゆくような愉快さが出て来ます。同時に、その一枚の絵を描くことに費やされた集中力や労力や知力や感情の波が、高濃度かつ大量に押し寄せてくるのです。
だから、見る側にも結構な体力が必要なのですが、それゆえに手応えも大きいのです。
この展覧会では、膨大な作品を見ることができるのですが、圧巻だったのは《原郷の森》と題された最後のコーナーで、それは広大な展示エリアいっぱいに展開される、まさに「現況」と言える最新の仕事群でした。
2020、あるいは、2021、と制作年を示された作品の量とスケールが、まず驚愕でした。そしてその一つ一つの勢いが素晴らしく、それは、創作者としても、生きる姿勢としても、感じ入るものがありました。
お勧めします。
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